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スキル『育毛』が最強チートだなんて、誰が想像できたというのか?  作者: 桜霧琥珀
二章 新人冒険者、マオちゃん誕生!
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13 僕の進む道




 ――覚悟を決めてからの展開は、一瞬のことだった。


 無数の毛が、4人の足元から伸びる。

 操毛で毛を操り、4人を拘束。

 雷毛から電撃を放ち、4人をしびれさせて無力化。


 その間、わずか1秒足らず。


「なっ!?」

「うそ、何よこれっ!?」

「きゃあっ!?」

「ぐぬぅっ!?」


 4人がそれぞれ、驚きと苦しみの声を上げる。


 僕は拘束した4人に近づきながら、口を開く。


「――質問があります。まず、僕たちがここに来たことを知っている人は居ますか?」

「いや……俺たちのやってることは犯罪だ。誰にも知られるわけにはいかなかったからな。犯罪奴隷がどっかに潜んでないか、念の為にまた捜索に入るとだけギルドには言ってきた。マオが一緒に来てることを知ってる奴はいない」


 僕の問いに、ガットさんは馬鹿正直なぐらいペラペラと答えてくれた。

 嘘を吐く必要も無い場面だから、この話は信用していいだろう。


 となると……僕はこの後、しれっと村に戻って旅の支度をすることができるわけだ。

 そして、4人が行方不明になっても――雪広駿のせいにすることが出来る。

 猫獣人のマオは真っ白なまま旅に出ることが出来るっていう寸法だ。


「じゃあ、次の質問です。皆さんに共犯者は居ますか?」

「いねえ。身内が増えればバレるリスクが増えるからな。この4人だけでずっとやってきた」

「そうですか……では、同業者はいますか?」

「いるだろうが、村にはいねえよ。俺の知ってる限りの同業者は全員王都だ。こんな辺鄙な村で、こんなしょうもねえ犯罪に手を出す輩なんざ、俺らぐらいなもんだ」


 とりあえず、ムント警戒村では今回みたいな襲撃は警戒しなくて良さそうだ。

 ひとまず旅の支度と出発までは安心だろう。


「最後に……どうして、こんなことをしたんですか?」


 そして僕は、最後に意味のない質問を繰り出した。

 なぜガットさんみたいな、面倒見のいい気さくな冒険者の先輩が、こんな犯罪行為に手を染めているのか。

 それが知りたかったのだ。


「――生きるためよ」


 なんと、答えたのはシーラさんだった。


「どうしてもお金が必要だったの。ある依頼で、ガット以外みんな毒で倒れちゃったの。その時は5人パーティだったわ。私の、パパも入れて5人だった」


 思わぬ真実が語られて、僕は目を見開く。


「……お父さんは、どうなったんですか?」

「死んだわ。解毒剤が買えなかったの。それで……パパにお願いされて、私を、パーティのみんなを助けるために、ガットは貴族から裏の仕事を受けた。お陰で解毒剤は買えた。それからは……想像は難しくないでしょ?」


 シーラさんの言葉に頷く。

 一度でもこんな黒い依頼を受ければ、あとは泥沼だ。

 弱みを握られたガットさんたちは、貴族からいいように使われ、同じような黒い依頼を何度もこなしてきたのだろう。


 ……合点がいった。

 だからといって、4人を解放するつもりは無いけれど。


 僕だって生きるために――貴族から逃げ切るためには、自分が雪広駿である証拠を残すわけにはいかない。

 ガットさん、マチルダさん、シーラさん、グルドさんを殺さなきゃいけない。


「……なぁマオ、訊いていいか?」

「なんでしょうか」

「お前は……もしかして、本当に公爵殺しの犯罪奴隷なのか?」


 ガットさんの問いに、僕は首を横に振る。


「半分だけ、正解です。公爵は殺しましたけど、犯罪奴隷じゃなくて違法奴隷です。公爵の性奴隷にされそうになったので……逃げるために、公爵を殺しました」

「……そうか」


 ガットさんは、目を伏せた。


 そのまま、沈黙が場を支配した。

 僕は何かを言いたくて、けれど言葉は出てこなくて。

 そうやってうじうじしていると、またガットさんが口を開いた。


「なあマオ、お前に貸したマジックバッグあるだろ。あれ、やるよ」


 それは、突拍子も無い提案だった。


「……どういうつもりですか?」

「いや、どうせここで殺されるんだ。道具は使ってくれる人間の手に渡った方がいいだろ?」

「……どうして、僕にそこまでしてくれるんですか」


 僕が言うと、ガットさんは――笑った。


「アッハッハ! そりゃあお前、後輩だろうがよ! そんで俺らは人間のクズだ、殺されたって文句も言えねぇ身分だ。だからこそ……残せるものは、残してやりてぇって思うだろうがよ」

「そう、ですか」


 どう言っていいか、迷う。


「……ありがとう、ございます」


 けれど結局、僕は感謝を口にした。


「――上手くやれよ、マオ。俺らみてぇになるな」

「……はい」



 それが――僕とガットさんの、最後の会話となった。

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