洸夜と大胆なセリア
無乃達の行方を友人の真吾によって知った洸夜。そしてセリアが・・・・・・。
〜〜〜 セリア side 〜〜〜
ポカンとしているコウヤくんを目の前にして、鼓動が聴こえるぐらいに緊張している。
こ、これでいいんだよね。お母様ぁ!?
数時間前、洸夜の家に泊まる事が決定した後、セリアはすぐさま泊まりの準備に取り掛かった。そんなところにマーガレットがセリアの部屋にやって来て話し掛けて来た。
『セリア、荷物の方は準備出来たのかしら?』
『コウヤくんのお家に持って行く荷物の整理はもう少し掛かりそうです』
マーガレットは準備に勤しんでいるセリアの鞄を覗き見ると、バッとセリアに顔を向けた。
『ダメよセリア!』
『ダメって何がダメなんでしょうか?』
着替えも持ったし、下着も予備も含めて入れてる。それに寝巻きだって入れているから大丈夫だし、何よりも忘れ物したらコウヤくんに頼んで実家に転移して貰えばいいことだと思う。
『この服じゃミヤマさんに振り向いて貰えないわよっ!!』
『・・・・・・』
お母様は何を仰っているのでしょうか? それとも私の耳がおかしくなったのでしょうか?
『やはり殿方を振り向いて貰うには、こういった服を持って行くべきよ!』
お母様はそう言うと手を叩いてメイドを部屋に招いたのだが、何とそのメイドが持っていた寝巻きがきわどい感じなのだ!
しかも下着の方も、とても布の面積が少ないので下手したらぁ・・・・・・ってっ!?
『おっ、お母様ぁ! これは一体何なのですかぁっ?』
『何って、ミヤマさんを誘w、じゃなくて振り向いて貰う為の秘密道具です』
今誘惑って言おうとしませんでしたか?
『振り向いて貰うのに、そんな道具は必要ありません!』
そもそも、何で服のサイズを知っているんですか?
『本当? わざわざセリアのサイズに合うのを買って来てあげたのに、これじゃ損になってしまいます・・・・・・』
マーガレットはそう言うと、笑顔まま服を持って来た。
『お、お母様。一体何をするつもりなのですか?』
『何って、これを荷物の中に入れるに決まっているじゃないですか』
『入れさせません!』
こんな物を持って行ったのを知ったら、コウヤくんにドン引きされてしまう!
『・・・・・・そう。私はアナタの為を思ってやったのだけれども、迷惑でしたかぁ』
『そうですよ! お母様!』
『う〜ん・・・・・・どうしましょうか。このままではミヤマさんがイレイラ様に取られてしまう可能性がありますね』
コウヤくんが、イレイラ王女様に? いやいやいやいやっ!?
『コウヤくんに限ってそんなことある筈ない。と思っていますね?』
どうして私の考えてることを?
『セリアはあり得ないと思っているけど、可能性はありますよ。イレイラ王女様はミヤマさんのお家に住み込むのですから、その気になれば積極的にアピールすると思いますよ』
『えっ、でも・・・・・・イレイラ王女様からそんな気が見れないのですが』
『今はそんな気じゃないってことです。もしかしたら住み込んでいたら、自然と好きになっていた。って状態になる可能性があります。
イレイラ王女様とミヤマ様が結婚式の壇上で、キスをする姿を想像してみて下さい。アナタにとって嫌ですよね?』
結婚式の壇上で白いドレスを着たイレイラ王女と、白いタキシードを着た洸夜がお互いに微笑ましい顔を浮かべた後、お互いの唇を近付けて行く姿をセリアは容易に想像出来てしまい、ショックだったのか石のように固まってしまった。
『そのようすだと、想像出来たようですね』
『で、でもでも! 必ずしもそうなるとは限らないので、いや! 絶対あり得ませんそんなことっ!!』
私がコウヤくんと、チュ、チュウを・・・・・・。
『心の気持ちが駄々漏れよ。セリア』
『ハッ!?』
セリアは我に返ると、マーガレットに向き直る。
『結論から言わせて貰いますと、このままではミヤマさんに告白してもフラれてしまう可能性があります』
『フッ、フラれるぅ!?』
セリアがそう言った瞬間、マーガレットさんはセリアの肩に両手を置いた。
『そうよ。だから先ずはね。私はミヤマさんに気がありますというのをアピールする為に、こういうのを使うのよ』
『気があります・・・・・・アピール・・・・・・』
セリアはそう言いながら、マーガレットが用意した物を全て鞄の中へと入れた。そう、これもセリアの母親であるマーガレットの作戦なのだ!
