第30話 ウォーラー先生とセリアの模擬戦
武術の授業が始まった。どうやらウォーラー先生の気が変わったようだ。一体どうなる?
武術の授業を始めたのはいいが何故か俺がクラスメイトに指南する状況になっていて、クラスメイトの剣撃を棒で受け止めた後に払い除けると、彼は大きく右側に仰け反ってしまった。
「腕だけで剣を振るな! 身体全体を利用しないからそうなるんだ」
「はい!」
「もう一回打ち込んで来い!」
「うりゃぁああああああっ!?」
棒を横に構えるとクラスメイトは雄叫びを上げながら、剣を棒に向けて振り下ろしてぶつけて来た。
「さっきよりはよくなった。この調子で打てるように素振りを欠かさずに続けるんだ」
「はい、ミヤマ先生!」
どうしてこうなっているのかと言うと、最初はみんな普通に素振りをしていたのだが1人のクラスメイトが俺と一戦交えたいと言ったのでやる事になり、結果はもちろん秒で俺が勝った。
しかし、上段構えて突っ込んで来れば誰だって対処出来るだろう。何よりも 覚悟ぉぉぉおおおおおおっっっ!!? って言って突っ込んで来るから対処しやすかったわ!
そんで、その事を指摘していたら 僕に戦い方を教えて下さい! と懇願されて現場に至る。つーかウォーラー先生! これはアナタの役目じゃないの?
「あの棒が武器になるとは・・・・・・もしかしたらメイスを使う魔法使いにも適用出来るかもしれないな」
「って言うか、コウヤって意外と厳しいんだねぇ〜」
「ま、まぁ師匠の元で習っていたって言うから、あれは当たり前なんじゃないかなぁ?」
「えっ!? コウヤに師匠がいるの?」
「いなきゃ武術をやってないだろ」
てか厳しいって言うけど、俺は師匠と違って易しく教えているぞ・・・・・・っとその前に。
「はいストップ! 一旦休憩した方がよさそうだ」
つーか自分の素振りをやりたいから、稽古を止めたい。
「あ、ありがとうございました!」
「どういたしまして」
彼はそうお礼を述べると俺から離れたのだが、他のクラスメイトが俺の顔をジィーッと見つめて来る。
「まさか俺と稽古をやりたいって言わないよな?」
『いいえ、今日はしたいと思ってないよ!』
今日はって何? 今日はって。
「とにかく武術の授業の教師はウォーラー先生なんだから、ウォーラー先生に教えを請うようにしてくれ」
「そうだな。やはり今日は素振りを止めて、彼のように相手をしてあげよう。やりたいヤツは前に出て来るんだ」
『ミヤマくんからお願いします』
「「それじゃ意味がないだろっ!!」」
てか先生とハモったよ。
「ウォーラーだって手加減してくれるから、挑戦してみてもいいんじゃないの?」
おお、ナイスアシストだぞリタ! 後で飴ちゃんをあげようじゃないか。
「じゃ、じゃあ私から行きます」
セリアが怯えた表情を見せつつも、手を上げてウォーラー先生の前に出て来た。
「うむ、そのやる気の姿勢は評価に値する。さぁ、好きなところに打って来なさい」
「・・・・・・はい」
セリアはそう返事をするとフェイシングのようなポーズを取り、ウォーラー先生と対峙する。
「昨日の反省点を活かせるかどうかだな」
「コウヤ、偉そうな事を言うね」
「え? これで偉そうなのか? 師範の場合だともっとボロクソに言って来るぞ」
「女の子と男の子はメンタルが違うから、もう少し優しく言ってあげなきゃダメだよ」
ム、ちょっと言い方がキツかったか。反省しよう。
しかしリタとこんなやり取りをしているのに、依然としてセリアは動こうとしないのだ。
「お前が来ないと始まらないぞ」
ウォーラー先生がそう言うのもわかるのだが、セリアからして見れば相手に全く隙がないので手を出せないと言う状況なのだ。
ワザと隙を作ればいいんだけど、ウォーラー先生にその気はないみたいなんだよな。こうなったら俺が言うしかないか。
「セリア、相手に隙がないと思っているのなら、相手を翻弄して隙を作るしかない! 受け止められてもいいから攻撃を出すんだ!」
俺がそう言うと頷き、ゆっくりとウォーラー先生に近づいて射程距離までやって来たら突きをくり出した!
