34話
ヒロのお腹の音によりミノタウルスに見つかったヒロ達であった。
「…まったく…」
「しょうがないだろ!まさかこんな時になるとは思わなかったんだよ!」
「ちゃんとご飯食べないからだよ〜!」
「元はと言えば!」
「…おい、貴様ら何を揉めている!」
「えっ、喋れるのか?」
まさかのミノタウルスの方から仲裁をしてくれた。明らかに強そうな筋肉質な体型に鈍く光る馬鹿でかい斧が印象的だ。
「我をそこら辺のミノタウルスと一緒にされては困るな、ウォルナ様に仕える上級魔物が一人、ダークマンティコア様の側近ミノちゃんだ!」
「えっ、その見た目でミノちゃんって…コハナ村にいた悪魔の仲間か?」
「悪魔だと…あんな奴等と一緒にするな!我らを悪魔などという、卑怯者と一緒にするな!力こそ、強さこそが全て、それが我ら魔物なのだ!」
「村長に寄生してたあいつの仲間〜?」
「…わからないけど、おにくは、すき…」
「ええい!見つかってしまったら仕方がない!ここで消えて貰うぞ人間ども!」
こうして、あのコハナ村で会ったあいつの所属が違う、魔物部隊の方との戦いが始まったのだ。
(完全に忘れてた…まさか急に戦う事になるとはなぁー…)
「どうした人間!我の恐ろしさで動けなくたったのか?ハッハッフッハハ!」
「なぁ、俺たちは何も見なかった事にして帰ってもいいか?」
「ちょ、ヒロ〜!そんなの無理に決まってるでしょ〜!」
「…おにくが…」
「人間よ、お前たちは悪魔達並みに悪知恵が働く、戻って仲間を呼ぶつもりだろ?我がそんな手に乗ると思ったか!」
「誰にも言わないから勝手にやってくれ、きっと世界は勇者が救うだろう、俺はのんびり暮らしたいだけだからな」
「ふむ、それは本当か?」
「あぁ、俺達じゃあんたに勝てそうにもないしな」
ヒロの言葉にミノタウルスのミノちゃんは、考えた。
(流石にこのままだと死ぬかも知れないからな、ここは何も見なかった事にしてクゥとの楽しい暮らしの為に頑張るとするか)
「ふふふ、良かろう!ここは見逃してやる!さっさと失せるんだな人間!」
「ありがとうございますー、帰るぞー」
「えっ、いいんだ〜」
「…おにく〜…」
どうにかこの場から逃げる事が出来そうになったので、ヒロはホッとした。
しかし、その時クゥが、
「にゃ〜!」
「なるほど、そういう事であったか!まさか我らの目的である、この遺跡に封印してある神をすでに手に入れていたとはな!」
「違う、これは俺のペットのクゥだ。人違い、もとい神違いじゃないか?」
「騙されんぞ!その鳴き声、正しく神の声!人間よ、残念であったな!」
「…マジかよ、神様って本当にネコだったのか」
「こうなったらやるしかないよね〜!」
「…おにく!…」
「にゃ〜」
ヒロはクゥを連れてきてしまった事を後悔した。
「人間よ、ミノちゃんのこの斧で殺される事を誇りに思うがよい!」
「!来るぞ、マリ!何とか攻撃を防いでくれ!ミーシャンちゃんは、遊撃!俺はマリの隙を突いて急所を突く!」
「よ〜し!負けないんだからねぇ〜!」
「…かくじつに…」
「これが力だ!人間よ!」
ミノちゃんは、斧を地面に叩きつける。その瞬間、凄まじい衝撃と砂煙がヒロ達を襲った。
「チッ!マリ止まれ!ミーシャンちゃん、前方に投擲!」
「わかった〜!」
「…りょうかい…」
「敵の攻撃に備えろ!」
マリは足を止め、ヒロはマリの右後方で待機、ミーシャンは、左後方か、投擲武器[手裏剣]を創り出し、投擲した。何故手裏剣を創り出せるのかというと、マジックソーを生み出す訓練の後ヒロが思った事を言いそれを創り出せるかを練習した結果である。普通の手裏剣と違い、刃の部分が高速回転しており、太い木を何本も切り倒せるくらいの威力がある。
「…そこ…」
「!見えているのか!?だがそんな物では!」
「…あまい…」
「何だと!?」
