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五十九話  対策会議開催決定

 一週間程穏やかな生活が続き、ついにセリオスとエトワールが近況報告にやって来てしまった。

 内容はゼラムル教団対策会議。

 これが首尾よく世界規模で行われることになったのだ。

 ゼラムル教団を殲滅するということで簡単にまとまった模様。

 リヴィアータ帝国も協力的な姿勢を見せているようだ。


 ただ、セリオスはリヴィアータ帝国に対する警戒を解いてはいない。

 その理由の一つが、二年程前にフィルセリアに存在した魔王の件。

 ハシルカに追い出されたその魔王は、リヴィアータの領土に移り住んだらしいのだが、未だに討伐されてないようなのだ。


 二年前のハシルカはまとめてセリオス一人にやられる程度だったそうなので、そんな魔王にリヴィアータ帝国が手こずるのもおかしい。

 リヴィアータ帝国とその魔王、そしてゼラムル教団が手を組んでいる可能性も視野に入れる必要があるとセリオスは言っている。


 どうやら最近になり、各国に点在するゼラムル教団の動向もあからさまになってきたようだ。

 白昼堂々人を襲う者まで現れた。十中八九、破壊竜討伐による影響だろう。


 ロザリーの話を聞く限り、教団が縮小傾向にあったのも抜けた信者が居たというより、餌が取りづらくなった事で信者が食われていたと推測される。

 名のある冒険者や将軍、強力な軍備を持つ国と協力し、発展途上国等の小国に点在する支部も壊滅させられた。


 残るは広大な領土を持つ大国、リヴィアータ帝国にある支部と本部を叩くだけだと言って良い。

 その強国や魔神に対する対抗策のある国々が一致団結し、結集する事になったのだ。


 まずは現状、一番信用ならないリヴィアータ帝国。

 世界最高の軍事国家で、世界最大の領土を持ち強力な兵器を大量に保有している国。

 かといって他国に攻め入ろうとした歴史は皆無であるようだ。

 表面上はあくまで自衛のための軍備ということらしい。


 次に我等がアーセルム王国。

 それなりに広い領土を持ち、うまく治世をまとめられている国。

 他国との貿易も盛んで世界的にもっとも平和と言われている。


 最近行ったお隣のフィルセリア共和国。

 リヴィアータに次ぐ広大な領土を持つ国だ。

 王政の名残で一応王族の血族は残ってはいるが、この国はレイルハーティア教団が代表になっているそう。


 カイラやルーアの母国。アズデウス公国。

 かつてフィルセリアに接収され、再び独立した国。

 小国ではあるが世界屈指の魔道国家である。

 相手が魔神なら外すことは出来ないだろう。


 極東に存在するジュホン帝国。

 独特の文化や服装が特徴の小国。

 小さな島国ではあるが、高い技術力や対魔神戦の実績が多くある国。


 そしてグレイビア王国。

 南の方にある国で資源の豊富な国であるが、長い間他国が入り込む事を嫌っていた。

 しかし近年王子の意向で他国から人を雇い急速に発展しているようだ。


 この六ヵ国が世界連合として開催地リヴィアータ帝国の首都に集ることになった。

 各国の軍隊も小規模とはいえ配備され、各国で有名な冒険者も呼ばれる事になる。

 とはいえ呼ばれるのは会議がまとまった場合だ。

 先に現地入りするのは代表者と側近、そして各国最強の冒険者一名の三名のみとなる。


 アーセルムからはセリオスと俺、そしてイリス。

 知らなかったのだが、なんでもイリスはアーセルムでもっとも実力のある冒険者チーム『スティルクインテット』のリーダーらしい。


 アソルテ館のメンバーは会議がまとまった後、うまく打診して呼ぶしかないようだ。

 万が一魔神と分かり、それがアーセルムから来たとバレると面倒なので仕方がない。


 リヴィアータ帝国が黒幕なら、少人数で敵本拠地に突入するということになる。

 しかもすでに船の手配も完了しており、三日後に出港だという。

 心の準備が全然出来てねぇんだが?



