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VS 九十階層⑤

「ガァァァア!!!!」


 そして迫ってくるのは、俺をここで食い殺そうと言わんばかりに大きく口を開いたヨルムンガンド。


 ここまでかと、そう思った時だった。


『主人!準備は整ったのだ!』


 リリムが念話で準備が完了した事を伝えて来たのだ。


『間に合ったか!……じゃあ、悪いけど後は頼んだ……』

『うむ!任せるのだ!』


 念話を終えると早速リリムが【技能】《血液操作》を発動する。すると、俺の方に向かって来るヨルムンガンドの動きが止まった。奴の身体には、先程まで透き通るほどの青かったのが嘘だったかのようにリリムの血で濁った海水が、触手状に形を変え、巻きついている。


 そう、これが俺が思いついた作戦。

 と言ってもその内容は単純で、リリムの血が混ざった海水を《血液操作》で操るということだ。


 ここは、九割が海でヨルムンガンドにとって有利な場所だった。

 その九割の海を血の海と化すには、時間がかかった。しかし、それを成せた今、海の主導権はリリムとなり、形勢が逆転したのだ。


「ギャァァァア!!!」


 ヨルムンガンドは必死で巻きついた触手を引き剥がそうとするも、ここは既にリリムの海。次から次へと触手が伸びて来て、ヨルムンガンドに巻きついて行く。そしてそのままヨルムンガンドを海中に引きずり込み始めた。


 そして海中に引きずり込まれたヨルムンガンドの眼、口、腹、尻尾など奴の身体の至る所を、海水と混ざり合ったリリムの血が襲いかかる。

 この攻撃から逃れるには、陸に上がるしかない。しかしここには、ヨルムンガンドが上がれる程の陸地が無い。あるのは人が六人くらい上がれる小さな島だけ。そして何よりヨルムンガンドは海の生物だ。例え島に上がれたとしても、数分程度しか息が持たない。そして、海に帰ったとしても、その海も今はリリムのもの。

 つまり、リリムの準備が完了した瞬間から、もはやヨルムンガンドに逃げ場は無いのだ。




 それから20分の時間が経過した。


 リリムがヨルムンガンドの相手をしてくれているおかげで、《第二階位魔術》【ハイヒール】で折れた骨も治り、傷も癒えた。


 俺はその場を立ち上がり、地上に降りたリリムの元へと歩き始める。


 辿り着くとそこには、身体の至る所に穴が空き、そこから大量の血が流れている、瀕死の状態のヨルムンガンドが海面に浮上していた。そして今まさにリリムがトドメを刺そうとするところを俺はすんでで止める。


「リリム待ってくれ……トドメは俺にやらせてくれないか?」

「別に構わないが、どうしてなのだ?」

「いや、ただ単にコイツに手加減されていた腹いせをぶつけたいだけだ」

「あはは、成る程なのだ」

「笑うなよ……まぁ、とにかく後は俺にやらせてくれないか?」

「うむ、分かったのだ!」


 リリムから了承を得て俺は、《第一階位魔術》【フィジカルブースト】で限界まで身体を強化する。そして左手に握る剣に、火、水、風、土、雷、光、闇の八つの属性を付与(エンチャント)する。すると剣が虹色に輝きだした。それはまるで、勇者が持つ聖剣のようだった。


「じゃあな、海の王様。俺たちの勝ちだ!」


 こうして俺たちはヨルムンガンドとの戦いに勝利を収めるのだった。








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 〜ディーティアの観察日記〜 その33


 長い時間を掛けて遂に彼があのヨルムンガンドを打ち倒しました。


 それにしても手に汗を握る、なかなかの熱い戦いでした。

 私の気分は、地球で言うサッカーと呼ばれるスポーツを観戦している、サポーターのようでした。


 この調子で頑張って欲しいです。





 話は変わりますが、私がこの日記をつけようと思ったのにはもう一つ理由があります。


 それは、なんとなくこの先も出番がないと思ったからです。


 私、彼の恋人なのに……。


 だからこうして日記を書いて気を紛らわせようと思った次第です……あ、今夜の夜食は、お寿司でした。とても美味でした。




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