ミーシャンが的確に攻撃してきた事に驚いたが、強靭な肉体のミノちゃんには投擲武器程度では本来傷が付くはずがなかった。だが念のため斧で防御したのだが、軌道が不自然に飛んで来た事で防げなかったのである。
「ぐぁ!人間!何をした!」
「…いわない…」
「敵にわざわざ手の内を説明する訳ないだろ?」
「ぐぬぬ!戦いとは正々堂々とやるものだ!」
「いきなり目くらましをしてきた奴に言われたくないんだよ!」
「そうだよ〜、ミーシャンちゃんは武器を魔力で作れるから操れるんだよ〜!ミーシャンちゃんの力だから卑怯じゃないんだよ〜!……あっ」
「あっ!バカかお前は!」
「…マリおばか…」
「ふっふっふ、なるほどそういう事であったか…ならそいつから片付けるとするか!」
「おい!正々堂々はどうした!?」
「敗北するくらいならそんな物いくらでも捨ててやろう!」
この都合良く解釈するミノちゃんにヒロは、
「これなら悪魔の方がよっぽど正直だ!」
「貴様、我らを侮辱することは…許さん!」
ミノちゃんがヒロに向かって突進してきた。しかしマリが間に入り、それを防ごうとした。
「力勝負なら負けないんだから〜!」
「…残念だったな!」
「きゃ〜!」
「マリ!何をした!?」
「我の斧、魔斧グラディュールは鍔迫り合いをした相手を吹き飛ばす事が出来るのだ!」
「ちっ!ミーシャンちゃん援護を頼む、俺は前に出る!」
「…つぎは…」
「次はお前だ!侮辱した事を後悔すると良い!」
ヒロは槍で受け止めるという選択肢が元々なかったので、回避しながら、比較的に柔らかそうな目を狙う事にした。
「ハァ!これでもくらえ!」
「単純な動きだな人間、この前真っ二つにしてくれるわ!」
「ふっ、もらった!」
「…そこ…」
ミノちゃんがヒロを横から切り飛ばそうと振るった斧をヒロは、飛んで回避し目を狙って槍を突いた。ミーシャンもヒロに反撃させない様に腕を狙って攻撃した。
「舐めるなよ人間風情が!」
「なっ!ヤバイ」
「…ヒロ!…」
ヒロの槍が目の寸前で止まり、ヒロも宙に浮いたままであった。ミーシャンの手裏剣も空中で止まった。
「まさか、魔斧グラディュールの奥の手まで使う事になるとはなぁ…だがこれで終わりだ!」
「こっ、この!」
「ふっ、しぶといな!人間!」
「ぐっ…何しやがった?」
「魔斧グラディュールは神斧グラビティを模して造られたのだ、しかし再現出来たのは一部で、斥力とその場に一瞬留める能力しか出来なかった。」
「なるほどな、ゴクッ、ふぅ危うく真っ二つにされる所だった」
「しかし、そんな下級ポーションではその腕は、治らんだろ?」
「あぁ、ほとんど力が入らないな」
強引に抜け出すのに無理矢理力を入れ、斧による衝撃波によって腕の骨が折れたらしい下級ポーションでは、痛みを紛らわせるくらいにし効果を発揮しなかった。
「それと、これは返しておくぞ?」
「ミーシャンちゃん!解除を!」
「…!…」
ミーシャンの手裏剣がこちらに飛んで来たので、ミーシャンは急いで解除した。
「中々楽しめたぞ人間…だが相手が悪かったな!」
[させないわよ〜!]
「何者だ!」
「何だ、この声…?」
[全く、あんたってタイミング悪すぎるでしょ〜!]
「誰かは知らないけど、逃げた方がいいぞ」
[ふん、ちゃんと会いに来なさいよ、まったく〜!]
ヒロの前に現れたのは、若葉の様な色をした何かを纏った少女であった。
「ふ〜、やっと出て来れたわ!力を貸してあげる」
「俺の武器は、あいつの下で粉々になってるんだが」
「神槍持ってるでしょ?さっさと出しなさい!」
「えっ…」
「どこ見てるのよ〜!後ろに担いでるでしょ!バカなの〜、バカでしょ!」
「この棒の事か?」
突如現れた少女が、頑丈なだけの棒を神槍とか言ってきた事にヒロは困惑したのであった。
今回は遅れずに投稿出来ました(・ω・*)




