第27話 問題だらけの授業
アンリネットとセリアのバトル(食事)を済ませた一向だが、ルノアの舌は大丈夫なのか?
「それでは、ミヤマ様」
「またね」
「ああ、またな」
俺の返事を聞くと2人は食堂を去って行ったのだが、問題児が1人残って騒いでいた。
「イギャァアアアアアアッ!!? 熱いッ!! 舌が火傷したみたいに痛いいいいいい!!?」
「火傷したみたいじゃなくて、火傷をしているんだよ」
「リタさん、ルノアの口の中を治せる?」
「あいさ〜! それぐらいの事は私にお任せ! はい、あ〜んして」
「ファ〜〜〜・・・・・・」
やれやれ、今後もこの調子だと先が思いやられるなぁ〜。
少し呆れた表情で治療を受けるルノアの姿を見ていると、セリアが服の袖を軽く引っ張って来た。その後に耳元で話出した。
「ルノアって実はね。社交的なことが苦手なの。だから慣れている私か自分と同じ身分の人ぐらいの人以外だと、緊張しちゃってああなっちゃうの」
「ああ、つまりあがり症ってわけね」
俺がそう言うとセリアは残念そうな顔で頷いた。
「はい、終わったよ! 他にも何処か痛いところがある?」
「ん〜・・・・・・大丈夫! サンキュー、リタ!」
「治って早々悪いけど、食器を置いて教室に戻ろうか」
「そうね。ここにいても意味ないし、行きましょうか!」
うん、気持ちの切り替えが早くてよかった。
「ところで、アタシは一体何を頼んで食べたんだっけ?」
「「「ビーフシチュー」」」
俺達はそう言って弁当をしまい、セリアとルノアは返却口にお盆を戻しに行ってから合流して教室へ向かったが、何故か俺達の教室内から騒がしい声が聞こえて来る。
「何かあったのか?」
「何かあったから騒がしいんじゃないの?」
まぁそうだよなぁ。リタの言う通り、何かあったから騒がしいんだよな。しかも他のクラスのヤツらが気になったのか集まって来ているし。
「入れなくなる前に入ろうか?」
「入るの危なくない?」
「でも、教室に入らないと・・・・・・」
そんな会話をしていたら教室の扉を開いて中から人が出て来た。
「あ、あれは」
教室内からなんとイレイラ生徒会長が出て来たのだ。それと同時に廊下で集まっていた生徒達はイレイラ生徒会長から発せられる気迫に当てられたのか、彼女を中心に輪を作るようにして離れる。
「いないなら仕方ない。か」
イレイナ生徒会長はそう言うと俺達とは反対側に向かって離れて行ってしまった。
「ウチのクラスに何をしに来たんだ?」
「きっとコウヤのことを探しに来たんだよ!」
「そんなわけがないだろう」
入学して早々に興味を持たれることなんて何もしていないし。
「ハァ〜、よかったわぁ〜。もう少し早く教室に向かっていたら、今頃どうなっていたのやら」
「そうだね。あのときみたいに気絶していたかもね」
どうやらルノアは気絶したことがあるらしい。てかその豆腐メンタルを何とかした方がいいと思うぞ。
安心し切っているルノアの顔を横目で見つめながら教室に入って行くと、1人のクラスメイトが青ざめた顔をさせながら俺達の目の前にやって来たのでビックリしてしまった。
「おい、お前!」
「ど、どうした? そんな血相を変えて」
「イレイラ第3王女がお前を探していたぞ! 何処に行っていたんだよ!?」
「何処って・・・・・・食堂にいたんだが」
セリア達と楽しくお喋りしながら食べていた気がする。何で気がするかって。ルノアはウマイウマイと言うだけのマシーンになっていたし、セリアに関してはアンリネットさんと睨み合いながら話し合っていた。
しかもカーシャさんに関しては俺が持って来たキャラ弁に興味津々な顔で見つめて来ていて、もうカオス空間が出来上がっていた。
「しかし、どうしてイレイラ生徒会長が俺を探していたんだ? 理由を聞いていないか?」
「そんなの聞けるわけがないだろうっ!」
まぁ身分差があるから仕方ないか。
「まぁ用があるのならまた来ると思うから、待っていようじゃないか」
「お前・・・・・・どうしてそんなにお気楽でいられるんだぁ?」
「いや、だってさぁ。俺にとって他国のお姫様は興味ないから」
