06 特訓開始
で、倉庫に泊まった翌日。
クラスメイトこと勇者たちは全員、王城に併設されている訓練場へと連れて行かれた。
そこで待っていたのは、二人の男。
立派な体格の男と、ローブを被った痩せ気味の男だ。
「――よし、集まったようだな! 俺はアマルティア王国の近衛騎士団長、ヴォルザークだ!」
「……そして吾輩がアマルティア王国宮廷魔術師団の団長、オルステッドだ」
二人の男が名乗りを上げる。
推測するに、どうやら二人ともかなりの力を持った人物のようだ。
「今日からお前らの訓練を開始する! まずは全員ステータスを開示しろ! その内容によって、直接戦闘と魔法戦闘どちらかに特化した訓練を開始する!」
「……直接戦闘はヴォルザーク、魔法戦闘は吾輩が担当する」
二人の指導者に言われて、クラスメイトは全員がステータスオープンと呟く。
当然、僕もステータスオープンと宣言。
で、順番にヴォルザークさんがステータスを確認していく。
「お前は俺! お前はオルステッド! 俺、俺、オルステッド、俺!」
そして僕の番になると。
「雑魚! お前は特別メニューだ!」
「え、はい……」
どうやら弱すぎる僕は分類の例外になってしまうらしい。
で、それぞれの訓練が開始する。
麻衣は直接戦闘、藤宮さんは魔法戦闘の訓練をしているようだ。
鬼瓦くんも直接戦闘で、永瀬くんは特別扱い。
日によって直接と魔法の戦闘訓練を交互にこなすようだ。
そして僕は……基礎体力づくり。
とにかく走れ、と言われて訓練場の外周をひたすら走っている。
何しろ、僕のステータスは低い。
そのせいで、他のみんなの訓練についていく体力が無いのだ。
魔法戦闘の訓練では体力ではなくMPが必要なのだけど、そっちも足りない。
レベル上げは基礎が出来てから、とのことなので、今はMPを増やす手段が無い。
なので、俺は基礎体力を作った後は直接戦闘の訓練に入るらしい。
……まあ、今はひたすら走る以外に無いんだけどさ。
「ぷっ、見ろよあれ」
「ランニングとか、マジ?」
「異世界まで来てやることかよ!」
「走るムダ毛とか、くっそ笑えるわ」
そして走る僕の姿を見て、クラスメイトが笑う。
どうやら僕は、かつてのようなモブ男子でいることは出来ないようだ。
つまり僕はモブ男子から、いじめられっ子系男子にジョブチェンジしたのだ。
……この世界ってジョブシステム的なもの無いのかなぁ。
とまあ、しょうもないことを考えながらランニングを続ける。
勇者として弱いとは言っても、この世界では強者に含まれるステータスのおかげか、妙に軽々とランニングを続けることは出来た。
なので、色々と考える余裕がある。
せっかくだし、意味不明な育毛スキルとやらの使いみちについて考えてみようか。