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百三話  目覚めのベーゼはどこからか

 リヴィアータ帝国領空。工業都市グロータスに続く空の下。

 高速で飛行するマトイと、その背に乗るザガン達に緊張が走っていた。

 フレムとネックレスの魔力リンクが外れた事で、ザガン達から干渉するどころか、フレム達の状況を知る手段すら絶たれてしまったからである。



「ヤバイんじゃねぇのか!? フレムの精神を拘束出来るような術師なんてそうそういねぇだろ! 急げマトイ! このままじゃフレムが!」


「急いでるよう! 後半刻も掛からないから! これでもめっちゃ早いからね!」



 ラグナートは先刻までの落ち着きが嘘のようにマトイを急かした。

 精神のタガを外す落城降魔の危険性を感じてはいたが、まさかセリオスが側に居て本当に暴走するとは思っていなかったのだ。

 マトイも慌ててはいるが、八名もの大人数を乗せているのでバランスが取りにくく、これ以上速度を上げる事が出来ずにいた。



「フレム……」


「困りましたわね……」



 イリスは光が消えていくネックレスを両手で握り込み、祈るように目を閉じる。

 何とか交信を試みようとするシトリーも、フレム側で閉じられてしまってはどうすることも出来ず困り果てていた。

 皆焦燥感を募らせ、何も出来ないこの状況を歯がゆく感じている。



「ん? 待て、イリスの身体が妙に光って……」



 皆押し黙る中、ルーアが異変に気付き口を開く。

 イリスのネックレスの光は消えていくのではなく、イリスの身をうっすらと包み込み始めていたのだ。



「え……」


「イリスちゃ……」



 目を閉じていたイリスはようやく自身の変調に気付いた。

 徐々にイリスを包む光りが輝度を増していき、シトリーが声を掛けようとしたその時、弾けた光が大きく空を照らした。



 ーーーーーーーーーー



 一方、フレムと対峙するセリオス達にもいよいよ打つ手がなくなっていた。

 セリオス、ハバキはフレムが降らせているであろう赤い雪により身動きが取れず、アガレスが折れた事でリリスは少々パニック状態に陥っている。

 動きを止めているフレムが、もう一度動き始めたら全滅は免れない状況。



「正直四肢を切り落としてもやむ無しと思って挑んでいたのだが……。ここまで追い込まれるといっそ清々しいな……」


「私は諦めるつもりはないぞ……。こうなる事を危惧した上でフレムを連れて来たのだ。この責任は私にあるのだからな!」



 苦笑いを浮かべて悔しげなハバキも、いまだ戦意滾るセリオス同様諦めるつもりはなかった。

 活路を見出だそうと思考する二人のすぐ側で、突如床が盛り上がって炸裂し、そこからクルクル回転しながら現れた一人の少女が華麗に着地を決める。

 その少女、ハミルの奇抜な登場に一瞬呆気に取られるセリオス達。



「よいしょ~! 僕が来たからにはおにーさんには指一本……ん? あれ?」


「まともな登場は出来んのか!? だが良いところに来た! 退魔神官! お前の妖術でフレム・アソルテを拘束出来ぬか?」



 フレムの放つ異様な魔力を追って来たであろうハミルは、目元に泣き腫らした後を残したまま事態が飲み込めずに固まっていたが……

 ハバキの進言を受けて注意深く辺りを見回し、状況を察した事で改めてフレムを見つめ直す。