もしもイレイラ生徒会長ではなく ◯ルース・リー だったら、俺は確実に動揺していたよ。
「席に座ろうか」
「あ、うん」
「アンタって肝っ玉が座っているわねぇ〜」
「コウヤだから仕方ないよぉ」
呆けているクラスメイトの脇をすり抜けると、自分達の席に座って授業開始の予鈴を待ったのだが、問題が起きた。
『かぁーえーれっ!!? かぁーえーれっ!!? かぁーえーれっ!!? かぁーえーれっ!!?』
何でクラスメイト全員(※セリアと俺を除く)が帰れコールをしているのか? それは予鈴が鳴る前に入って来た先生に問題があったからだ。
「キサマら静かにしろっ!! この優秀な私が直々に授業をするのだから感謝するべきなのだっ!! 入って来て早々、一体何なんだこのブーイングはっ!?」
そう、次の魔術式に関する授業をするのは何とバルゲル先生なのだ。
『バルゲル先生の授業がつまらないから、ブーイングをしているんです!』
「なっ!? この私の授業がつまらんだとぉ!?」
「はい! 私は去年先生の授業を受けていましたが、自慢話が多くてまともな授業をしていなかった気がします!」
「僕も先生の授業を受けていましたが、依怙贔屓が多いです!」
「特に自分より身分の高い人に気に入られるようにしているのが見え見えだった」
「俺が答えを間違えたら、メチャクチャ蔑んで来た」
そして全員がジト目をすると、バルゲル先生は自分が劣勢と感じたのか身体を震わせている間に予鈴が鳴った。
「フ、フンッ!? まぁいい。早速授業を始めるぞ」
そう言ってから黒板に文字を書き始めたのだが、手が震えていて辿々しい字になってしまっている。
「あ、動揺している」
「どっ、動揺などしとらんっ!!」
リタにそう反論をした後、今度は書き殴った。
「この魔術式は・・・・・・」
「はい先生! ちょっと待って下さいっ!!」
「何だ? 授業中だぞ」
不機嫌そうなバルゲル先生に対して、女子生徒はニコニコ顔で答える。
「他の先生達は自分が受け持つ授業がどういうのか説明をしてから授業を始めていました! 先生は何でやらないんですかぁ?」
「そんなもん、中等部で習ったであろうっ!!」
「あ、俺留学生なんで習ってませんよ」
「同じく、私もミヤマさんとは違いますが高等部受験生なので習ってませんよ。でも中学校で習っています」
「って言ってますけど?」
「うっ、グゥッ!?」
とても嫌そうな目付きで俺の顔を見つめて来るバルゲル先生。俺を睨んでも意味がないぞ。
「よ、よろしい。私が自ら基礎と魔術式の話をしてやろう。魔術式というのは字の配列、もしくはその文字を円状に作り上げた魔法陣などだ。
魔術式は魔法とは違い、魔力を込めて書かれている文字を読むだけで魔石と同じで発動する。しかし魔法陣の場合は、呪文が必要な場合がある。例えばキサマ達が知っている召喚魔法陣だ」
「普通に授業が出来たんだ。あの先生」
ルノアがそう言った瞬間、バルゲル先生の眉がピクリと動いた。気に障ったのが丸わかりだ。
「そして、この魔術式を覚えれば様々なことに使われている。ミヤマ、キサマ答えられるか?」
「コンロとか、身分証に使われてます」
「そうだ。コンロに書いていれば子供でも火を点けて料理が出来る。それに身分証にも記録の術式が組まれているから、何処出身の人物なのかの他に犯罪履歴が見れる。冒険者ギルドもこの術式を利用して魔物の討伐履歴にしている。因みに身分証やギルドカードの履歴の改竄は厳罰に当たるからしないようにっ!」
魔術式って本当に色んなところで利用していたんだなぁ。
「まぁ優秀な私ならその程度の魔術式だけではなく、もっと高度なぁ〜・・・・・・何故キサマらは本を身構えている?」
『バルゲル先生が自慢話を始めたからです!』
「暴力で訴えると言うのかぁ!!」
『そうしないと止まってくれないからですっ!!』
「う、うぬぅ〜・・・・・・」
ホント、人望がねぇな。この先生は。
その後もバルゲル先生が自慢話をしようとしたら、生徒達が教科書を身構えてを繰り返していたので無事(?)に授業を終えることが出来たのであった。
こうしてルノアの舌は治り、授業を無事に終わらすことが出来たのであった。