05 ムダ毛の勇者の待遇は?
「それでは、勇者の皆さまにはこれから個室が与えられます。それぞれ専属の侍女がつきますので、これより先はその侍女の案内で詳細をお聞きください」
王女様のその言葉で、この場は解散となった。
次々と姿を現したメイドたちが、次々とクラスメイトのみんなに話しかけてはどこかへと連れて行く。
「――勇者様。貴方の担当は私になります」
そう言って近づいてきたメイドさん。
その頭には、猫耳が生えていた。
「……獣人?」
「あれ、よくご存知でしたね。確かに私は猫系の獣人族です」
なんと、獣人が存在するのか。
猫耳はいいなあ、これはいい。
というか専属侍女の猫獣人なんて、ある意味勝ち組では?
雑魚だなんて全く気にならないぞ?
「ともかく、勇者様。お部屋にご案内するのでこちらについてきてください」
「はいはい!」
猫耳メイドさんに言われるがまま、僕は半分浮かれながらついていく。
……で。
到着したのは部屋っていうか、倉庫みたいな場所だった。
「あの、ここは?」
「勇者様の部屋ですが?」
マジかよ。
「倉庫っぽくない?」
「何言ってるんですか勇者様。そもそもここ倉庫ですし」
「あ~、どうりでねえ! 倉庫っぽいって思ったよ!!」
マジで倉庫かよ!
「正直に言いますと、ムダ毛の勇者様に余計な予算を割きたくないとのことで、急遽倉庫の一つを部屋として使えるように改装させていただきました」
「やめて! そんな気遣いしてやったみたいなノリで嫌がらせしないでくれる!? っていうかムダ毛の勇者様って何!?」
「ムダ毛の勇者様のお仲間がそう呼んでいらっしゃったからですが。違うのですか?」
「違うわ! 僕にはちゃんと雪広駿って名前があるの!」
僕が言うと、猫耳メイドさんは頷いてこう言った。
「では、これからはムダ毛様とお呼びしますね」
「だあああああぁぁぁぁあ~~~~!!!!」
どうやらダメみたいだ。
で、ムダ毛呼ばわりが確定した後。
僕は猫耳メイドさんに色々と話を聞かせてもらった。
無駄な予算は使えないから部屋とか食事の待遇はクソみたいなものになる。
けど、どうやら勇者としての訓練なんかは受けさせてもらえるみたいだ。
勇者としては弱いと言っても、この世界では比較的才能に恵まれた方に含まれるらしい。
そして勇者の特訓は僕の存在に関わらず行うものだから、ついでに僕も特訓したほうがお得だろう、とのこと。
まあようするに、大して強くはないが手間もかからないなら鍛えて戦力にしたほうがいいということだろう。
「――というわけで、頑張ってくださいね、勇者様」
「ああ、分かった。これからよろしくな!」
「……はい?」
「え?」
僕と猫耳メイドさんは首を傾げる。
で、少しの沈黙のあと、気づいたように猫耳メイドさんが言う。
「ああ、なるほど。私のこと、専属侍女だと思ってらしたんですね?」
「え!? 違うの!!!?!?」
「違うに決まってるじゃないですか。予算割けないって説明したばかりですよね? アホなんですか? そんな勇者に専属侍女なんて付くわけないじゃないですか」
「……一応正論なだけに言い返せねぇ」
確かに予算が無ければ専属侍女も無いというのは、予想の難しくない話だ。
けど、だって、認めたくないじゃないか!
猫耳メイドさん、ほしいんだもん!!
「一応、しばらくは私がムダ毛の勇者様の担当ですけど、そのうち新しいメイドに担当が変わりますから。その時までは、一応よろしくおねがいしますね」
「……はい、よろしくおねがいします」
やはり、僕のような雑魚勇者には猫耳メイドなど夢の話だったようだ。
くやしい!!!!