「なるほど……、おにーさんは寝惚けているみたいだね……。任せて! 僕のほーよーりょくに掛かれば簡単に……」


「待ってください! 良いことを思い付きました。私に妙案がありますよ!」



 自信たっぷりのハミルを制止するように口を挟んでくるリリス。

 パニックは落ち着いたのか、うっすらと浮かべる笑みはまるでこの状況を楽しむかのようなものだった。



「妙案だと?」


「はい! 確か物語等では、お姫様の眠りは王子様の口付けで目覚めるのが一般的だと聞き及んでいます!」



 訝しげな表情を作るハバキは嫌な予感を募らせながらも詳細に触れる。

 笑顔のリリスが語る内容は突拍子もないもの。

 にも拘らず、リリスはこれしかないと言わんばかりに得意気だった。



「妙でしかないぞ! そんな事で解けるなら苦労はせん!」


「なるほど……。では私の出番と言うことだな……」



 案の定ふざけた提案に頭を悩ませ叱責するハバキだが……

 こともあろうにセリオスがその案に乗ろうとしていた。



「落ち着け! 心なしかフレム・アソルテの殺気が強くなっているぞ!」


「待って! この場合その役目は僕がするべきじゃないかな!? おにーさん男の子だよ!」



 ハバキは心持ち震えているようにも見えるフレムの殺気が、一層濃くなっている事を指摘する。

 そしてここぞとばかりにハミルも名乗りを上げた。

 提案した当のリリスは悪い笑顔を張り付けて御満悦である。



「いや、この場で王子と言ったら私しか居ない! 任せておけ!」



 大真面目に言い放ち、赤い雪をものともせず立ち上がるセリオス。

 その姿に圧倒されたのか、フレムは引き気味に一歩後ずさる。



「よく分からんが本当に目覚めそうだな……」


「いや、させないよ……。全員この場で倒してでも……僕が行く!」



 深層心理に響き、効果があるのではないかと疑い始めるハバキ。

 だがハミルは戦意を纏ってセリオスを妨害しようとしていた。

 ハミルの腰の杖が光り、周囲の床が崩れ小石が舞う。

 更にセリオスの剣から放たれた闘気が床に亀裂を入れ始める。



「おい女! お前が余計な事を言うから収拾が付かなくなったぞ! 血みどろの状況でこんなふざけた展開があるか!」


「えぇ~、割りと本気なんですがねぇ~……。それに、フレムさん完全に正気を失っている訳ではなさそうですし……」



 ハバキは惨劇の起きている現場で悪ふざけを始めた事に気分を害されるが、リリスの言葉を受けて改めて辺りを注視した。

 自分達の周囲に降り積もっていた赤い雪は、ハミルとセリオスの力の激突で吹き飛ばされたが……

 そもそも倒れている兵士や、壁にもたれ掛かっている女性には赤い雪が掛かっていない。


 通路の入り口付近ではいつの間にか来ていたシャルディア、ボルト、ミコトが場の空気に馴染めず立ち尽くし、ゴルギアートとガルシアは膝を付いている。

 そしてフォルテ、タマモの二名は他の者達より数歩入り込んだ所で潰されたカエルのようにうつ伏せに倒れていた。



「約二名はただのバカとして……。この殺気と赤い雪の中、平然と立っていられる奴等はどういう事だ?」


「ふむぅ……、戦闘能力のない者は除外しているのでしょうかね? ともかく見境なく攻撃や殺意を加えている訳ではなさそうです。攻撃ではない衝撃を与えるのが得策と考えました」



