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スキル『育毛』が最強チートだなんて、誰が想像できたというのか?  作者: 桜霧琥珀
一章 育毛って、そんなスキルあり!?
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08 訓練後のムダ毛勇者




 訓練の時間が終わり、僕たち勇者は整列した。

 一応、僕も最後尾に整列させてもらった。


「よし! 今日の訓練はここまでだ! この調子でこれからも頑張ってもらうからな! では、解散!」


 ヴォルザークさんの言葉で、訓練が正式に終了する。

 ちゃんとした勇者であるみんなは、専属侍女が迎えに来てくれる。

 中には猫耳やうさ耳、犬耳の美少女メイドさんも居たりして、正直死ぬほど羨ましい。


 で……僕を迎えに来てくれる猫耳メイドさんは居ないわけで。

 溜息をついてから、仕方なく一人で帰ることにする。


「――おい、ムダ毛野郎!」


 不意に、僕を呼ぶ声がする。

 いや、認めたくないけど、ムダ毛野郎なんて呼び方に該当する人間は僕だけだろうし。


 仕方無しに、声のする方へ振り向く。


「ええっと、何かな?」


 そこに居たのは鬼瓦くん。

 取り巻きの男子も一緒だ。


「テメェ、雑魚すぎて特訓もさせてもらえなかったんだってなぁ?」

「えっと、まあそうなるかな」


 ランニングは特訓の一部だし、体力が付けばみんなと同じ訓練にも参加するんだけど。

 という文句は飲み込んだ。


 まあ、鬼瓦くんのようなヤンキー系男子には正論は通用しない。

 フィーリングで行くのだ、フィーリングで。


「二度と調子乗んじゃねえぞ、雑魚が」

「んー、分かったよ」


 調子に乗った記憶は無いが、今後乗るつもりも無いので同意しておく。

 そう、正論ではなくフィーリングとノリで会話するのだ。

 ヤンキー系にはそれしかない。


「そういう態度が気に入らねぇっつうんだよ!!」

「へぶっ!?」


 僕が疑問を挟む前に、鬼瓦くんの拳が顔面に飛んできた。

 見事に鼻頭をぶん殴られた僕は吹っ飛ぶ。


 ごろごろ転がって行った後は、痛みを堪えながらどうにか身体を起こす。


「……な、何するんだよ」

「テメェが調子に乗らねえように、ここでしっかり教え込んどいてやるんだよ。ありがたく思えよ?」


 感謝のかけらも沸かねぇ……。

 殴られて喜ぶ変態がどこにいるんだよ。


 もうやだ、鬼瓦くん嫌い。

 会話が成り立たないってもう何なんだよ。

 馬鹿なの?

 それとも猿なの?


 とまあ、そんな口答えを僕みたいなモブ男子ができるはずもなく。


「……よく分かんないけど、何か悪いことしちゃったなら謝るよ」


 怒りで煮え立った心を抑え込み、なんとかそんな言葉を口にする。


「覚えとけよ、雪広。幼馴染だか何だか知らねぇけど、麻衣はテメェのもんじゃねぇ。雑魚のお前じゃあふさわしくねぇんだよ」


 何、なんでここで麻衣が?

 こいつ、麻衣のこと好きなの?


 いや、それならそれでいいんだけどさ。

 勝手に恋しちゃってくれよ。

 僕を巻き込まないでくれよ。


 麻衣が鬼瓦くんをどう思うかなんて、僕には関係ない。

 そんなのは、鬼瓦くん自身が麻衣と話をして決めるべきだ。

 少なくとも、僕を殴ってどうにかなるもんじゃない。


 でも、鬼瓦くんはヤンキー系だ。

 そんな正論は通用しない。

 フィーリングで殴ってくるしさ。


「……まあ、僕が弱くて、麻衣が強いのは理解してる」

「お前じゃあ麻衣を守れねぇ。違うか?」

「違わないよ」

「じゃあ二度とでしゃばんじゃねぇぞ!!!」


 ひときわ大きな声を張り上げ、鬼瓦くんはもう一発の拳を僕に叩き込んだ。

 僕はさっきよりもさらに派手に吹っ飛ぶ。


 あぁ……いってぇ。

 視界がフラフラする。


 でも、これで鬼瓦くんも満足だろう。

 チカチカする視界の隅で、鬼瓦くんが立ち去っていくのが見えた。


 ……幸いというか、麻衣はすでに専属侍女に連れられて訓練場から立ち去っていた。

 僕の情けない姿も、鬼瓦くんのみっともない嫉妬も見ずに済んでいる。


 変なことに巻き込んじゃったなぁ。

 麻衣、悪い。


 そんなことを考えながら、僕の意識は闇に沈んでいった。

連続投稿はここまでです!

次の話からは投稿ペースが下がっちゃいます。


ですが、これからもこの作品を読みたい! 駿くんのこれからが気になる! って方は、ぜひブックマークや評価ポイントのほうをよろしくおねがいします!!

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