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 第17話 魔獣襲来






 〜時は少し遡る〜


 王都に火急の報せが届く一週間前の事である。



 その日アーミラ率いる戦乙女騎士団は、訓練の一環と視察を兼ねて辺境部にある都市部を中心に行軍の訓練を行って居た。


 ついでに魔獣の間引きも兼ねている。



 訓練と視察は順調に進み、行程の半ばまで達成した。



 外部拡声器を使いアーミラは騎士団に指示を出す。


『よし!これまで!二列縦列して駐屯地に帰還する!』


 アーミラの号令で手合わせをして居た戦乙女騎士達は、剣を納めてお互いに一礼してから素早く隊列を組み都市近くの駐屯地に向かう。



 もうすぐ駐屯地に到着する時に、火急の事態を報せる伝令兵がこちらに向かって馬を駆けさして来る。(魔道車はまだ辺境部には配備されて居ない。配備されているのは王都近郊の一部の部隊だけである)


『全機止まれ!』



 アーミラは機体を駐機状態にして、機体から降りる。


「何事か!」


「はっ!現在都市に向かって数えられないくらいの魔獣が押し寄せて来ています!至急救援願う!との事です!」


 そう言い切ると、疲労の限界から伝令兵は馬から転げ落ちる。


 その後は伝令兵と馬を近くの村に運び、看病を頼みその手間賃を渡してから全戦乙女騎士団60機で都市に向かって進軍する。



 訓練により総魔力量の三分の一を消費して居るのであまり無茶は出来ないが、行くしかない。


 そのうち近くの都市や町、駐屯地から援軍が到着するだろう。




 都市に近づくと戦闘音が聞こえてきた。



『かなり激しくぶつかり合っているようですね。確かこの先の都市にも魔道騎士が配備されて居た筈です』


 部下からの報告にアーミラは頷き『うむ。だが、伝令からの報告だと魔獣の数は今までの比では無いだろう。それにしても妙だな。この時期に活発的に行動する魔獣で、しかも大規模な群れをなす魔獣には心当たりが無いが……』



『そうですね。私にも心当たりがありません。ですがこう言ったイレギュラーはちょっとした、思いも寄らない事で過去にも数度起こった事がありますから、今回もその類いのものでは?幸いディアドコス卿のお陰で我が国の魔道騎士の数は多くなりましたので、余剰戦力が居るのですぐにでも大規模な増援は派遣されて来るでしょう。ん?噂をすれば旅団規模の味方が来ているようですね』



 部下の魔道騎士が指差す方向を見ると、魔道騎士では無いが、魔獣に対抗できる魔砲を備えた砲兵を中心にした部隊が救援要請のあった、都市に向かって行軍している様子が伺える。



 その時、雲が太陽の光を遮ったのか辺りが暗くなる。


 ふと、何気なく戦乙女騎士団の一人が空を見上げると、其処には無数の飛行型の魔獣の姿が映った。



『ア、アーミラ様!団長!上をご覧下さい!飛行型の魔獣の姿が!!』


 部下からの切羽詰まった声に急いで空を見上げると、確かに無数の飛行型の魔獣の姿が映った。


『不味いぞ!魔砲は真上には撃てないぞ!総員杖を構えて各自の判断で放て!』


 アーミラの号令の下、戦乙女騎士団は背中にあるライフルに似た杖を構えて、それぞれ得意な属性の魔法の矢を放つ。


 61発もの光弾が一斉に空を飛ぶ飛行型の、鷲に似た魔獣イーグニール向かって行く。


 それまで集団で纏まって飛行して居たイーグニールは散開して回避行動に移る。



 旅団はこちらの攻撃で、空にイーグニールが居ることを発見したのか急いで都市に向かう。


 この平原では飛行型の魔獣の脅威は跳ね上がる。


 いくつかの小集団に分かれて、イーグニールは急降下攻撃を仕掛けてくる。


 その鋭い爪や嘴で旅団を蹂躙して行く。


 駄目元で魔砲を放つが素早い回避行動で、イーグニールは砲撃を避け続ける。


 イーグニールは魔道騎士の半分ほどの大きさの8メートルぐらいの体長だが、その大きさに関わらず俊敏で小回りが利き魔道騎士が放つ光弾も中々当たらない。


 ■



 数十分後


 救援に来た旅団は半壊して居た。


 魔道騎士の必死の援護射撃虚しく、イーグニールの数は僅かにしか減って居ない。




『アーミラ様!このままではこちらの魔力が持ちません!』


 元々訓練で三分の一の魔力を消費していた為に、残存魔力量は皆少なくなっていた。


『踏ん張るのだ!兵士諸君は装備を破棄して都市に逃げ込め!我々が殿を受け持つ!』


 兵士達は命令通りに装備を放棄して一目散に都市に向かって走って行く。


 空からそれを狙うイーグニールを牽制射撃しながら、戦乙女騎士団も引いて行く。


 これでは都市に到着しても襲って来ている魔獣の撃退は困難である。


 それに都市の中に逃げ込めるかわからないが、それ以外のルートは巧妙に魔獣により潰されているので、襲われている都市にしか逃げる方向が無い。




 何とか命からがらイーグニールの群れから逃げ延びたが、待っていたのは都市を覆う程の魔獣の大群であった。


 幸いと言っていいのか、殆どの魔獣は低ランクに分類される魔獣であったが数が数である。



『我々が道を切り開く。諸君らは私の後に続け!行くぞ!』


 気合いを入れてアーミラは魔獣の大群の中へと駆け出す。



 アーミラと戦乙女騎士団は奮戦し道を切り開き、その後を歩兵が進む。


 都市からアーミラ達の姿を確認した司令官は援護射撃を行う。


 ドン!ドン!と砲撃の音が鳴り響き魔砲が撃たれ、近くの魔獣を倒して行く。




 アーミラは見事な制度だ!と内心思ったが、喜ぶ暇もなく魔獣が立ち塞がる。



 その後何とか戦乙女騎士団と兵士達は都市内部に逃げ込む事に成功する。


 しかし当初は旅団規模の部隊も半数にまで減っており、更には生き残りの大半と少なく無い傷を負っている。


 しかも装備は破棄したので怪我人が増えてしまっただけになってしまう。


 戦乙女騎士団60機のうち3機が戦闘不能になり、他にも少なくない機体が何処かしこに支障をきたしている。


 その為に修理が必要だが、此処には簡単な工具しか無く交換用のパーツも充分な数を確保出来ない状態である。



 アーミラは戦乙女騎士団の隊長格以上を連れて、この都市の防衛司令部に向かう。



 其処で今後の防衛計画を話し合うのである。

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