そして今、セリアの決死の覚悟が試されるときが来たのだ!
「あっ、ああ、うん。このスポンジを使ってくれ」
コウヤくんからスポンジを受け取り泡立てるが、恥ずかしくてコウヤくん方に顔を向けられない。
「じゃっ、じゃあ身体を洗うね」
そう言ってからコウヤくんの身体を洗っていく。
スゴイ。コウヤくんの身体って筋肉質で堅い。それに気付かなかったけど、傷があるんだ。
その後しばらくの間は無言の状態が続いていたが、何かを話さなきゃと思い、セリアから話題を振ることにした。
「・・・・・・ねぇコウヤくん」
「ん? な、何?」
「イレイラ王女様のことをどう思っているの?」
ってぇ、何て話題を振っているのよぉ! 私のバカァァァアアアアアアッ!!?
「イレイラ王女様? う〜ん・・・・・・強いて言えば、可哀想な人だなぁ。っって思っている」
「可哀想な人」
「ああ、だってさ。同じ王族でも冷遇されていて、あまつさえ遠い別荘で暮らしながら暗殺者に怯えていたんだ。可哀想と思わない方がおかしいだろ」
「そう、だね」
イレイラ王女様は社交会以外で余り見掛けていなかった。それも自分の命を守る為なのだとは、知りもしなかった。
「でもこのままずっと家に居させる気はないから、何処かのタイミングで向こうの世界に返すつもりだ。
このまま行くと、王女失踪事件に発展しかねないからな」
「うん、そうだよね」
コウヤくんはコウヤくんなりに考えているんだ。それなのに私と来たら・・・・・・。
「ん? どうしたんだ。セリア?」
「何でもないよコウヤくん。すぐに終わらせるから待っていてね!」
コウヤくんの為にも、私も頑張らなきゃ!
そう思った直後だった。後の扉が突然開いたのだ!
「むっ? 一足遅かったか?」
一足遅かった。ってぇ!?
「イレイラ王女様! アナタ何をしているんですかぁっ!?」
「何って、セリアと同じことをやろうと思ってな」
バスタオルで身体を隠しているイレイラ王女さまはそう言うと、ポカンとしている私の目の前に立った。
私と同じことをやろうと思ってぇ? それってもしかしてぇ!
「ダメです! 絶対ダメです!!」
「どうしたんだ。そんなに取り乱して?」
「コ、コウヤくんの目の前ではしたない格好をしてはいけません! 着替えて来て下さいっ!」
「はしたないって、オルコス嬢も言えた義理ではないだろう?」
何を言っているんですかぁっ!? 私は水着を着ていますが、アナタは布に下には何も着ていませんよね?
「まぁ、コウヤ殿なら私の身体を見せても構わないと思っているがな」
コウヤくんになら身体をぉ〜?
「・・・・・・どう言う意味ですか、イレイラ王女様?」
はい、意味がわかりました。私はこの場で宣戦布告されたと認知していいらしいです。
「このお風呂場は3人いると狭いので、誰かが出なければなりません。わかって頂けますよね。イレイラ王女様?」
訳: さっさと風呂場から出て行って下さい。イレイラ王女様
「うむ・・・・・・この格好で来たからには、この場を去りたくはないな。だから譲って貰えないだろうか?」
訳:コウヤ殿と風呂に入りたいから、オルコス嬢が出て行ってくれないか?
「お断りします。アナタ様が・・・・・・」
「オルコス嬢が・・・・・・」
「いえ、アナタ様が・・・・・・」
その後も平行線の話し合いが行われた為、肝心の洸夜は身体をお湯で流してから風呂場を出て行ったのであった。
こうしてセリアは洸夜の背中を流してあげたのであった。