00 異世界とモブ男子な僕
新連載です!
よろしくおねがいします。
――それは、本当に突然のことだった。
視界いっぱいの光が溢れた後、僕たちを取り囲んでいたのは金属の鎧に身を包んだ大人たち。
そして大人に守られるような位置から、僕たちに向かって声を張る金髪の美少女。
「――ようこそいらっしゃいました、勇者様。どうか、我々の国をお救いくださいっ!」
そして金髪美少女さんは、ドレスをひらりを揺らしながら、流麗な動きで頭を下げたのだ。
「勇者? 何を言っているんだ。君たちは何者なんだ!?」
そんな金髪美少女さんに向かって怒りの声を上げるのは、うちのクラスの委員長、永瀬勇一くん。
クラスの人気者で、モテモテのイケメン男子だ。
どうやら持ち前のリーダーシップで、このわけのわからない状況でもみんなを引っ張ってくれるみたいだ。
「……ケッ。良い子ちゃんぶりやがってよぉ」
そして、そんな不満の声を永瀬くんに向かって漏らしたのは、鬼瓦龍城くん。
クラスの嫌われ者で、すぐ暴力に訴えるヤンキー系男子。
そして今は、僕の胸ぐらを絶賛掴み中だ。
「ちょっと、龍城くん。もういいでしょ、駿ちゃんのこと離してよ」
こんな僕を助けるため、小声で呼びかけながら近寄ってきた女子の名前は赤坂麻衣。
僕の幼馴染で、鬼瓦くんとは同じ剣道部の仲間らしい。
「そうだよ、鬼瓦くん。今は喧嘩してる場合じゃないでしょ?」
麻衣に引き続き、鬼瓦くんを注意してくれたのはクラスのマドンナ、藤宮咲夜さん。
クラスの副委員長を務めていて、しかもとてつもない美人さん。
なんでも、読者モデルとかいうものもやっていたことがあるんだとか。
「……チッ。わーったよ、ったく」
麻衣と藤宮さんに注意されて、ようやく鬼瓦くんは僕の胸ぐらから手を離してくれた。
鎧を着た大人、つまり武装した人に囲まれても僕を掴んで離さない精神、ある意味なかなかのものかもしれない。
「大丈夫だった? 駿くん?」
「怪我はなかった? 平気?」
麻衣と藤宮さんという、二人のかわいい女の子に心配されて、僕はついにっこり笑ってしまう。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう、二人とも」
そして、正直ビビリまくってたのを心の奥底に隠しながら強がりを言ってみせた。
とまあ、僕たちがなんやかんやとやり取りをしているところを、どうやら金髪美少女さんはじっと見ていた様子。
そして話がまとまったのを確認すると、頷いてからまた口を開きます。
「これで静かになりましたね。では、お話しましょう。この国のこと。勇者召喚のこと。そして皆さんを召喚した理由のことまで、全てを――正直に、お話いたします」
そうして――金髪美少女こと、アマルティア王国第三王女のエメリア=アマルティア=ゴールドバーグ様が話し始めた時、全ての運命が回り始めたのだ。