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帰省⑦

言い訳さしてください。

溜まってたラノベを消費して執筆に手が付きませんでした!

 それから数日が経ち、約束の一週間を迎えた。

 旅立ちの日だ――。


 着替えなどの衣服や旅に必要な物は全て魔導袋に詰め込んでいるせいか旅立つにしては随分と荷物が少なく、まるで近くを散歩でもする様な気分になる。


 因みに今の俺の魔導袋の許容量は部屋六畳分くらいだ。


「アルス、本当に学園には戻らないつもりか?」


 街の入り口付近まで見送りに来てくれた父さんがそう言った。

 隣に居る母さんは少し不安げな表情をしている。


「あぁ、そのつもりだよ」

「そうか……ならこれからどうするんだ?」

「取り敢えず東の大陸を目指すつもりだ」


 この世界――アルテンシアには、小さな大陸や島国などを除けば、大きく三つの大陸がある。


 まず一つ目は中央大陸――エクリビオ。

 エクリビオは三大陸の中で最も広い面積を持ち、俺たち住むアルカナ王国、そしてその隣国にヴァルシャ帝国、さらにその隣にナジーム砂漠と呼ばれる地帯が在り、そこにナジーム王国と呼ばれている小国が在る。

 大陸はこの三ヶ国から成り立っている。


 そして次にエクリビオから西に位置する西大陸――ファナティズム。

 ファナティズムはエクリビオの次に広い面積を持ち、人族と魔族の戦争――人魔大戦の舞台になった大陸である。

 かつては幾多もの国がそこにあったが、人魔大戦以降その全てが一つの国家で成り立っている。

 その国の名前は――エルトリンデ皇国。

 かつて俺が勇者として召喚され、殺された場所。そして自称創造神の支配影響を最も強く受けてしまっている憐れな国。

 真実を知っている今、彼の国に対して恨みなどは無い。何故なら彼の国もまた被害者であるから。だから思う事はただ一つ、憐れだと――。

 今ではファナティズム=エルトリンデ皇国となっている故に、この西大陸の事を大陸の名前で呼ぶものはそう多くは居ない。

 因みにアルカナ王国、ヴァルシャ帝国、エルトリンデ皇国の三ヶ国を称して三大国家とも呼ばれている。


 そして最後に今回の旅の最初の目的地である、エクリビオから東に位置する東大陸――タランクリオ。

 かの大陸とエクリビオを繋ぐ海域――アースラ海域は危険領域指定されていて、好き好んで足を踏み入れるものは多くはない。それ故にタランクリオは未知の領域であり色んな噂がある。

 曰く、人魔大戦で敗北した魔族が逃げ隠れているだとか。

 曰く、《双剣の勇者》が築いた国があるだとか。

 曰く、《自由の勇者》が築いた国があるだとか。


 魔族云々に関しては、転生前に神界から下界を除いた時には既にエルトリンデ皇国が大陸統一を果たしており、大戦後魔族がどうなったか分からない。だが、元々魔族はファナティズムの中で東に国を設けていたから、逃げるならば東へ向かうのが妥当な気がする。そうなるとエクリビオかタランクリオのどちらかに逃げ延びた事になるから、この噂が真実である可能性は高い気がする。


 残りの二つの噂に関しては、迷宮で《双剣の勇者》織田真司が遺した手紙にそう書いてあったからこの噂は真実だ。


「つまりこの大陸から出るって事だな?」

「あぁ」

「そうか……分かった……」

「ねぇ、アルス」


 父さんとの会話が一区切りつくと次いで母さんが声を掛けてきた。

 不安そうにしていた表情は未だ晴れないでいる。


「危険な旅じゃないのよね……?」

「それは……」


 危険な旅ですって正直に言えたらいいんだけど、それを言ってしまえば余計に心配させてしまうし、どうしたら良いものか……。


「ねぇやっぱりもう少し家に居ても良いんじゃない?」

「……」

「まぁまぁリーザ落ち着け、旅に危険は付き物だろ?」

「でも!」

「それに男ってのは旅する生き物なんだよ。俺だって冒険者として色んな場所に行ったおかげでリーザと出会えたんだだからな」

「あなた……」

「リーザ……」


 あれぇ?おかしいな、俺の見送りに来たんだよね!?今結構真面目な話してたよね!?なんで桃色空間が出来上がってるのかな!?二年ぶりに見たけど懐かしさとかそういうの全くないからね!?て言うか無視ですか!?俺主役なのにそっちのけですか!そうですかそうですか……チクショウ!


『なぁ主よ、此奴らはいつもこうなのか?』

『あぁ、隙あらばって感じだな……ったく「うぉごっほん!」

「うおっ!すまないつい……」

「はぁ……ったく勘弁してくれよ、息子の前でイチャイチャするの、しかも人前で」

「がはははは、まぁ良いじゃないか!お前も好きな奴が出来たら分かるようになるさ!」

「そういうもんかねぇ……」


 父さんのお陰で話が逸れたけどやっぱり言うべきだよな。


「母さん」

「ん?なにかしら?」

「正直言ってかなり危険な旅になるかもしれない」

「っ!?じゃあやっぱり――」

「でも必要な事なんだ!」

「……」


 やはりと言うべきか母さんは俺の話を聞いてもまだ納得してないのか口を噤んでそのまま俯いてしまった。

 するとリリムが霊体化を解いて母さんに話しかけ始めた。


「リーザよ」

「リリムちゃん……」

「何をそんな情けない顔をしているのだ?この《上位悪魔》である妾がついているのだぞ?何かあったとしても妾が守ってやるのだからそう心配するでないのだ」

「でも……」

「リーザ、さっきも言ったが旅に危険は付き物だ。それはアルスが一番分かっているはずだ」

「あぁ、それに母さん、俺は迷宮でも瞬く生き残ったんだ。また何かあったとしても必ず此処に帰ってくるよ」

「……そうね分かったわ、ならこれ以上は言わないわ」


 ようやく俺の覚悟が理解したのか母さんの不安げだった表情は晴れやかになり寧ろ何処か覚悟の決まった表情をしている。


「リリムちゃんもアルスの事頼むわね?」

「うむ!任せるのだ!」

「あっ、そうだわ!アルスあんた、エリナちゃんの事はいいの?」

「ん?あぁ、あいつの周りには頼れる仲間がいるから大丈夫だろ」

「そういう事を言ってるんじゃなくて……はぁ……あの子も大変ね」

「なにが?」

「いえ、何でもないわ。ただあの子、あんたの事諦めていなかったわよ」

「そうか……ならあいつに会ったら俺が無事だって事伝えといてよ」

「自分で伝えなさいよ」

「いや、そうなんだけどさ、どんな顔して合えばいいのか分からないし……」

「はぁ、情けないわねぇ、エリナちゃんも何でこんな子なんかを……」

「じゃあ、そろそろ行くよ」

「え?えぇ気をつけてね」

「あぁ」


 そう言い残して街を出るべく両親に背を向けて歩き出そうとすると――


「「アルス」」


 二人に呼び取られて振り返るとこう言ったのだ。


「「行ってらっしゃい」」

「行ってきます」

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