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 第16話 厄介ごと



 レンが最後なのか、レンが席に座ると会議が始まる。


「さて、お集まりの皆様。まだ呼ばれた理由がわからない人も居ると思いますので、簡単に事情を説明したいと思います」


 レンが会議室を見回すとレン以外にも数名、何故呼ばれたのか分からず困惑している者達が居た。


 自分だけが理由を知らない訳では無いと知り、少しばかり心が軽くなった。


 まあ、気休めではある。



「昨夜未明。王都に火急を知らせる早馬が到着しました」


(早馬か……。いずれは無線いや有線のでもいいから、通信手段を確立した方が良いな。今の体制だと情報が届くのが遅すぎるからな)



 レンは顔は真剣な表情を保っているが、内心では全く別の事を考えていた。



「その報せによると、辺境部にある都市に魔獣の襲撃があった様ですが、偶々近くに訓練で訪れていたアーミラ王女殿下率いる戦乙女騎士団の手により、一旦は退ける事に成功した様ですが、前の襲撃の倍以上の魔獣が集団で襲って来ている様で救援要請が届きました」



「ん?ならば送れば良かったのでは?確か辺境にはいくつかの部隊が駐屯していただろう?騎士団では無くても今はディアドコス卿の功績で魔砲があるだろう?あれら魔獣にも効果があるはずだが?」と将軍の一人が疑問を呈する。


 確かに一昔前までは、魔獣=魔道騎士では無くては対処出来なかったが、魔砲の登場により、一般兵士でも対処可能になっていた。


 もちろん対魔獣用の装備として大弩なども、各都市に配置されていたが、魔砲の配備により防衛力は格段に上がった筈である。



 因みに魔砲は敵国に鹵獲される事も考慮された設計になっている。


 ちゃんとした整備士が専門の道具で一カ月に一回は整備しないと使い物にならなくなる。


 更に専門の道具類はレンの工房のみ取り扱っている。


 念には念を入れて、刻み込まれる魔法印には自爆用プログラムも刻み込まれている。


 なので例えこの国が敵に回っても大丈夫な様にしているのだ。


 同じくレンが手掛けた物には漏れ無く小細工が施してある。


 その事をサウス王国の上層部は知らない。


「それが……わかりました」情報官が国王であるバシュタール・ロコ・サウスに視線を向けると、バシュタール国王は無言で頷く。



「既に救援部隊として派遣された旅団は壊滅しました」


「なに!?魔獣はそれ程の数がいるのか!?」


「はい。既にアーミラ王女殿下麾下の戦乙女騎士団にも多大な被害を受けている様です」


「ならば此処は魔道騎士を出すしかないでしょうな。吾輩自らが騎士団を率いてお助けに馳せ参じますぞ!」


 立派なカイゼル髭を携えた騎士団長が宣言する。



「いやいや、此処は我々軍が出向きましょう。先の旅団の仇打ちでもありますが、近くにはまだ他にも部隊が居ますからな。今度はたっぷりと魔砲を持って向かわせますのでな」


 頭が禿げた中年親父の将軍が反論する。


「何を言うか!元々魔獣退治は騎士の相場と決まっている!それにまた送っても返り討ちに遭う可能性が高いであろうが!吾輩達騎士団が、完璧に都市とアーミラ王女殿下を救ってみせるのである!」


 それに対してまた禿げ親父が反論し、と二人で口論になって行く。


「静粛に!陛下の御前ですよ!」

 枯れ木の様に細い宰相がそう言うと、二人はハッ!とした表情になり陳謝する。


「さて、まだ情報があるのですよね?」


「ハッ!その通りですあります。襲って来る魔獣は単一種では無く複数確認されており、中に入ると決して群れることの無い種族も確認されております。そしてこの魔獣の群れは組織だった動きをしている事から、今回の騒動は"人為的"に行われたものである可能性が非常に高いでしょう」