 冷静に状況分析を始めるハバキとリリス。

 無理に入って来てフレムの殺気により気絶したのであろう二名と、明らかにおかしなハミルとリリスはともかくとして……

 女子供、老人がこの狂気に晒されて無事な事に疑念が生じたハバキ。

 どんなに鈍感でも、赤い雪の効果すら出ないのは不可思議でならなかったのだ。

 リリスの考察は案外的を得ているかもしれず、その作戦は馬鹿げているが最適解かもしれないと考えるに至った。


 ハミルとセリオスが睨み合いの火花を散らす中、床に落ちたネックレスから目映い光が溢れ光りの柱が立つ。

 その光柱から白い翼の生えた人影が勢いよく飛び出し、床板を滑りながら着地する。

 その人影は翼という違和感はあったが、紛れもなく遠征組として出ていたイリスであった。



「メインシュガー! 何故ここに!」


「わ……分かりません……が、これ以上の戦闘はやめて下さい! フレムが死んでしまいます!」



 予期せぬ来訪者に思わず声を上げるセリオス。

 イリス自身も状況を理解してはいなかったが、血だらけのフレムを見て咄嗟に戦闘の中止を求めた。

 その瞬間、近くに現れたイリスに反応を示したフレムが動きを見せる。



「しまった! 逃げろメインシュガー!」


「大丈夫です……」



 撤退を促すセリオスに、心配は無用とばかりに笑顔を返すイリス。

 虚ろな瞳のフレムは剣を振りかざし、瞬く間にイリスの眼前に迫る。

 対するイリスは、フレムを出迎えるようにただただ両手を広げた。


 無防備なイリスに向けて放たれた剣閃は、イリスの肩に触れる直前で制止する。

 振り下ろした右手を、フレム自身が添えた左手で無理矢理止めたのだ。



「フレムは敵意のない人を傷付けたりなんてしません。絶対に……。誰よりも……優しい人だから……」



 そう言ったイリスはフレムの両手をそっと崩し、懐に入ってその身を抱き締めた。

 大きな白い翼が追従するようにフレムを包み込む。

 程なくして渇いた音を立て、フレムの手元からクリムゾンシアーがこぼれ落ちる。

 それと同時にフレムの目に光が宿り、降り積もった赤い雪は溶けるように血溜まりごと消え去っていった。



 ーーーーーーーーーー



 絶えず襲い掛かる恐ろしさと孤独感。

 俺は思考を拒絶し、ただ暗闇から逃れるため無我夢中で暴れていたと思う。

 それは不意に訪れた暖かな感覚と共に終わり、俺は悪夢から解放された。



「フレム……、こんなにボロボロになって……。もう大丈夫だから……。みんな無事だよ? みんな……、側に居るから……」


「イ……リス……。俺は……、今何と……、何と戦ってたん……だ?」



 幼子をあやすようなイリスの優しい口調が、まるで寝起きのように朦朧とした俺の頭に響いてくる。

 泣きそうな程の恐怖、自分でも驚く程に震えた声で喋っていた。

 長い間戦っていた気がする……。そんな夢のような感覚が現実味を帯びてくる。

 俺は激痛に耐えながら震える手でイリスの肩を抱き、恐る恐る辺りを見回した。

 へし折れたアガレスを手にしているリリスさん。憔悴しきっているようなセリオスとハバキ。



「みんなボロボロじゃないか……。まさか……、俺……が?」


「安心しろ……。誰一人傷付けてはおらん。ただの寝相に私が遅れを取るはずがあるまい?」



 俺は血痕の付いた足下の剣と、疲弊したセリオス達を見て青ざめる。

 その不安を拭ってくれたのは、安堵したようなセリオスの優しい声。

 良く見渡せばアガレスが折れてる事を除けば全員致命傷ではないようだ。

 フォルテと知らないお姉さんが並んで倒れているのが気になるが、多分関係ないだろう。

 夢の中で切った化物はこれでもかというくらい滅多切りにしたはずだし……

