04 勇者の中の勇者
僕たちが隅の方でステータスを確認していたとき、突如王女様の方で歓声が上がった。
「これは、すごい!」
「かの伝説の勇者様と同じスキルじゃないか!」
「しかもこのステータス……信じられん!」
鎧の人たちが口々に騒いでいる。
そして、騒ぎの原因は――どうやら、永瀬くんのステータスのようだった。
正直気になる。
僕はこっそり後ろの方に近づいて、ステータスを遠目で確認した。
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名前:永瀬勇一
レベル:1
HP:1500/1500
MP:500/500
攻撃力:500 防御力:500
魔法力:500 器用さ:500
敏捷性:500 運命力:500
スキル:『覇者覚醒』 『聖剣召喚』 『全属性魔法適正』
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つっよ。
僕なんかと比べたら圧倒的に強い。
っていうかめちゃくちゃ強そうなスキルが3つもあるし!
なんというか、世の中不公平だなあ。
まあ、モブ男子の僕みたいなやつが永瀬くんみたいな能力を貰えるわけないけどさ。
でも、いくらなんでも差がひどすぎない?
「さすがです、勇者さま」
僕が唖然としているうちに、どうやら王女様は永瀬くんに近寄っていたようだ。
永瀬くんの手をとって、微笑みかけながら話す。
「ナガセさまのスキル『覇者覚醒』と『聖剣召喚』はかつて存在した、魔王を倒した伝説の勇者様の持っていたものと同じスキルです。そして『全属性魔法適正』は、賢者と呼ばれた伝説の魔術師さまが持っていたスキルだと言われています」
どうやら、永瀬くんのその力は相当なもののようだ。
「おい、テメェだけ調子乗ってんじゃねぇぞコラ!」
永瀬くんが持ち上げられるのが気に入らないのか、鬼瓦くんが声を上げた。
「そちらの方のステータスは?」
王女様が問いかけると、鎧の人たちが鬼瓦くんのステータスを確認する。
「こ、こちらの方もかなりのステータスの持ち主です!」
「そうですか、それは幸いです」
どうやら、鬼瓦くんのステータスも高いらしい。
僕はこっそりと、後ろから覗き見る。
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名前:鬼瓦龍城
レベル:1
HP:2000/2000
MP:300/300
攻撃力:650 防御力:400
魔法力:100 器用さ:200
敏捷性:300 運命力:300
スキル:『剣術』レベル35 『断絶剣』レベル1
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うーん、鬼瓦くんも強い。
どうやら弱いのは、本当に僕だけのようだ。
「――お前はどんな感じだ?」
その時、僕の注意が逸れていたのもあって、後ろからクラスメイトにステータスを覗かれてしまった。
「……ははははっ!! まじかよ、弱すぎんだろこれ!」
クラスメイトは、僕のステータスを見て爆笑した。
それに釣られたのか、クラスメイトの間で僕のステータスが書かれた光の板が回し読みされる。
っていうかこれ、手で持てたんだ……。
普通に宙に浮いてるし、触れないやつかと思ってたわ。
「――っていうかなにこれ、育毛って意味不明だし!」
「あはは、生やしてどうすんの、意味不明~」
「意味ないだろ、毛が生えたって!」
「ムダ毛野郎ってか?」
「それ良いな、ムダ毛の勇者! かっけぇ~!」
めっちゃ馬鹿にされるじゃん……。
いや、想像は出来てたけどさあ。
「あの、王女様」
「はい?」
僕が王女様に話しかけると、どこか今までより冷たい声色で返事があった。
何か妙な感じがするけど、とりあえず話を聞くのが先だ。
「僕のステータスって、どんなもんなんでしょう? 他の人と比べて、どれぐらいの強さになるんですか?」
「そうですね……上級冒険者や、騎士団に入るような貴族でしたら、ステータスが100を超えることは珍しくありません。とくに才能がある者は200に到達することもあります。勇者さまは皆さん、この世界の特別な天才に匹敵するステータスを持っていると言えます」
王女様の言葉が、微妙に話をそらしていたので、僕はもう一度聞く。
「それで、あの、全部が100っていうのは、強いんですか?」
僕の問いかけに、王女様は眉をしかめる。
「強くはありますが……貴方ぐらいの強者なら、探せばいくらでも見つかるかと」
なるほど。
つまり僕は……勇者としてはクソ雑魚ナメクジってことか。