ひめごと!③
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ルーシェの頼みを聞き終えた後も、なんら当たり障り無い話に花を咲かせがら歩く事しばらく、気づけばシェルターに辿り着いていた。
そっと扉に手をかける。
鉄製の重い扉は、まるでその存在を主張するかのようにゴゴゴと音を立てながらゆっくり開く。
その音に気づいた何人かが、此方に顔を向けてくるが、知人では無いとわかると直ぐに興味を失せたかの如く視線を戻し、ある者は睡眠を再開し、またある者達は隣人話しに興じる始めるなどし、其々己が世界に戻っていった。
その様子を視界で捕らえながらも特に気にする事なく辺りを見回すと、最初に来た時と同じ場所にロッソ達はいた。
「あ、おーい!」
彼らの元へ向かうと、如何やら彼らもまた此方に築いた様で、その証拠としてヴェルデとロッソが大きく手を振ってきた。
俺とリリムは、それに応えるように軽く手を振り返しながら彼等と合流を果たしたのだった。
「そっちはどうだった――って王女様!?」
合流していの一番にそう口を開いたのはロッソだった。
「え!?」
「……本当だわ」
「どうしてここに……」
続くようにして、ヴェルデ、アルジェンド、ヴェルドゥラの3人もまた、ロッソ同様に驚嘆の声を上げた。
如何やら彼等はルーシェがこの国の王女であることを知っているらしい。
まぁ、そもそも彼等は帝国民なのだから知っていて当然のことか。寧ろ余程の田舎者でない限り、王族として表へ出る事のある彼女の事を知らないなんて事はあり得ないのではないだろうか……知らんけど……。
それはさておき、取り敢えず俺は狼狽している彼等を落ち着かせながら、リリムに説明した時と同様に事の経緯を彼等にも話した――
「なるほどなぁ。遠目から見ても派手な鎧だなとは思ってたけど、まさかあの時お前が助けたのが王女様だったとは……世間は狭い、のか?」
「凄いねアルス君! ピンチのお姫様を救っちゃうなんて、本だけの話だと思ってたよ!」
「名無しの騎士ね……やはりサインを貰うべきかしら」
「確かに……」
それからは、説明に納得してた彼等に混じり、俺たちは時間の許す限り他愛の無い会話に身を興じた。
因みに、何気に普段から陽キャムーブをかましている彼等が、仕方ないとは言え、ルーシェを前に少しぎこちなさを醸し出している様子が新鮮で面白かったのはここだけの話――。
♢
翌日。予定通り街を経つべく、ルーシェの用意した馬車に乗り街門に向かうと、その門前で昨日別れたばかりの見知った人影を見つけた。
ロッソ達だ――如何やらわざわざ見送りに来てくれたようだ。
思わず「道徳5じゃーん!」と叫びそうになるのを抑えて、彼等に別れの挨拶をすべく馬車を降りる。
「もう、行っちゃうんだね……」
「ヴェルデ……」
「少しの間だったけどなんだか寂しくなっちゃうな……」
「そんな顔するなヴェルデ! 出会いと別れは表裏一体。生きてる限りまた会えるさ!」
「そうよ。何も今生の別れじゃ無いのだから、こう言う時は笑顔で見送るべきよ」
「右に同じく……」
「私は左にいるのだけれど……」
「……左に同じく」
「あははは……でも、うん。そうだね、そうだよね! リリムちゃん、あとアルス君も! 絶対絶対ぜっったいに! また会おうね! 約束だよ!」
「うむ、約束なのだ!」
「俺はついでかよ。まぁいいけど、そっちは如何するんだ?」
「ん? まぁ街の復興作業もあるし、暫くはここに居るつもりだな」
「そうか……じゃあ俺たちはそろそろ行くよ」
「そうか……またな」
「あぁ、また」
こうして俺たちは、彼等に見送られながら街を発ったのだった。
そして今に至ると――
♢♢♢♢♢
「あっ」
「如何したアルジェ?」
「サイン貰うの忘れてたわ」
「あれ、本気だったんか……」




