ルーシェの好きな物語
皆さんお久しぶりです。私は生きてますw
【技能】《瞬歩》と《第一階位魔術・フィジカルブースト》を併用して急ぎ悲鳴が聞こえた場所へと駆け付けると視界に映ったのは、数匹の魔物に襲われている少女であった。
俺は咄嗟に【技能】《飛剣》を、今正に前脚の鋭利な爪で少女を引き裂かんとする魔物に向かって放ち、続け様に後方に控えていた残りの魔物にも同様に《飛剣》を放つ。
少女を狩ることに夢中だった魔物達は当然それに気付く事なく根を上げる事も許されぬままグチャリと、肉を割き骨を断つ生々しい音と共に頭と胴体が別れを告げた。
魔物に襲われていたその当の本人はと言うと、突然の出来事で驚いてしまったのか、ぽかんと口を開け惚けた顔で此方をみてくる。
「大丈夫か?」
取り敢えず安否確認の為、少女に声を掛けると――
「……ねぇ、お姉ちゃんはお兄ちゃんなの?」
茫然自失の状態から我に返った少女はどこか訝しげな目でそう言った。
「ちょっと何言ってるのか分からないです……いや、れっきとした男だけど……」
「じゃあなんで男の人なのに髪伸ばしてるの?」
「なんでって……」
なんでと言われても、迷宮に二年間篭ってたから切る機会が無かったとしか言え……なくもないな。だって一度家に戻った時に親にでも頼んで切って貰えれば良かったのだから。
だから正直に言うと面倒くさくてしなかったとしか言いようがない。
俗に言う一度引き篭もるとなかなか外に出なくなるあの負のサイクルと言う奴と同で、一度面倒だと言って散髪せずに伸ばしてしまうと最早どこまで伸びるか気になってそれ以降もやらなくなってしまったと言うわけだが、やはりそろそろ切るべきか……いや、でも一つこれでやってみたい事もあるしもう少しだけ伸ばしたままで居させてもらおう――例えそれが女性に間違われると言う代償を伴うにしても、なにも今回が初めての事ではないし甘んじて受け入れよう。
それに、この髪型がけっこう気に入ってるのもあるし。
「まぁ、気に入ってるからかな」
「ふーん、じゃあお兄ちゃんは変人さんなんだね!」
「何故そうなる!? てかそもそも男でも伸ばしてる人は普通にいると思うんだが?」
「でもお兄ちゃんみたいな人村で見たことないよ? やっぱりお兄ちゃんは変人さんなんだね!」
「ねぇ、ナチュラルにディスるのやめてくれない? それも子供に言われるのが一番傷つくんだが、と言うか君、危ない目にあった割にはけっこう元気だな……」
「うん! なんかね、お兄ちゃんみてたらへーきになった!」
「ねぇ、それ褒めてるんだよね? 俺が来て安心したって意味だよね!?」
「なに言ってるかわかんないの、それよりはやく帰ろ!」
「えぇ……」
♢♢♢♢♢♢
「わぁ! すごい! わたしこんなおっきくて凄いキレイな馬車乗るのはじめてだよ!」
そう瞳を輝かせながらまるで新しい玩具をもらった時のように興奮した様子ではしゃぐのは、俺が森の中で保護した少女――エマ。
あの後、いつまでも森の中に居ては危険だと言うこともあり、ひとまず俺は彼女を連れてリリムたちの下へ戻り事情を説明した。
そして今、俺たちは共に彼女のふるさとでもある森付近の村――アカサタ村に向かっている最中である。
それから暫くしてエマが落ち着きを取り戻した頃を機に、何故森に1人で居たのかを尋ねると、曰く彼女の母親が体調を崩してしまい、それを治そうにも手元に薬もそれを買う為のお金も無く、であれば自分で作ればいいと言う結果に思い至ったようで1人森の中で、薬草採集に向かってしまったそうだ。
「母親思いはいい事だが、あんな所に1人で行ったらかえって心配させるだろ? 帰ったらちゃんとお母さんに謝るんだぞ?」
「うん、ごめんなさい。それと助けてくれてありがとう!あの時のお兄ちゃん、まるで名無しの英雄みたいだったよ!」
反省の色を浮かべ素直に謝罪を口にするも、次には一転して先程の事などもう忘れたと言わんばかりの満面の笑みを浮かべながらそう言った、彼女の後を引き摺らない子供らしい様子に思わず苦笑する。
そう言えばアルジェンドもそんな事言っていた気がする。あの時は気にならなかったが、二度も言われると少し気になってしまうのが人の嵯峨――。
『なぁリリムは知ってるか?』
『いや、召喚されてからこのかた、主人と行動を共にしている妾が知ってるわけないのだ』
『それもそうだな……「そのジョンドゥってのはいった「【白き龍と黄金の果実】だな!」」
いったい何の事だ? ――そう口にしようとしたのを遮ったのは、何やら興奮した様子のルーシェだった。
「知ってるのか?」
「当然だ! なにせ帝国に昔からある童話だからな。帝国民なら誰しもが一度は読んだ事ある位有名な話で、ジョンドゥ――名無しの英雄とは、その話に出てくる主人公の事だ」
「へー、主人公なのに名前が無いのか」
「いや、正確にはあるのだが、ここで言う名無しと言うのは、勇者みたいな名の知れた特別な存在では無く、唯の大勢のうちの1人であると言う意味なんだ」
「成る程、だから名無しね。因みにそれってどんな話なんだ?」
「まぁ、簡潔に言えば、ピンチになったお姫様を1人の名もなき騎士が助ける感じの話だ」
「へぇ、なんかありきたりな感じだな」
「ふふ、まあ確かに……でも私の一番好きな物語だよ」
ほんと、自分の中の妄想を上手く文章化するのって難しいよね泣
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