02
第2話 これって転生?
目覚めると透明なカプセルの中に居た。
目の前には二人の老人が居て満足そうにこちらを見ている。
カプセルの何かよくわからない液体が、排出されカプセルの蓋が開き外気に晒される。
「おお!遂に……遂に成功した!!いったい何十年!何百年経っただろうか!」
「ええ!ええ!我々の長年の夢が叶いましたね!私達よりも先に亡くなったあの人達はさぞあの世で悔しがって居る事でしょう!!」
二人の爺さんと婆さんの二人は、こちらが低くくらいのハイテンションで喜び合って居る。
30分後。
漸く落ち着いたか……いや、これは落ち着いたと言うよりも、喜び過ぎて疲れて静かになっただけだな。
目の前の老人二人は顔を紅潮させて、肩で息をして居る。
そして未だに放置されて裸のままだ。
身体は10歳児並みの大きさである。
普通転生したら0歳児からでは?それとも今までの記憶が無いだけか?
なら何でカプセルの中に居たんだ?病気か何かでか?
色々可能性を出して考えて見るが、何と無く全部違うような気がしてならない。
答えを知って居るだろう、目の前の二人に聞いた方が早いだろう。
「あの、すいません」
意を決して話しかけて見ると、二人は驚愕の表情で此方を見る。
「おお!発声器官に問題はない様だな!それにしても目からは確かな知性を感じさせるぞ!」
「ええ!……でも?何か違和感があるような?」
「そうか?初めての成功だからだろう?多少思っていたのと違っても、これは大成功に違いないぞ!まさに歴史に残る瞬間ではないか!」
「そうですよね!」
このままでは拉致があかない。
「すいませんが!此処は何処で!僕は何故あのカプセルの中に居たのですか!」と語気を強めて質問する。
「やはり何かおかしくはありませんか?」
「うむ。確かな。とても生まれたばかりとは思えん」
「お二人は何者ですか?俺は朝陽賢志と言います」と思い切って前線の名前を告げて見る。
「アサヒ ケンジ?何だ?何を言ってるのだ?」
二人が困惑して居るので、訳を全て話した。
………
……
…
「なるほどな。つまりこの成功は神の力の介入ということか」
「ええ、可能性はありますね。誕生の瞬間確かに妙にな力を感じましたもの。でも悪い感じはしなかったので、そのまま進めましたからね」
「そうじゃな。ケンジと言ったか?」
「はい」
「お主が疑問に思って居ることに付いて答えよう。その前に自己紹介がまだだったな。儂は世間では大賢者と呼ばれとるクルーガー・エラーイオと言う」
「私はエメラルダ・カルメ・スーザリンよ。世間では大聖女と呼ばれて居たわ」
「ん?何故過去形なのじゃ?」
「はぁ、相変わらず世俗には疎いわね。私達が此処に探求者の塔を建設してから、どのくらい年月が経ったと思っているの?」
「200年程度かのぅ?」
「2000年です!それに200年だとしてもとっくに過去の人物になるわ!」
「ほれ、でもエルフの者達なら儂らの事を覚えとるんじゃないかの?」
「エルフの平均寿命は400年です!もうとっくに世代交代してますから、過去の資料や伝聞などでしか私達の記録は残って居ませんよ!」
「もうそのぐらい経つのか」
「ええ、随分長生きしました。私達に残された時間もあと数年程度でしょう」
急にしんみりしだした。
えっ!2000年近くも生きてるの!十分に化け物じゃん!
