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第8話 トリプルホーンライノ討伐戦前編
辺境騎士団の後ろを、護衛騎士三機とこちらの機体五機が追随する。
辺境都市から暫く進むと、前方から大量の砂煙を発見した。
恐らくあれがトリプルホーンライノの群れであろう。
搭載して居る遠距離望遠レンズでズームすると、その姿形がはっきりと映る。
まるで動く城塞の様に、堅牢で何物も弾き返しそうな程硬そうな皮膚をしており、頭には三本のツノが生えて居る。
見た目はサイに似ているが、脚は六本生えており力強い歩みで此方に近付いて来る。
「では、当初の予定通りに行動するぞ。ここから西に2キロほど行ったところに窪地がある。そこにトリプルホーンライノを誘導せよ。辺境騎士団配置に着くぞ!」
そう言って辺境騎士団と護衛騎士達は西の方へと向かって行った。
残された俺たちも行動に移す。
「では、獲物を追い立てるとするか。これより遠距離武器の使用を許可する。付かず離れずの位置を保ち奴らを窪地に追い立てるぞ。窪地に近付けば遠距離武器の使用を禁止する。辺境騎士団らに使って居るところを見せるなよ」
そう部下に命じてホバー移動しながらトリプルホーンライノに近付いて行く。
地上を走るより、風魔法を応用して空中にホバー移動する方が移動速度は速い。
難点は砂煙が地上を走るよりも舞ってしまうことか。
上手く空中で姿勢を維持して移動する。
部下もレンに習ってホバー移動する。
魔道騎士にもホバー機能が付いては居るが、基本的には回避や突撃の際にしか使わない。
それも瞬間的な移動のみで、連続して使用しない。
いや、出来ないと言った方が良いか。
そこまで操縦技術が高くない騎士が多いのだ。
騎士は特権階級であり、そこから下級貴族よりも立場は上である。
なのでそれに胡座をかき碌に鍛錬をしない騎士が多いのが現状だ。
それに騎士は遠距離攻撃を嫌う。
その理由は魔法使いとは仲が悪いからだ。
昔は騎士よりも魔法使いの方が立場は上だったので、その時の名残である。
遠距離は魔法使い、近接戦闘は騎士といつのまにか区分されて居たのである。
魔道騎士も杖を使えば遠距離攻撃は出来る。
一応装備して居るが、基本的に一回か、二回牽制の為に使用する程度しか使わない。
それに少なからず魔力を消費するので、あまり使う事が出来ない。と言った方が正しいだろうか。
魔道騎士を動かすのには魔力が必要であるからだ。
そう考えると、魔法使いの方が豊富に魔力があるので魔道騎士乗りに相応しいのでは?と思うかも知れないが、魔力以外にも魔道騎士を動かすのには必要な要素がある。
確かに魔法使いも動かす事は出来るだろうが、ただそれだけだ。
魔道騎士を動かすには魔力と魔力操作になりよりセンスが物を言う。
まるで自分の体の様に自由自在に動かすには、魔道騎士との親和性が高くなければならない。
何故なのかは未だに解明されて居ない。
魔法使いの様に豊富な魔力が無くても、最適に動かし魔力消費を最小限に動かす事が出来るのが、騎士である。
閑話休題
トリプルホーンライノの手前に遠距離攻撃をする。
取り出した武器はウィンチェスターM1873カービンに似た形状の杖である。
火器類などもあるが、見られた時のために魔法武器にしたのである。
物前に攻撃されたトリプルホーンライノは怒り、こちらに向かって突撃して来た。
レンの機体がトリプルホーンライノを誘導して、他の四機は群れの中から逸れてどっかに行こうとする個体を群れに戻す作業を担当する。
「思っていたよりもトリプルホーンライノの速度は速いな」
結構スピードを出しており、現在は大体時速90kmのスピードでホバー移動しているのに、それに追い付きそうな速度で走ってくるのである。
だが、そろそろ目的地の窪地に到着する。
時折、突出してくる個体には牽制射撃をして速度を調節しながら進む。
トリプルホーンライノとの追いかけっこから10分程で目的地の窪地が見えて来た。
サーモグラフィー装置を起動させて熱感知すると、ちゃんと辺境騎士団が所定の位置に待機していた。
そして目的地に見事にトリプルホーンライノの誘導を成功させた。
あとはタイミングを見計らって離脱するだけだ。
「ん?この魔力の集束率は!もしや!?奴ら正気か!俺たちごと!撃つつもりか!総員緊急回避せよ!アンチマジックフィールドの展開を許可する!」
レンが部下にそう命じるのと同時に、光の雨が降り注いだ。
辺境騎士団はレン達ごとトリプルホーンライノに向かって魔法攻撃を行ったのである。