20 反撃開始
僕はブーディの部屋に通された。
そこには、すでに全裸のブーディがいた。
僕もスケスケのネグリジェ1枚だけだから、ブーディとそう変わらないか。
「さあ、シュンくん。ようやく私と君がひとつになる日が来たんだ。喜びたまえ」
「……はい。うれしゅうございます、ブーディ様」
いつもどおり、従順であるような演技をする。
けれど、本心は……魂は屈してはいない。
どうにか殺す方法を考えるんだ。
攻撃じゃない手段で――。
――そこまで考えて、気づく。
そうか、攻撃じゃなければいいんだ。
そうだよ、僕はもうすでに、成功してたじゃないか。
育毛スキルを、ブーディ相手に発動できている。
そう――ヤツの頭に育毛した時に。
「それじゃあシュンくん、ベッドに寝転がるんだ。そしてお尻を私に向けて持ち上げなさい」
「あの、ブーディ様、髪の調子はいかがでしょうか」
「……何?」
僕の言葉に、ブーディが耳を傾けた。
ハゲがコンプレックスだったからこそ、育毛を使わせたんだ。
耳を傾けるに決まっている。
「僕のスキルで生やした毛は、普通の髪とは違います。伸びることはありませんし、傷んだ髪はガサガサになります。何より……時間が立てば、勝手に抜け落ちてしまうんです」
「ほう……そうだったのか」
勝手に抜け落ちることだけは嘘だけど、それ以外は本当だ。
「ですから、定期的に僕の育毛スキルで髪を生え変わらせないといけないんです」
「そうかそうか、どおりで近頃、櫛の通りが悪かったはずだ」
「ですから……ブーディ様。僕に育毛スキルを使う許可をくださいませんか? ――『ブーディ様に育毛スキルで毛を生やす許可』を。抱かれるのであれば、1番ステキなブーディ様に抱かれたいのです」
「そうかそうか! そういうことであれば『許可する』ぞ! お前は私の1番のお気に入り、可愛いシュンくんだからな!」
――ついに、許可が出た。
許可さえあれば、僕はスキルを使える。
その育毛によって……たとえブーディが傷つく結果になろうとも。
狙うは、即死。
一撃で、確実にブーディの命を奪わなければならない。
僕は、ブーディの口を――口腔をじっとよく見る。
そこに、育毛スキルを発動した。
総勢240本の、2メートル40センチに渡る『針毛』が、ブーディの口の中に所狭しと生えだした。
針毛は一瞬で伸び――ブーディの身体を、頭部を貫いて飛び出る。
無数の針は、脳や心臓、肺といった重要な器官を貫く。
当然、生きていることなど不可能だ。
――言葉を発することさえ出来ずに、ブーディの身体はドサリと倒れた。
死んだ、はずだ。
「……まだだ」
そう、まだだ。
まだ、安心できない。
確実に、殺したと確認しなければならない。
僕は針毛を除毛し、消した。
そしてブーディの肉体を――全力で踏みつける。
ブーディが死んでいなければ、隷属の首輪が主人への攻撃を禁止するはずだ。
けれど、僕の足はブーディの頭を踏み抜いた。
攻撃力3000の強力な一撃は、ブーディの頭部を粉砕した。
――これで、間違いない。
ブーディは、死んだのだ。
「……ふふふ、アハハハハハッ! 自由だ! これで僕は自由になれたんだァッ!!」
最高の気分だ。
豚野郎を、ぶっ殺してやった。
最後にはあの憎たらしい顔を踏み潰してやった。
こんなに――爽快な気持ちになったのは、生まれてはじめてだ。
ドキドキする。
自由に期待する思いのあまり興奮してしまう。
でも、これで終わりじゃない。
まずは逃げないと。
公爵を殺したんだから、僕にこの国での居場所なんてない。
当然、屋敷に残ることも出来ない。
――剛毛を発動。
毛を鞭のようにふるい、窓側の壁を切り裂く。
そうして開放された壁の向こうには、夜の闇が広がっていた。
僕は部屋にあった適当な布を拝借し、これを剛毛で縫い合わせ、即席のローブのようなものを作る。
そして――僕は闇の中へと飛び出した。