「甘い!」
案の定ウォーラー先生が持っている木の剣で払わられて反撃されるが、払われた瞬間にバックステップで後に飛んでいたので、ウォーラー先生の攻撃を回避する事が出来た。
「ハァッ!?」
今度は手首のスナップを利用した横切りをくり出したのだが、これも避けられてしまう。そして距離を取ろうとバックステップの体勢に入った。
「ッ!? 今距離を取ったらダメだセリア!」
案の定ウォーラー先生に距離を詰められてしまい、驚いた表情になるセリア。
また避ける。そんなことは今のセリアには無理だ。
「ガードを!」
「遅いっ!」
ウォーラー先生はセリアの肩に木の剣を置いた。
「はい、終了」
「そんな・・・・・・まだ始まって間もないのに」
「それが今の実力だ。今後は避けるだけじゃなく、防御面も鍛えるように」
「はい、わかりました」
セリアは残念そうな顔をさせて俺の元へとやって来た。
「ゴメンセリア、バックステップを踏むことしか教えなかったから、こんな結果になったんだよな」
「ううん、ウォーラー先生に距離を詰められたときに頭の中が真っ白になっちゃったの。だからコウヤくんのせいじゃないよ」
「う〜ん・・・・・・でもバックステップを踏むことを教えたのは俺だからなぁ〜」
「そんな考え込まなくてもいいよ。私自身が未熟だったのが悪いんだから」
今度手合わせをお願いされたときは、防御面を教えようか。あるいは師範のところに連れて行って・・・・・・いや、その考えは止めておこう。
「何あれ、甘い雰囲気が漂って来てるんですけどぉ〜」
「セリアとコウヤがイチャイチャしているのは、何時ものことじゃないの?」
「えっ!? アタシが知らないところで毎回あんな風にイチャイチャしてるの?」
「うん! 私がいる前で何度もあんな風にイチャイチャしてたよ!」
イチャイチャはしてねぇよ!
「え? やっぱりミヤマくんとオルコスさんは相思相愛のカップルってこと?」
「告白されてないって言ってたけど、やっぱり告白されたんじゃないかな?」
「そうだよ! あの雰囲気からして絶対告白してるって!」
「どっちからかなぁ〜? やっぱり男らしいミヤマくんからかなぁ〜?」
「もしかしたら、オルコスさんからかもしれないよ!」
おいおい女子達は何を盛り上がっているんだ。俺は告白してもないし、されてない。しかも会話が丸聞こえだから、セリアが顔を真っ赤にさせて恥ずかしがっている。
「セリアさんとお付き合い出来るなんて、羨ましいよなぁ〜」
「ああ、俺も時期を見て告白しようと思っていたけど、これじゃあ無理そうだな」
「クゥ〜ッ!? 羨ましいヤツめェッ!!」
しかも男子の間では、俺がセリアに告白したことになっているっ!! ヤバイ、誤解を解かないと!
「そうだねぇ〜。僕もミヤマくんに告白されたかったなぁ〜」
『・・・・・・・・・・・・え?』
今アイツ、何て言った?
「コホンッ!? えっとぉ、キリもいいので授業終了とする! 自分が持っている武器は元の場所に戻す事、そして予鈴が鳴るまでこの場で待機していてくれ! 以上!!」
ウォーラー先生が無理矢理授業を終わらせやがった!
「ミヤマ、その棒をアイテム袋の中に入れて俺に渡してくれ」
「あ、はい」
ウォーラー先生に言われた通りにアイテム袋に棒をしまい、ウォーラー先生に渡した。
「それと2人共」
「「はい」」
「イチャイチャするのは構わないが、校内では節度を持つように。後は学園に通っている間は性行為は禁止だから、絶対にやるなよ」
「やりませんっ!!」
つーか付き合ってもないのに性行為って!
「コウヤくんと、せ・・・・・・せせ、せい、行為ッ!?」
そう言って顔を真っ赤にさせながら倒れ込むセリアの身体を、慌てて支えるのであった。
こうして、彼女はウォーラー先生に負けてしまった。しかし、まだまだチャンスはあるぞセリア!