「ザガン達もそうだが、対魔神戦においてラグナートとマトイが居ないってのは痛いな……。合流するまで何事もなければ良いけど……」



 不安いっぱいで嘆く俺。三人なんて少な過ぎるのだ。

 まして俺を筆頭に三人共か弱い人間。恐怖で震えが止まらない。

 そんな俺の言葉を、否定的に指摘してくるラグナート。



「ん? そりゃ間違いだ。むしろ俺とマトイは相性の悪い魔神が多い。特にマトイは足を引っ張りかねないぞ」


「え? 魔力を無効化出来るなら魔神なんて触っただけで倒せるんじゃないの?」



 俺の言葉を聞いたラグナートは、近くに居たシトリーの腰に手を回し抱き寄せた。

 ついに堂々とイチャつき始めやがったぞこいつら。



「そんな事言ったらこれでシトリーが倒せちまう事になるぞ?」


「そうですわね、それではこうして触れる事も出来ませんし」



 とぼけたようなラグナートに、シトリーはもたれ掛かりながら答える。

 とても絵になっているのが腹立たしい。

 イリスとロザリーがそれを見てキャーキャー言ってるが俺は突っ込まないぞ。

 こいつら俺達の反応を見て楽しんでいるだけかもしれないし。


 詳しく聞くと、ラグナートは自身の内部に干渉する魔力しか無効化出来ないらしい。

 例えば触れただけで対象を害する魔性を発揮する魔神や、魔力を垂れ流す相手なら倒せるだろう。

 精霊魔術のような魔力で繋がれた術式なども触れた瞬間に解体される。


 しかしザガン達のように、自身の存在維持に魔力を割ける者等は仕留める手段に欠けるという。

 ラグナートがやられるという話ではなく、逃げられる可能性が高いという事だな。

 もっとも、時間は掛かるが切り刻んで魔力を浪費させる事が出来れば、倒せる魔神も多いらしい。

 なので問題なのはマトイだ。


 マトイは精神力が脆弱過ぎるというのが理由だそうだ。

 千年経って少しは変わったかと思ったらそんな事はなかったらしい。

 巨竜や人間形態ならば、鎧を纏っているようなものなので多少の抵抗力はあるようだが、ピンポイントで狙われた場合簡単にやられる危険性がある。


 封印の地であっさり捕縛されたのはそれが原因なのだろうか?

 そういやロザリーにもやられたな……



「ちなみに俺はグレイビア王国から冒険者代表として呼ばれてっから、おまえら同様先に現地入りするぞ」



 基本的にその国の冒険者というルールだが、ラグナートは色んな国で暴れてるためグレイビア王国の冒険者としてお呼びが掛かったようだ。

 なんたる好都合。相性が悪かろうとラグナートが一緒なのは心強い。



「じゃ~上手く話がまとまっても最悪マトイはお留守番か?」


「そんな! 嫌だよ、私も行く! 皆で美味しいご飯食べるんでしょ? ズルいよ!」



 俺の苦肉の策にマトイは駄々をこねる。

 そんなところが精神の脆弱性の原因のような気がするが……

 ではどうするか……。動きを止められるだけならまだしも、超戦力マトイが操られたりした日にゃ、こちらは即座に全滅しかねないのだが……



「精神力を高める道具とか作れないかな?」


「抵抗力のある物や術自体を無効化する道具は作れるが……。そうだな……、術の種類が違ったり道具の抵抗力を突破される事を考えると、マトイの精神力を高める物が望ましい。しかし、相当に馴染みのある触媒が必要になるぞ」



