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ヤツの行く末は?

ゴーレムと対峙した洸夜だが、途中で意識を失ってしまった。果たして彼は生きているのだろうか?

・・・・・・あれ?


目を開けてみるとアスファルト目に映り込んだので、上体を起こして周りを確認すると何処かの駅前なのが確認出来る。


「ここは・・・・・・日本?」


確か俺はアニス学園長と共にアイアンゴーレムと戦っていて、俺の作ったクリスタルの大剣が・・・・・・あっ!?


慌てたようすで立ち上がると、青ざめた表情で両頬に手を置いた。


「もしかして俺は死んだのかぁ!?」


そうだとしたら、ここはあの世への発着駅!?


『ヘッヘッヘッヘッ・・・・・・今頃気付いても、もう遅いっつうの』


「ん?」


この声、聞き覚えがあるぞ。


声のした方向に顔を向けると、何とハゲ校長の息子の 駄爆 無乃 が家電製品店に置いてある液晶テレビを、見つめているではないか。しかも少年院の服を隠す為か、拾ったと思わしきボロボロのパーカーを着ている。


『こんな風になったのも、クソ親父と海山のせいだ! ぜってぇに復讐してやる!』


いや、俺のせいじゃなく、お前自身が撒いた種のせいだろ! でも、復讐をされるのはヤバイな。何か対策をしないと・・・・・・って、俺が生きているのかもわからないのに対策を考えるって、おかしな話か。


『アイツらに復讐する前に、先ずは資金調達だ』


無乃はそう言うと落とし物を探すかの如く、辺りを見回しながら歩く。


まさかコイツ、スリでもやる気じゃないよな?


そう思いつつも無乃の後を付いて行くと、何かを発見したようす見せた。


『いいモン見つけたぁ〜』


「いいモン?」


こんな住居がまばらなところで、いいモンって何だ?


疑問に思いつつ無乃が顔を向けている方向を見てみると、何とそこにはスーツを着た中年の男性が歩いているではないか。


「いいモンって、お前まさか!?」


俺が驚いた表情をさせている中、無乃は周囲に誰も居ないことを確信した後に中年の男性に歩み寄って行く。


『おい、そこの親父止まりやがれ!』


『ん? 何だお前?』


『俺にボコされたくなかったら、財布を出しやがれ!』


ストレートに言うな、コイツ。


『あぁ? 何言ってんだお前?』


『だから財布を出せっつってんだろうが! テメェ頭悪りぃのかぁ?』


「いや・・・・・・お前の方が頭悪そうに見えるから」


と言っても夢の中の話だから、聞こえてる訳もないよなぁ。


スーツ姿の男性も同じことを思っているのか、呆れた顔で無乃を見つめる。


『悪いことは言わねぇ。俺の前からとっとと失せた方がいいぞ』


『失せた方がいい? お前、自分が置かれている状況が理解出来てねぇのか?』


何だろう? この男性、怯えるどころか喧嘩を買うような感じが見受けられるんだが・・・・・・って、あ!?


男性の側にあった車を見て、自身満々な態度の理由を知った。


「おい無乃、お前その辺にしておいた方がいい。相手が悪い!」


夢の中であることを忘れて忠告をしたのだが、無乃は男性の胸倉を掴んだ。


『いいから俺に財布を差し出せつってんだろうがぁ!』


コイツやっちまった!?


