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それからどしたの②

第3章もいよいよ折り返し地点です。

 感動の再会から暫くすると抱擁から解放された修道服に身を包んだ妙齢の女性、そしてその後を追う様にロッソ達がこちらに向かって来た。


「貴方がアルスさんですね? 私はローラと申します。先程この子達から話を聞きました。何でも窮地のところを救って頂いたみたいで、それにこの街の事まで、親としてそして、この街の一住民として貴方に感謝を」


 修道服に身を包んだ妙齢の女性――通称『シスター』もといローラさんが、まるで子を想う母親かの如く慈愛に満ちた穏やかな、それでいて何処か曇りの拭た晴れやかな表情で開口一番にそう口を開いた。


 その様はまさに、神に身を捧げた聖者の様であった。


「いや、気にしないでください。唯のなれ行きですから。それにこの街のことは、俺だけじゃ無くて騎士団や冒険者、あとアイツらの活躍があってこそですから」

「ふふ、そうですね。ですが、貴方のお陰であの子達は無事で、こうして再開することが出来たと言う事に違いはありません。本当にありがとうございます」


 なんだろう、両親や知り合い以外の女性から正面きって感謝される事などないに等しくて、なんか照れるな……て言うかめっちゃ綺麗な人だな。何で異世界ってこうも顔が整ってる人が多いんだろう、例えばケインとか、あと普通にロッソとヴェルドゥラも充分イケメンだし。前世の俺が見たら嫉妬してるなぁ……いや、前世じゃなくともしてるわ。


「ま、まぁ、無事で何よりです……」


 兎も角、俺は感謝されると言う慣れない感覚にほんの少しの気恥ずかしさを覚え、それから逃れようと言葉を詰まらせながらも、話題転換しようとしたところで――


「それよりシスター! 何か手伝える事ない?」


 そんな俺の事などつゆ知らず、まるで俺の気持ちを代弁するかの如くヴェルデは、その性格由来の明るさを持って、元気よく俺たちの間に入り、シスターに向かってそう声を掛ける。


 話のターゲットが俺からヴェルデに移り変わった事で、一種の照れから解放された様な気分になり、思わずため息が溢れる。


「有難うヴェルデ。でも負傷者の手当も間に合っているから此処は大丈夫よ」


 ローラさんはまるで子を諭す様な優しい手付きでヴェルデの頭を優しく撫でながらそう言った。

 流石は聖母と言ったところか、その効果は抜群で、ヴェルデは目を細めながら気持ち良さそうにローラさんの手付きに甘えている。


「そっかぁ、ならしょうがないね」

「あ、そうだわ! それなら他のシェルターの様子を見に行ってくれないかしら?」

「他の? 此処以外にもあるんですか?」

「はい、この街には今回の様な緊急時の避難用として地下シェルター全部で4箇所あり、第1、第2、第3、第4シェルターとそれぞれ数字で名前分けされているです。そして此処は第1シェルターになります」

「ほらアルス君見て、彼処と彼処に扉があるでしょ?」


 ヴェルデはそう言いながら部屋の奥と右側面に向かって指を指す。俺はそれに導かれるままに視線を向けると、確かに彼女の指す方角には扉がそれぞれ設置されていた。

 さらによく見ると奥の扉には『2』と、そして右側面の扉には『3』と親切に数字が書かれているのが分かる。

 そう言えば、此処に入る時も扉には大きく数字で『1』と書かれてたっけ。


「あの扉を出ると暫く通路があるんだけど、そこを進んだ先にまた扉があって他のシェルターと繋がってるんだよ!」


 成る程。ヴェルデの話から推察するに、他のシェルターも此処と同じ様な構造だとして、その全体を俯瞰して見ると恐らく街内に四角を描く様な形でシェルターは設置されているのかもしれない。


 1・・・・2

 ・   ・

 ・   ・

 3・・・・4


 こんな風に――。


「それでシスター。シスターの話からすると他のシェルターにも避難している人がいるって事だよね?」

「えぇ、でも確信はないわよ。私も此処を離れて居ないから。でも見たら分かると思うけど、此処には貴方達以外に冒険者は居ないのよ」


 ローラさんの言葉に耳を傾けながら、一度シェルター内の全体を見回して見ると、確かに彼女の言う通り、冒険者らしき人は俺たち以外には誰一人と居なかった。


「だから、居るなら他のシェルターなんじゃないかなって。それに中には地上(うえ)で戦った人達もいるでしょうし、此処なんかよりも絶対、怪我した人が多いと思ってね」

「そっかぁ、ねぇ皆んなどうする?」

「そうだなぁ。シスターとはこうして無事に会えたからいいが、まだ他の奴らを見てないんだよなぁ……」

「そうね。シスターの言う通り此処にいないとなると、他のシェルターにいるか、まだ地上に居るのかもしれないわね」

「二択に一つだな……」

「なら、取り敢えず他のシェルターに行ってみようぜ。それで見つけたらなんぼ、そうじゃ無くとも、怪我人は……居るだろうから、必要であれば手当てに協力するって事でどうだ?」

「さんせー!」

「私もそれで構わないわ」

「俺もだ……」

「決まりだな! と言っても俺はあまり魔術は得意じゃないからなぁ。まぁ回復薬はたんまり持ってるから何とかなるだろ!」


 話し合いの末、如何やら彼等は他のシェルターの様子を見に行く事にしたらしい。

 その際、ロッソが「お前たちはどうする?」と聞いてきたので、これと言って今やる事のないと感じた俺とリリムの暇人二人は彼等に倣い、他のシェルターの様子を見に行く事にした。

 かと言って全員が同じ所に行く必要はなく、俺とリリムが第2シェルターでロッソとヴェルデが第3シェルター、そしてヴェルドゥラとアルジェンドが第4シェルターと、それぞれ二人組に分かれて行動する事になった。

 因みに彼等の言う「他の奴等」とは、この街の冒険者で特に親しくしている者達の事らしい。いわゆる冒険者仲間と言うやつだ。


 それから何回か言葉を交わした後に、再びここで落ち合う事を約束をして、俺たちはその場を解散したのだった。





 ♢第2シェルター



『2』と書かれている扉を潜り、長い通路を渡り終えると、いよいよ第2シェルターの中へと入る。

 其処は広さも内装もさっきまで居た第1シェルターと全く同じであった。

 しかし、そこに居る人達は住民の集まりでは無く、武装した集団――騎士団や冒険者達の集まりであり、中には負傷者も沢山おり、時節苦痛による呻き声がちらほらと聞こえ、悪い意味で賑やかな空間が出来上がっていた。そして――


「あっ、おーい、アルス殿ー!」


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