 俺の提案に対し、ザガンは難しいと言った感じで答えた。

 ハミルの時と同じようにマトイ自身の能力に繋げる必要性があり、それも精神に作用するとなると余程思い入れの強い触媒を使わねばならないそうだ。



「マトイの宝物の宝石はどうだ? 加工するのが嫌なら仕方ないけど、条件はクリアしてそうだが?」


「ふむ、それなら強力な守護の守りが出来るかもしれんな……」



 俺とザガンの相談がまとまりかけたところで、マトイが俺の肩に飛び付き、話に食いついてきた。

 やはり宝物の宝石が関わると気になるのだろう。



「なになに? なんのこと?」


「マトイの宝物をマトイ専用の可愛いアクセサリーに加工するのは嫌かどうかって話だ」


「作って!」



 そわそわとしたようなマトイに俺が軽く概要を告げると、即答で返して来たマトイ。

 というわけで、マトイの守護魔道具作りをすることになった。

 時間はないが、なんとか間に合わせるしかない。



 ーーーーーーーーーー



 セリオス達は準備が整っているようで、出港までここに泊まる事になった。

 エトワールは首尾よく話が通ればザガン達と一緒に後から来る。


 どちらにしても時間はなく、俺が自室にて一心不乱にマトイのアクセサリー作りをしていると、ハシルカ一同がこの忙しい時にやって来た。


 ゼラムル教団対策会議に参加するアズデウス公国。

 代表者はカイラの母親であるシャルディア・アクタル。

 その側近としてルーアが、冒険者代表としてカイラが同席するのだとか。

 シリルもフィルセリアの冒険者代表として参加するそうだ。


 ルーアは出来るだけ戦力を上げておこうと、転魔の杖に以前約束していた魔術式を入れて貰いに来たのだという。



「そちらも忙しいとは思うのだが、なんとか頼めないだろうか……」


「うむ、確かに物凄く忙しいのだが、そういう事なら致し方があるまい」



 控えめにおずおずとお願いをするルーアを、尊大な態度で自室に連れて行くザガン。

 張り切って変な術を入れなければ良いのだが……

 何せ先程まで暇で暇で仕方ないと言っていたのだ。

 俺の作っているマトイのアクセサリーを魔具に仕上げるのもザガンだが、形を作り終えるまで待たせていたのだ。

 ルーアが連れていかれたところで、ハミルが俺に話しかけて来た。



「おにーさん……。ところで例の物は……」


「ああ、出来上がってるぞ」



 こそっと耳打ちしてくるハミルに、俺は以前製作を頼まれていた服を渡した。

 サイズの合わない衣装だが、何をしたいのかは知っている。



「ふっふっふ……。じゃさっそくこっそりザガンさんにお願いしてくるよ」



 悪い笑顔をしているハミルを、俺は一言頑張れと言って見送った。

 せっかく自室から出てきたので俺もちょっと休憩する事にし、男性陣が暇なようなので、先程聞いたフィルセリアの魔王の話を聞いてみる事にしよう。



「なあ、おまえらの追い出した魔王ってどんな奴なんだ? 今リヴィアータに居るらしいから、下手すりゃ戦うことになるだろうし。情報が欲しいな」



 俺が声を掛けた途端、シリルとカイラ、ワーズの動きが止まる。

 答えや言葉を選ぶようにしどろもどろで様子がおかしい。



「ん? うん……まあ……強かった……よ?」


「あ、ああ……、まままぁ……、今回もかるーく片付けて見せるわ……。ははは、余裕だぜ……」



 目が泳ぐシリルと、飲み物を持つ手が震えているカイラ。

 そしてそっぽを向き震えているワーズ。

 おやおや、これはひょっとして……。この子達、魔王倒してないな?

 俺は詳しい話を物知りな白蛇さんに聞く事にした。



「ヴァルヴェール、どうなの?」


「さあ? 第二覚醒前の話ですと、私は辛うじてシリルを認識出来るだけですので……。正直言って全く知りません」



 おしゃべりのヴァルヴェールに期待したが知らないんじゃ仕方ない。

 ガードランスとユガケは加入前らしいので知るわけがない。

 仕方ない。小僧共は口を割らないだろうから、後でハミル達に聞くかな。

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