胸倉を掴んだままガン飛ばしている無乃の姿を見た洸夜は、引きつった顔で2人と距離を取った。


『・・・・・・おいテメェ、俺の大事なスーツを汚しやがったな』


『だから何だよ、あぁ?』


『おいテメェら、出て来い!』


男性がそう言うと車の中から同じ格好をした男性達がゾロゾロと降りて来て、無乃を取り囲んだ。


『テメェ、よくも親父に喧嘩を売ってくれたなぁ〜。どう落とし前着けてくれるんだぁ? あぁ?』


『・・・・・・へ?』


無乃はそう言ってくる男性と、周囲の人間達を見て顔を青ざめさせた。


自分が893に絡んだことに気付いたか。


『この後に及んでワイのスーツを掴むとは、いい度胸しているなぁ〜、ガキィ?』


『ヒィッ!?』


無乃は慌てたようすで手を離し、後退りするが今度は部下の方に背中がぶつかってしまう。



『テメェ、何逃げようとしてんだぁ。あぁ?』


『ゴ、ゴメンなさい!!』


先程の態度が嘘のように、捨てられた子犬のように身体を震わせて怯えている。


『なぁにぃちゃん。俺から財布を取るんだったよなぁ?』


『めめ、めめめ滅相もございません! そんなことをしませんっ! 絶対!!』


そう言っている無乃に近づく893の親分。


『そうかぁ? それによぉ。俺のスーツを掴み掛かって来たよなぁ?』


その追求に無乃は、全力で首を横に振る。いや、お前やっていたじゃないか。


『嘘はいけねぇよ。嘘は。俺の高いスーツに皺を作っちまったんだから、弁償しねぇといけねぇよなぁ?』


『そうっすね。親父が買ったそのスーツって、確かぁ・・・・・・』


『上下とワイシャツ、それにネクタイセットで30万したな』


『さ、30万っ!?』


それって、そんなにするのか? いやでも、海外セレブ御用達の物になったら、それぐらいの値段になるよな。


『ああ30万。それにクリーニング代を考えると・・・・・・この間出したとき10万ぐらいしたよな?』


『親父違います。15万円しました』


『そうか。それに加えてワイシャツとネクタイも出さなきゃいけねぇから・・・・・・』


『ネクタイで5万。ワイシャツで10万です』


クリーニング代でそんなに取るのか?


怪しく感じるが夢の中なので何とも言えない。


『おお、ピッタリ30万だな。それに加えて慰謝料も払わないといけねぇよな?』


『い、慰謝料?』


『おうそうだな。喧嘩を売って来てゴメンなさいで済ませるほど、世の中は甘くはねぇからなぁ。確か相場で・・・・・・20万ぐらいだったか?』


実際はもっとすると思うが、相手が子供だからと思って減額してくれているんだと思う。


『なる程、トータルで50万円だ』


『そ、それは言い掛かりじゃないんですかぁ?』


『言い掛かりだ? テメェから絡んで来てよく言うな』


確かに、そのことに付いては同意見だ。


『で、どうなんだ? 払うのか? それとも払わないのか?』


『払わねぇ。つうんなら、少々痛い目に会って貰うがな』


ヤクザの男達は肩なり指なり関節をボキボキ鳴らして近づくと、無乃は余りの恐怖にその場に座り込んでしまった。


『・・・・・・って、ないです』


『ハァ? 今お前、何つった?』


『お、お金を・・・・・・持ってないんです』


『お金持ってないだぁ? おい、コイツを調べてみろ』


『へい!』


部下が無乃の身体を隈無く探す。


『親父、本当に持ってないです』


『ほぉ〜、そうか。金を持ってないんなら、仕方ねぇよなぁ。金を取るのを諦めようか』


『ほ、本当ですか?』


『ああ本当だ。俺達は金のないヤツから金を取ろうとしない。だから安心しろ』


無乃は安心したようすを見せる。


『お前親は?』


『い、いません』


そうだよな。コイツの父親は中国に行っちゃったし、日本に残っている母親に関しては絶縁しているから頼れないもんな。曽祖父は・・・・・・生きていんのか?


『そうかぁ〜、いないのかぁ〜・・・・・・なら仕方がないなぁ』


男が合図すると部下の2人が無乃の両脇を抱えて無理やり立ち上がらせた。


『親がいねぇんなら仕方ねぇからよ。身体で払って貰うことは出来るよなぁ?』


『身体って・・・・・・まさかぁ!?』


『お前さんが考えているようなことをするつもりはねぇよ』


『じゃ、じゃあ俺に一体何をさせるつもりなんですか?』


『ウチらが仕事を紹介するから、その店で働いて貰うだけだ』


『ちょっとばかし辛い仕事をして貰うだけだからよぉ。そんな泣きそうな顔をすんなや』


無乃の脇を抱えている部下がそう言うが、誰がどう見ても鼻水垂らしながら泣いている。


『ず、ずびばぜんでじだ! ぼゔ、にどどじばぜんっ! じゃがらゆぶじでぐだざびいいいいいいっ!?』

(訳:すみませんでした! もう二度としませんっ! だから許して下さいいいいいいっ!?)


恐怖の余り無乃の全身が震えていて、もう顔も涙や鼻水や汗がごっちゃ混ぜになって酷いことになっている。


『いいんだよ、謝らなくても。働いて返そうや』


『そうだ。働いて弁償しようや』


893達はにこやかな笑みで、無乃を車の中へと無理矢理入れ込む。


『やだぁああああああっ!? 誰が、だずげでぇええええええぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・』


無乃の悲痛な叫びと共に車が遠ざかって行く。


「もしかしたら、孤児院を出なかった方がよかったんじゃないか?」


そう呟いたら目の前が白くなって行き、また意識を失った。

こうして、無乃は危ない人達に連れ去られて行ってしまった。彼は何処へと連れていかれたのだろうか?

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