 ハミルだけが下を向いてスカートを握り締めているのが気掛かりだが、どうやら最悪の事態は回避出来たようだ。



「イリス……、この翼は?」


「これ? 実は私にも良く分かってないんだけど……」



 どこかで見たような大きな白い翼。俺の心を解すような暖かい翼が気になりイリスに問い掛けるも、イリス自身も分からないようだ。

 俺はイリスの肩越しから見える翼の付け根、黒い塊を指先でつついてみた。



「いきなり辺りが真っ暗になったと思ったらこう……、翼で顔を隠して明らかにサイズの合ってない服を着た恥女のような人に会ったような……」


「恥女だと!? それは奇妙だな。その話、もう少し詳しく聞かせ……」



 語られるイリスの不思議体験はとても興味をそそられる。

 なので俺は詳しく話を聞こうとしたのだが……

 つついていた塊が、突然翼ごと床にコロンと落ちた事で言葉に詰まった。



「うひゃ!?」



 落ちた塊を凝視し、思わず俺は変な声を上げる。

 塊の裏側にはダンゴムシのような他足がうごめいていたのだ。

 俺の声で振り返ったイリスと俺は、二人でそれを見ながら無言で固まった。



「……いやぁぁぁぁぁぁ!?」



 イリスは俺を放り投げ、全力ダッシュで逃げた後うずくまって震え出す。

 うごめく翼の生えたダンゴムシはすぐに光と共に消滅したが、今度は床に倒れた俺が呻き声を上げてうごめく番になっていた。



「いやあぁぁ……」



 痛い、とても痛い。俺に止めを刺すつもりなのかイリスめ……

 何故か血溜まりも匂いも綺麗さっぱり消えていたのは不幸中の幸いだったが……

 痛みと共に何故か急に不安も舞い戻って来た。

 まるで地獄にいるようである。

 そうして悶えていた俺の頭が不意に持ち上がり、柔らかな感触が頬に伝わる。

 座り込んだハミルが俺の頭を膝に乗せてくれたようだ。

 こんにちは天国。



「ありがとうハミル……。おまえも無事で良かったよ……」


「……のくらい……」



 無事を喜んでいた俺の顔に水滴が落ちてくる。

 悲しそうに震えるハミルが大粒の涙を流していたのだ。



「分かってたもん……。そのくらい……、僕だって分かってたもん……。おにーさんが……僕達を傷付けるはずないって……」


「ああ……、ありがとなハミル……。心配掛けてすまない……」



 覗き込んで泣いているハミルの頬に手を添える俺。

 我ながら本当に情けない話だ。こんなにも優しい仲間達に恵まれて、その仲間達に心配させてばかりなんだからな……



「ぜりおずざまぁ……」



 急に倒れていた一人のメイドが、その身体を引きずりながらセリオスに向かって声を発した。

 ものすごいホラーである。何せ原型を留めない程食い千切られているのだ。

 生きているなどと思うはずがない。


 キュポンと軽い音を発し、メイドの頭から拳大の小さな少女が飛び出してくる。

 エトワールとミルスちゃんと共に退避したはずのロザリーだ。



「ロザリー!? 何故おまえがここに!?」


「話せば長くなるのですが……」



 セリオスの問いに顔を引き吊らせながら淡々と語り出すロザリー。

 話を端的にまとめると、アドラメレクの城破壊をアガレスが修復した際、城内で大規模な構造改変が起こったようだ。

 その時ロザリーはエトワール達とはぐれ、一人でこの現場に出くわした模様。


 敵側の九級、八級天使兵器を乗っ取りながら城の使用人達を逃がしつつ、兵士と共に戦っていた所に俺が到着し、何故か死にかけの天使兵器から出られなくなったとの事だ。

 つまりそれって……



「倒れているのは主に天使兵器という事か……。ガルドからの逆輸入といったところだろうな。危険な状態には違いないが、殆どの兵士に息がある……。先走りが過ぎたなフレムよ……」


