06 獣人の生態
なんか、守衛さんに女の子扱いされた気がするけど……。
いや、多分気のせいだ。
気にせず冒険者登録を進めよう。
「よし、それじゃあまずは、君のお名前を教えてくれるかな?」
「えっと……僕は、マオって言います」
この偽名は事前に考えていた。
元々の名前は使えないので、当然偽名が必要になってくる。
だからいざ名乗る時の為に、先に考えておいたのだ。
ちなみに意味は中国語で猫のこと。
僕からすれば分かりやすく覚えやすい名前だし、ちょうどいいかと思ってこの名前にした。
「ふむふむ、マオちゃんね。可愛い名前だね♪」
「えっと……」
いや、可愛いとか言われても困るが。
僕、男ですし。
「次に性別――は、聞かなくてもいっか。女の子だもんね」
「えっ!?」
なんで!?
「ん? どうしたのかな?」
「えっと……あの、僕、男、なんですけど……」
僕は慌ててお姉さんの勘違いを否定する。
すると、僕の後ろで守衛さんが笑い声を上げた。
「アッハッハ! マオちゃん、そんな嘘はいけないな。君の骨格は、どう見ても獣人の女性のものだ。……ここは貧民街とは違って、男のフリをする必要はないんだよ」
やさしい顔で言い聞かせてくる守衛さん。
いや、親切してやった、みたいな顔されても困るんだけど!
僕は男だし!?
「成長期前なら、獣人でも男女の違いは人間と変わりないんだけどね。でもマオちゃんぐらいの年齢なら、男の子はもっと手足の骨が長く太くなって、毛の生え方も変わるんだよ? もしかして、周りに獣人の男の人っていなかった?」
え?
それマジ?
いやいや、そんなん知らないんだけど!?
やばいやばい、ボロが出るまえに誤魔化さないと!
「えっと……その、見たことはあるんですけど、お友達には人間の男の子しかいなかったので……」
「ま~、それなら仕方ないかな。貧民街の出身なら、そういうこと教えてくれる大人だって居なかったんだろうし」
「なるほど、そういうこともあるのか」
お姉さんと守衛さんが、勝手に納得して頷く。
……やべ~。
まじでバレるかと思った。
死ぬほど焦った。
……いや、でもこれは考えようによっては好都合かもしれない。
僕の姿が獣人の女の子にしか見えないというなら、種族どころか性別まで偽ることが出来る。
ますます自分の正体を隠すことができて、よりいっそう追手に見つけられる可能性は下がるわけだ。
つまり僕は女の子扱いされても何の問題もない。
そう、これでオッケーなんだ、だから落ち着くんだ僕。
心のなかで自然数を数えるんだ……1、2、3、4、5……自然数は自然な数字、僕の心を自然に落ち着かせてくれる……。
……よし。
なんとか冷静になったぞ。
ともかく、今日から僕は獣人の女の子、マオちゃんになるわけだ。
これからはそのつもりで行動していこう。
……育毛スキルでおっぱいを偽造とか出来るんだろうか?




