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12 疑惑の真相、犯人はこいつです


 魔力封じ効果のある鎖で縛られたパープレアはユキとチルドの話合いの結果、しばらく地下の物置に入れられることになった。


 そして1日が経過し、ユキとチルドはパープレアを閉じ込めている地下室にいた。


「あの謎ダンジョンへの転送床は私が壁で塞ぎましたので、あそこから逃げられる心配はありません。 鎖で魔力が封じてあるので、あの空間の裂け目の術を使って逃げることもできないと思います」


「ご苦労様チルド。 とりあえずツインテが言っていたあれを調べましょう」


「あれですか」


「そう、下着を調べろとか言ってたやつ」


「気を失っているうちがいいですね」


ガサゴソ、チャリチャリ


 ユキはパープレアの体を縛り付けている鎖の腰の部分だけ上下にずらした。 


「おおっといけない…あ、この子もつるつ…」


 勢い余って下着までずらしてしまいその下がばっちり目視できてしまったが、ユキは確認作業を続けた。


「んんん? これは!?」


「何かありましたか?」


 チルドが近くの保存食置き場に置いてあった懐中電灯を持ち照らした。


「ほら、これこれ」


「おーこれは見覚えがあります。 洗濯したことがあります。 これはユキのパンツではないでしょうか?」


「そう。 この下着は私が研究所で脱いで袋に入れ永久に預けた品。 その後謎の紛失騒ぎになったパンツで間違いないわ。 どうしてコイツが履いてるのか…。 このブラも私の物だわ…」


「この人物の能力に空間の裂け目を使った屋内への侵入がありました」


「それを使ってお隣の研究所に侵入してこの下着を盗んだって訳? 理由はよく分からないけど、物好きね。 ってことでこいつが犯人だったと」


「理由はともかくこれで永久の疑いはだいぶ晴れました」


 チルドは肩の力を抜いて安心したような表情で言った。


「そういうことになるわね。 大方ツインテを匂いか何かで追って下調べに来たときに隣の建物に間違えて侵入したんでしょう。 そっから先は分からないけど、そこでたまたま見つけた下着を抜き取って着てみたとか。 名探偵ユキの推理によるとそんなところよ」


「まあ、そのような感じでしょうか。 マリコに連絡を入れておきます。 この魔女風不思議人物の件はぼかして説明しておきますのでご安心を」


「困ったときはプラズマのせいにして説明するといいわよ。 異次元からブワーっとプラズマが湧き出してきてパンツ泥棒の悪さをしたんだとか適当に言っておけばいいの。 よろしく、有能メイドワトスン君」


「はい」


 チルドはにっこり返事をした。



「これで私の消えた下着の件はひとまず一件落着」


「結局…、私はユキほどに永久を信じてなかった…恥ずかしい話です」


「しょうがないわよ。 永久の普段の軽薄な振る舞いが悪いのよ」


「…生みの親と言いながら、私は彼を信じていなかった…。 私の信じる思考は永久を信じるユキの思いに負けていた」


「まあまあまあ。 そんなに深刻に考えないで。 そういうこともあるわよ、人生には…ねっ」


 ウインクしたユキにチルドは軽く頷いた。



               ・



「それで次はこの子の今後の件なんだけど。 どうしたものか」


 ユキは鎖で拘束されたパープレアに視線を移して、「ふー」とひと呼吸おいてから次の話題に変えた。


「逃がすとまた襲ってくる可能性があるので厄介です」


「ツインテを追って来たのならツインテと元いた場所に帰ってもらえば丸く収まるのではないでしょうか?」


「そんなことは絶対にできないわよ。 ツインテはこの家に住みたくて住んでいるのだから、もう家族なの。 私も許しません」


「そうですか…。 そうですね、もう家族ですね。 私もツインテには多大な恩があります」


「ウググ…」


「あ、目を覚ましそうよ!」


「魔力は封じてありますが、一応警戒はしておきます」


「…ううう、ここは?」


 鎖に縛られ床に横になっていたパープレアが虚ろな瞳で目を覚ました。


「ここは私の家の地下室よ」


「私は負けたのか?」


「そう、あなたは私達のスーパー同調戦術の前に、無茶な魔法の使い方を繰り返して自滅して敗れたのよ。 まあツインテが用意してくれたフィールドのおかげもあるんだけど」


「生かされたのか…」


「ユキが生かすようにと言ったのであなたは今生きています」


「魔力封じの鎖だなこれは…私をどうするつもりだ」


「名案はまだ出てないわ。 逃がしてまた襲い掛かって来られても困るし、扱いが難しいのよ」


「人間に敗北した私にはもう行き場がない。 元の世界に戻ったら処分されるだろう」


「なにか厳しいルールがあるのね…」



「…」



「ん…それは…、その腕のブレスレットはまさか…」


「これは、ツインテからの頂き物よ」


「知らないのか、それは大魔人ツインデイルの腕輪だぞ!」


 パープレアの目つきが変わり緊張感が漂いだした。


「そう言われましても…」


 ユキとチルドは「何のことやら」といった表情で顔を見合わせた。


「それは大魔人ツインデイルの腕輪。 その腕輪を持っているということは魔人の頂点に立つ存在として認められたということだ」


「あーそうなの、でも私、全然魔人じゃないし、魔人の頂点に立つつもりもないので」


「うぐっ、それを身に付けている者が…もし魔女に闘いで勝ったのならば、敗北した魔女はその者の配下にならなければならない…。 私達にはそういういにしえの盟約があるのだ…」


「へー、そうなの。 じゃあもう戦う理由はないのね。 良かった」


「そう簡単に信じていいのですか? ユキ。 嘘かもしれませんよ」


「嘘ではないな…確かそんなことがあったような気がしてきたゾ」


 地下室にツインテが入って来た。 ツインテは昨日のあのシリアスな雰囲気は全く消え失せ、すっかりいつもの雰囲気に戻っていた。


「ツインテ、それ本当? ならもう鎖を取ってあげてもいいんじゃない?」


「まあ、そうだな」


「私の言っていることを信じるのか?」


 パープレアが神妙な面持ちでユキに聞いた。


「うん。 信じる」


 ユキがパープレアの目を見て答えた。



カキン、ジャララ


 パープレアを拘束していた魔力封じの鎖が解かれた。


「パープレア。 あなたも今日からここに住むのよ」


「いいのか?」


「当然よ」


「昨日は殺し合いをした相手だぞ」


「昨日は昨日の事情があったんでしょ。 じゃあ挨拶!」


「パ、パープレアと申します。 ヨ、ヨロシクオネガイシマス」


 パープレアは俯き加減で頬を赤くし、少し緊張した表情で皆に挨拶をした。


「私の名前はユキ。 こちらこそよろしく、パープレア」



               ・



「モグモグ、こ、これは何という食い物だ? 弾力があってうまいな、モグモグ」


「それはコンニャクだ、これの主役だぞ。 ワタクシが懐で温めていた一品だ、 心して食え」


「いや、主役は大根だぞ。 アチチ」


「いえいえ、玉子こそが真の主役と思われます」


ガヤガヤ、パクパク、カチカチ、モグモグ…



 その日のユキ家の夕食はアツアツのおでんだった。


 そして夕食の席にはフォークとスプーンを両手に持ち、夢中でおでんを頬張るパープレアの姿があった。




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