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非魔神の非魔ツブシ ~デモンズハーモニー~  作者: 霙真紅
アーセルム王国の魔神編
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七話  おべんきょー瘴気編

 イリスに加え、ラグナートまで遊びに来るようになった。

 円卓の間に集まってテーブルを囲み、奴らは不思議なほど和やかな空気を作り上げている。



「でな? その黒い魔剣を手に入れた将軍は三千人の兵士を切り捨てたところで、地響きと共に遺跡の下敷きになっちまったんだよ~」


「ほほぅ。散々暴れておいて何とも間の抜けた幕引きだったな!」


「そうなんだよ! それでな~」



 おっさんが鉢植えに刺さった剣に物語を聞かせていた。

 楽しそうに語らう姿は前後不覚を起こした酔っ払いにしか見えない。

 いや、そもそもなんで居るんだよラグナート……

 そんでなんでアガレスと仲良くなってるんだよ。



「なるほど、そうくるのね……。この展開は予想出来なかったわ……。ああ、良い! 凄く良い!」



 イリスは鼻にティッシュを詰め、俺の部屋から勝手に持ち出した『俺と隣の旦那様』を読んでいる。

 時折嬉しそうに、左右に揺れながら奇声を上げている姿はもう……

 淑女としてどうなのか、を通り越して恐怖すら感じた。



「イリスちゃん。気に入ったのならこちらもオススメしますわ。そちらと比べるとコミカルな描写は少ないのですが……。殿方同士の絡みがより濃厚な、そして熱く過激な純愛ですの」


「絡みが……濃厚……。か、過激……。し、シトリーさん! それも読みます! オススメ全部貸してください!」



 シトリーが新しい本を持ってやってくる。

 何を言ってるのか分からないが、何故か本の内容に不穏な空気を感じてしまった。

 だが元から読書家でもあり、頭の良いイリスには理解出来たようだ。

 笑顔を堪えているのか、口の端を上げて大変嬉しそうである。


 シトリーにあれこれ勧められ、最終的にフンフン言いながらシトリーの部屋に消えて行くイリス。

 あの本を読み出すと鼻血が出るとか言ってたくせに、何故わざわざ死地に向かうのか不思議である。


 ラグナートもイリスも良い遊び相手を見付けたものだ。

 それじゃ俺はチノレと散歩にでも繰り出すとするか……

 指を組んでこちらをジーッと見ているザガンなんか居ないのだ。



「フレムよ!」


「肩を掴まないでください! 分かりましたよ! 寂しいんだな? 暇なんだな?」



 ザガンから一瞬目を離した隙に距離を詰められていた。

 急に目の前に骨が現れたのだ。怖過ぎる。



「えー、じゃなんか面白いお話しを聞かせて貰おうかな? そうだ。良い機会だからおまえらが使ってる瘴気について聞こうかな?」



 大分スルーしてたが瘴気とかきっと便利な力なのだろう。

 俺も使えるようにならないだろうか?

 そんな訳で、構ってやった事で大喜びのザガンの部屋にチノレと共に伺うことになった。

 入口に引っ掛かったチノレの顔面を優しく引っ張り、ようやく通れたところでザガン先生の前に座る俺とチノレ。



「ではまず……、汝から瘴気は出ない!」


「終了しました。お散歩の時間です」



 ザガンが一瞬で答えをくれたので、俺は薄暗い部屋から早々に退出することにした。

 だが慌てたザガンが部屋のドアを急いで塞ぎに来たではないか。

 それは監禁だぜ?



「ま、まてまて! 汝も我等の事をもっと知っておいた方が良いだろう! ほら! 我らの能力とか一部でも!」



 余程暇なのか、結構必死で止めに来るザガン。

 本格的にお勉強をさせられる羽目になってしまった。



「さて、我等の身体を構成している瘴気。これは魔力そのものなのだ。人間でいうところの血肉に等しい。つまり瘴気を使うという事は自らの……」



 ザガン先生が絶え間なく語ってくれるお話し。

 正直難しくて大体が何を言っているのかさっぱりなのだが……



「ザガンせんせ~。実はよく分かってなかったんですが……魔力ってなんですか?」


「そ、そこからか。よし、良いだろう。語って聞かせてしんぜよう……。覗き込むが良い、錬金術の深淵を……」



 こういうのは適当に質問すると喜ばれるものだが……

 タイミングが悪かったな。予想を越えて喜んでしまったようだ。

 俺は錬金術の深淵なんか覗きたくないし聞いてもいないのだが……


 とにかく、呪詛のような情報の羅列を聞かされパンク寸前な俺のか弱い頭。

 それでも理解出来た範囲でまとめてみよう。

 瘴気と言ってはいるが、ようは魔力そのものだということだ。

 まず魔力というのがよく分からないので、いままでは不思議な力なんだなと聞き流していたが……

 どうやら様々な使い道がある燃料という考え方で良いらしい。

 魔力とは不思議燃料。よし、覚えたぞ。

 これでもう知ったかぶりする必要はないな。


 一部の魔神と呼ばれる存在がその魔力で出来た瘴気を纏っているようだ。

 気にせず垂れ流した瘴気には各々の特徴を持った効果がちょびっと付いている。

 能動的に使っている瘴気は少し違うようだが。

 それとここでようやく彼らの特徴も判明したので整理してみよう。


 まずアガレスの瘴気を浴びると眠くなるようだ。

 物質の振動を停止させたり金属や石を操る魔法を使える。

 屋敷の拡張などお手の物だ。

 お世話になってます。


 シトリーの瘴気は浴びると酔っ払い状態になるらしい。

 後は思考誘導、神経操作等の魔法が使える。

 植物なども操れるのだとか。

 とても可憐だな。


 ザガンが垂れ流す瘴気はお腹を空かせるそうだ。

 また物質を成長させる魔法が使えるのだそう。

 風化がどうとかも言っていたな。

 まさに料理の為の能力である。


 チノレは猫である。魔力もないし瘴気にも掛かる。

 ただ恐ろしく鈍くて効果は薄いそう。

 自身は当然瘴気なんか出せない。

 後とても可愛い。


 瘴気、魔力の話し含め、ザガン達は他にも色々出来るようだが……

 俺の膝の上に乗ろうとして来たチノレに全身を潰され、あまりの気持ち良さに意識を失いそうので次回に持ち越そう。

 だから喋ってないで助けてくれザガン。

 気付いてくれ。チノレの魅力が俺を殺しに来ている。

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