「あの〜」
「ん?ああ、すまんかった。すっかり忘れておったよ」
「あら?御免なさいね」
その後事情を説明してくれた。
専門用語などで、時折わからなかったりしたので説明を聞きながら(それでもよくわからなかった)頭の中で纏めると。
つまりこの二人ーー正確には20人ーーは世界の真理の解明を2000年前からして居たようだ。
当時の最高の頭脳を持つ各分野の人達を、目の前のクルーガーが集めてエラーイオ一門を設立して、辺境にある誰にも邪魔されない場所に探求者の塔を建設して日々研究に励んだそうだ。
その真理の探究の一環の中に人造生命体の事もあり、それがつまり俺の正体であるようだ。
つまり人工的に作り出された身体に、朝陽賢志の魂が入り漸く完成したと言う事だ。
ホムンクルスと言ったところか。
当初20人居た一門のメンバーも、今は二人を残して亡くなった様だ。
「そうだったんですか。あのこれから俺はどうなるので?」
「どうもせんよ。儂らはこの後も他の真理の解明に勤しむだけじゃ。だが全ての真理の解明は無理そうじゃがのう」
「クルーガー。ならば後進の育成に興味はありませんか?」
「ん?どう言うこと意味じゃ?」
「数奇な縁でこうしてケンジと出会ったのも何かの縁でしょう。残された時間を全てで私達の研究の成果を全て、ケンジに教えて後の事を託しませんか?」
「ほぉ。それは面白そうじゃな。ケンジはそれで良いのかの?」
「そうですね。特にしたい事もありませんし。それに二人は言うなれば俺の親って事になるでしょう?」
「まあ、それは素敵な事ね。考えた事もなかったわ」
「子供か……。何ともこの歳で子供が出来るとは思わなかったのう」
「ええ、私達20人の子供です。これからは家族ですね」
「フォフォフォ。それも良いかもしれんの。考えて見れば今までの人生研究に次ぐ研究で、そんな事考えもしなかったのう」
「二人にお願いがあるのですが?」
「なんじゃ?」
「何かしら?」
「名前を付けてくれませんか?これからはお二人のいえ、エラーイオ一門の子供になるのでしたら新たな名前が欲しいです」
「そうじゃな。考えてみるか」
「ええ、そうですね」
30分後。
「儂は決まったぞ?」
「私もです」
「ならば儂から言おう。お主の名前はディアドコスはどうじゃ?勇ましい名じゃろ?」
「それは少し大仰過ぎじゃないかしら?」
「ならエメラルダはどうなんじゃ?」
「私はシンプルにレンはどうかしら?彼は清らかな心の持ち主だと思うの?」
う〜ん。個人的にはレンの方が良いけど、折角考えてくれたしな。
「ならば二つの名前を貰います。レンを名前でディアドコスは姓として名乗る事にします」
「ふむ。レン・ディアドコスか。良いんじゃなかろうか?」
「私も異論はありせんよ」
「良し!では早速儂の今までの研究成果などをお主に伝授しよう!」
「待ちなさい!その前にレンの服をどうにかしないといつまでも裸のままですよ」
「おっと、忘れとった。そうじゃな。丁度良い素材があるので、それを仕立てて服にするか」
「なら私も何か作ります」
此処で待つ様に言われる。
二人はウキウキしながら立ち去って行った。
40分後
二人は衣類などを手にして戻って来た。
エメラルダから渡されたのは、絹で出来ような黒のシャツと黒のズボンである。
渡されたのに袖を通すとピッタリだ。
採寸もして居ないが、この身体を作ったのは目の前の二人だと思い出して、それならば当たり前か。と納得する。
クルーガーから渡されたのは黒いローブである。
「成長に合わせて自動的に修正するから、一生着れるぞ」と言われた。
「ありがとうございます」
「レン。私達は家族なのでしょう?なら敬語は不要よ」
「わかった」
「よろしい」
そう言えばホムンクルスと言えば短命のイメージがあるな。
「俺の寿命はどのくらいなの?」
「ん?そうじゃのう。色々な物を混ぜ込んでおるので正確な事はわからんが。数千年は大丈夫じゃろうエメラルダ」
「かもしれないわね。再生力の高い生き物をベースにしたから、それぐらいは大丈夫じゃないかしら?」
おお!予想以上に長命らしい。
「まあ、推測じゃから正確な年数は言えんが、短くても数百年は大丈夫じゃ」
「うん。わかった」
とりあえずそう返すので精一杯であった。
これから第二の人生が始まるのか。