「ごめんなさい……。本当にごめんなさい……。全員悲痛な顔で絶命してるから人間にしか見えなくて……」



 セリオスは子供を抱えてる女性や兵士達の容態を確認した後、ジト目で俺を睨んでくる。

 心から申し訳ないと思いつつも俺はセリオスからそっと視線を外した。

 以前戦った天使兵器は痛みも感じないような無表情な人形ってイメージだったから、まさか同じものだとは思う訳がない。



「この苦悶の表情……。さぞかし苦しかったろう。よく生きて堪え忍んでくれた。礼を言うぞロザリー」


「そ、そんなセリオス様……。少しでも御恩を返せればと思いまして……」



 数体の天使兵器を見てセリオスは労いの言葉と感謝を伝える。

 ロザリーはなんか照れ臭そうにモジモジしながら謙虚な姿勢を見せた。

 生きていたと思うと顔芸に見えない事もないが、乗り移った天使から五感を得ていたのなら、その苦しさは予想を越える程のものだっただろう。


 それからゴルギアートやガルシアさんがロザリーに丁寧な礼を言った後、俺の所にも感謝を伝えに来た。

 だが俺の意識は再び混濁してきており、言葉が正しく認識出来ていない。

 話を聞いている最中、朦朧としていた俺はついに意識を失ってしまう。


 次に目覚めた時には全てが終わってベッドの上……

 ということはなく、依然俺はハミルの膝枕に甘えていた。

 身体の調子から、大した時間は経過していないと分かる。


 気を失っていた短い間に兵士達と、その身内とされる女性と子供は運ばれて行ったようだ。

 救護者の付き添いや、はぐれたエトワールとミルスちゃんを探す為にも人手を割いたのだろう。


 この場に残っているのは横になっている俺を抱え、泣きながら神聖魔術で治療してくれているハミル。

 へたり込んで青ざめなから震えているイリス。

 そのイリスの側で俺を睨みながらあぐらをかいてふてくされているフォルテ。

 折れたまま俺の腹で小刻みに振動しているアガレスと……

 そして何故か神妙な面持ちで佇むセリオスだった。



「珍しいな。エトワールを探しに行かなくて良いのか?」


「起きたか。エトワールなら問題あるまい。ミルス殿が孤立していないかの方が気掛かりだ。それと……、どうしてもおまえに言わなければならない事があったのでな……」



 声を掛けると、どうやら俺が目覚めるのを待っていたらしいセリオス。

 エトワール中毒であるセリオスが、エトワールを探しに行くよりも優先すべき事項とはなんだろう?

 お説教か? 今回やらかし過ぎているから致し方ない面もあるが、お手柔らかに願いたいものである……



「すまなかった……。おまえを……、おまえ達を巻き込んだ私に全ての責がある。軽率に協力など願わなければそのような怪我も、精神的苦痛も与える事はなかったろうに……」



 驚いた……。まさかのセリオスからの謝罪だ。

 協力を要請された覚えがないのが引っ掛かるところではあるが……

 今更何を言い出すんだろうか。



「何言ってんだ? ラグナートやイリスは知らないけどザガン達は暇潰しだろうし、俺は嫌なら何があっても逃げるぞ? むしろ迷惑掛けてばかりで謝るのは俺の方だろう……」



 俺が返した言葉に、口を開けてポカンとしているセリオス。

 それとなく詫びも入れたが難しいな。伝わってないのだろうか?



「友達だろ? 俺がおまえの役に立つってんなら手伝うよ。セリオスが知らない内に危ない目にあってるのなんて嫌だしな」


「フレム……。おまえという奴は……」



 再度言葉を選び伝えたが、やはりセリオスに上手く伝わってない。

 俺は何か発言を間違えたのか……

 艶っぽいセリオスの瞳が俺を真っ直ぐに捉え、手をワキワキさせながら徐々に近付いてくる。

 違う。誰かこいつを仕留めてくれ。早急にだ。


 身動きも取れず怯えていたところで、俺のお腹の上でアガレスの振動が止まった。

 どうやらお目覚めらしい。



「ところで……、ずっと気になる事があったのだが……」


「アガレェス! なんだい? なんでも言ってくれ!」



 突然過ぎではあるが、寝起きのアガレスが最高のパスをくれた。

 俺は即座にそのパスを受け取り話を聞くことにする。



「城にくっついて居た物体と同じような物が二つ、この城の周囲に飛んでいるぞ? 味方か? 一つは内部にガードランスのようなエネルギー反応が数十体感じられるが……。もう一つは魔神の大群だな」



 淡々ととんでもない事を語る魔剣。いつもの寝言だと思いたい情報。

 アガレスさんそういうこともっと早く言おうか。

 間違いなく敵だよねそれ。まだ居るのかよ……

 げんなりする情報を得た直後、図ったように崩れた壁から見える空が揺らぎ、隠れて居たであろう船が姿を現した。



「痺れを切らしたか……。まずいぞ……。これ以上の新手は……」



 セリオスが戦闘準備に入る姿勢を見せた瞬間、膨大な光の濁流が船を飲み込んだ。

 その勢いで城の一部も吹き飛んでしまったが、飲み込まれた船は破片も残らず消え去っていた。



「今の……何?」


「まだ少し距離はあるが……。今の魔力はマトイだな」



 立て続けに起きた事態に驚き、目を丸くしている俺達。

 辛うじて出た俺の呟きに対して静かに告げるアガレス。

 それはこの戦いに終止符を打つ福音であった。

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