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10 湯けむりガールズロボトークです


ジャバー、カポン、カポポン


 ユキ達4人はお風呂に入っていた。


「あー食った食った。 ゲップ」


「ツインテ、ここで吐かないでくださいね。 皆のテンションが下がりますから」


「わかってるわい。 おえっぷ」


「うーむ、うむうむ」


「どうしたんですか? そんなに見回して。 気のせいか何か目つきがいやらしいですよ、ユキ」


「いやチルド、観測は大事なのだ。 怠るなよ」


「よく分かりません」


「例えばあの真正面に浮かぶ、マリコさんの胸…あれを見て君は何も思わないのかね?」


「ユキよりは大きいですね」


「そうそこだ。 そしてマリコも周りを見ていろいろ確認しているぞ」


「つまり、どういうことなんですか」


「人は観測せずにはいられない生き物なのだ」


ドッボーン、ザブン、ヒャアー


「こら大股開いて飛び込むなツインテ。 お湯がもったえない」


「だが今のダイビングで3センチほどお湯が減ったので。 いろいろ視界が良くなったのではないか。 ユキよ、ぐふふ」


「確かに…ごくり」


「広いお風呂はいいですね、皆さん楽しそうで。 そうそう、私今ひとつ発見したんですよ」


「何をですか?」


「それはですね…。 私はともかく、皆さんはムダ毛がないんですね」


「えー、そうなの」


「間違いありません。 ばっちり確認させていただきました」


「ふーん、何ででしょうね。 この家の住人の妙な共通点…」


「チルドはロボですから、元々無駄なものは無いのも当然なんですけどね。 うふふ」



カポンッ



「チルドの肌、本当に人間みたいなんだな。 防水機能も伊達じゃない」


「この強化積層シリコン皮膚のおかげです」


「あ、今まで気が付かなかったけど、腕に小さく何か書いてあるんだなー、うー

んこれは『N1700FZ』とな」


 ユキがチルドの腕を見て気が付いた。


「ああ、それは腕の型番ね。 交換が急だったものでまだ消してなかったの。 使っていればだんだん薄くなるのでそのうち消えると思うわ。 嫌なら除光液のような物ですぐに落とせるはずよ」


「自然に消えるのを待ちます」


「でも何かFZってかっこいいですよね。 ほら最後においしい所全部持って行くロボットみたいで」


「なんのこった? ユキ」


 湯舟でツインテが顎に拳を当て首を傾げた。


「いやあ、昔見た宇宙世紀的ロボットアニメなんだけど、ザルFZっていうザコロボの後期生産型がいるのよ。 それが最後にスーパー強いはずの主人公ロボと一騎打ちをして相討ちになるんだ」


「あーそれ私も知ってる。 ガンザル0080・ポケットの中の戦闘。 名作よね」


「ヘー、マリコさんも知ってるんだ」


「当然よ」


「で、主人公ロボ『アレクル』が弱いかと言うとそうでもなくて、その前に強敵闘士ロボを激闘の末、倒してるのよねー。 そのさらに前に闘士ロボは単機で連邦のスカレト隊ロボ6機を1分足らずで全滅させてる」


「それで、1機のザコロボであるザルFZより弱い公式が成り立ってしまうスカレト隊って、どんだけ弱いんだよってスカレト隊無能説が出て来るんだけど、実はあの戦場は民間人の多い中立コロニーで、極力威力の高い武器の使用は控えていたスカレト隊がその人道的配慮の結果敗北したとの擁護説があるのよ」


「そうね大体ユキさんの言う通りだわ。 でも私が好きなのは第1話で北極基地を駆け抜けたハイゴルグよ。 あの流れるような凛々しくも美しいフォルムがたまらないの。 うふふ」