「ん?今人為的にと言ったのか!」


「はい。これは明らかに人為的に引き起こされた騒動だと、我々情報官は確証しています」


 渡された資料を見ると、人為的に行われたと思われる理由と資料が記載されていた。


(そう言えば写真も無いんだよな。手書きのイラストはあるけどやっぱり写真も作らないと行けないな。おっと今はそれよりもアーミラ様を救出に行かないと行けないな。編成はどうする?王都から辺境までは二週間近くもあるぞ?それまで耐えられるかわからないからな。仕方がない空中戦艦を使う。あれを使えば二週間の道のりを2日程度で行けるな。どうやって間に合わせたのかは秘密にしとこう)




 挙手をして発言を求める。


 陛下から発言の許可を得たので話す。


「では、私はアーミラ様救出の先行部隊として早期に旅立ちたいと思います。後詰めなどは皆様方でお決めになって下さい。では失礼します」



 そう言って席を立ち一礼してから部屋を出る。



 その姿を他の面々は唖然と見送る。


 確かにレンはアーミラの指揮下の部隊ではあるが、それでもサウス王国に所属する者である。


 主人であるアーミラの元へと急ぎ向かいたいのは重々承知しているが、それでも作法などもある。


 バタン!と扉が閉まってから漸く、会議室に居た面々は再起動する。


「な、なんなんだ!あの態度は陛下の御前であらせられるのだぞ!?」


 と一人の将軍が言うと他の面々も同意するかの様にレンを非難し始める。



 だが、そんな会議室に笑い声が響き渡る。


 一体誰が?と会議室を見回すと、バシュタール国王自身が楽しそうに笑っていたのである。


 どうするべきか会議室の面々が目で相談し合う。


 宰相も薄っすらと口元に笑みを浮かべている事から、誰が声を掛けるかで目で牽制し合う。


「陛下。何が面白いのでしょうか?小官にはとんと思い当たる節がありませんが?」


 このまま牽制しあって居ても埒があかないと思い、恐る恐るといった感じで一人の将軍が発言する。


「何、小気味良いと思ってな。あんなにも素直に発言出来るのは正直羨ましいと思ってしまうほどだ。……さて、先行部隊はディアドコスの戦闘団で十分だろうな。他の部隊を派遣する前に、周辺国の事を探れ。今回の事件と関与している国があるかも知れん。それと国境の警戒を厳にしろ」


「承知しました、陛下」


 恭しく宰相が頭を下げて部下に指示を出して行く。


「さて、派遣するのは王国騎士団から適当に2部隊程向かわせろ。それと此処に駐屯している連隊も同じく向かわせろ」


 騎士団と軍に配慮して二つから人員を出す。





 ■




 会議室で会議が続いてる時、レンは念話でアンドロイド達に戦闘団の面々を集結させる様に命じる。


(やはりこう言った突発的な事態には、早期に連絡が取れる連絡手段の確立が必須だな)


 今回の騒動が収まってから着手しようとレンは心のメモ帳に記入した。



 既に城門前には魔道車が回されており、乗り込んでオリジール砦に向かう。




 レンがオリジール砦に到着すると、戦闘団の全団員が見事に揃って整列して居た。


 予めアンドロイド達は団員から一定の距離の場所でそれぞれ行動して居たからこそ、こんなにも迅速に対応する事が出来たのである。



「さて、集まってもらったのは他でも無い。アーミラ様が危機に陥っている。ここ王都から二週間ほど掛かる辺境部の一都市に魔獣の群れが襲い掛かっている。それらを撃退しアーミラ様と都市を救出するのが今回の任務である。今回は時間があまり無いので、秘匿兵器を使用して現地に向かう。今回この秘匿兵器については箝口令を命ずる。破れば例え幹部であろうと処罰するつもりだ」


 今までも箝口令はあったが、今までよりも厳しい処罰を与えると付け加えると、皆の顔が引き締まった。



「では、各人準備に入れ!部隊長は会議室に集まれ!」


 キビキビと戦闘団のメンバーは動き始める。

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