「私はジル寒冷地仕様ね。 手が壊れてマシンガンが傾き自分をババババンって撃ってしまうところがとても哀愁を帯びていて好き。 これは譲れないところだわ」


「私も見ておこうかなそのロボットアニメ…」


 肩までお湯に浸かったチルドが呟いた。



カポンッ



「あわわわわ」


「あらいけない、ツインテちゃんが赤くなって浮いている」


「私もそろそろ出ます。 とてもいい湯でした」


ザブン


「あらもう出ちゃうの?」


「この子がのぼせてきたので」


 そう言うとチルドはツインテを摘まみ上げて浴槽を出た。


 残ったふたりはじっとチルド達を見ていた。


「チルドもやっぱり脱ぐとやらしい感じだなー」


「ツインテちゃんも色々つるつるできれいだなー」


 そんな事を考えて赤くなるふたりだった。


「私もそろそろあがらせていただくわね」


 マリコも湯をあがってバスルームを後にし、浴槽にはユキだけが残った。



「はー、いい湯だった。 極楽極楽~。 ぱちゃ…ごくごく…ぷはー」


 ユキは最後に、湯船に少し顔を沈めてお湯を飲んでみた。



               ・



 次の日、4人で朝食を食べた後、マリコは今日は休日だけどやる事があるのでと言って名残惜しそうに帰っていった。


 玄関でマリコを見送った3人は、そのままその場で立ち話を始めていた。


「何か疲れたけど楽しかったね」


「そうですね。 たまにはこういうのもいいものです」


「ケーキおいしかったなー。 また食いたい」


「ツインテのダンボール箱は大丈夫だった? あれで寝てると不審に思われそう」


「ええ、あのダンボール箱のツインテ起床爆発防止装置は小型化して首に着けられるようにしたので大丈夫です。 昨日は予備のベッドで寝かせました。 今、ツインテの首に付いている首輪のように見えるそれです。 取り外しも出来ますので安心してください」


「ほう、そうだったのか。 さすが有能メイド、仕事が早い」


「エヘン!」


「そうそう、最近気になっていたんだけど、そのメイド服少し変わった?」


「そうなんです。 研究所で修復されたときから着ていたメイド服は少し違ったデザインになってるんです」


「あーハイそれ、ワタクシです。 ワタクシがチルドを修復魔法で直したついでにボロボロだったメイド服も直したんだけどそのときに、ちょっとアレンジを入れたのです」


「そんなことができるのねツインテ。 結構かっこいいと思うわよ、そのアレンジ」


「前よりスカートが短くて動きやすいだろー」


「ちょっと、何て言うかアニメのコスプレっぽいと言いますか…」


「似合っているのだからそれでいいと思うよ。 『カワイイは正義』の理論が当てはまる」


「そうですかユキ。 ではこれを着続けます。 ありがとうございます」


「残りのメイド服も全部そうしておいたから安心して着用してくれ」


「全部ですか!」


「ますます強化改良型チルドバージョン2って感じだね」


「そう言えばツインテ、あなたから貰った私の腕のこのブレスレットは外せないの?」


「外せる。 でもたぶん外さない方がいいと思うぞ。 お守りみたいなものだから。 まあよく覚えてないんだけどね。 確か~記憶が無いんだけど何となく覚えているのは~、見えないようにもすることができたような…」


「見えなくなるだけでもいいわ」


「た~し~か~、見えなくな~れ~、みたいに念じるんだったかな~」


「やってみるわ。 えーい、見えなくなーれー」


フワッ


「おお、本当に見えなくなった。 ありがとうツインテ」


「どういたしましてだ。 出すときは見えろーでいいはず」


「このブレスレットはお守りだったのね」


「そうだな。 ワタシもそこのところ、記憶が曖昧なのであまり深く考えなくてもいいぞ。 ただ由緒ある品だったような気はするんだな」


「はーい」


 ユキはダンジョンでピンチのときにこのブレスレットが切っ掛けで切り抜けたような考えを持っていたが、結局よく分からないままだった。 ただ悪い品ではないと思えてきていた。


「まあ、玄関で立ち話もなんですからリビングに行きましょう」


 チルドの言葉で3人はリビングへ戻った。




 …そのとき、天井の角付近の小さな時空の裂け目から、3人の行動を覗き見している目の存在があることに気が付く者はいなかった。


 そして時空の裂け目は音もなく閉じるのであった…。




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