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 第13話 第一次南方諸国戦争



 どうやら帝国軍に一杯食わされた様である。


 前回の奇襲作戦は見事に成功したが、手応えが少しおかしいと思ったら、あれらは主力部隊ではなく支配下に置いた部隊を偽装させていた事が判明した。


 そしてもう一つの方が主力であり、背後に回り込まれ後方拠点を破壊された。



 実は上層部に裏切り者がいた事がこの後発覚した。


 裏切り者は支配下に置かれて今は帝国領となった、国の隣国の将軍であった。


 後はそのまま帝国軍に向かえば良かったのに、欲を出して魔道騎士を破壊してから向かおうとした。そしてそのターゲットにしたのが、此方側の主力である姫騎士率いる戦乙女騎士団と人狼傭兵団である。


 レンは勿論そんなふざけた真似を許すはずが無く、ちゃんと警備をしていたので忍び込んだ破壊工作員を捕らえて情報を吐かせた。


 それにより事態が発覚して裏切り者の将軍は捕まり、他に協力者などが居ないか尋問された。



 尋問の結果。他にも複数人の裏切り者が逮捕された。


 やはり帝国領となった国の隣国に多く裏切り者が居た。



 ■


 南方諸国連合軍-作戦本部-


「不味い傾向だな。不和が広がってきている。皆疑心暗鬼に陥っているな。特に帝国領となった6カ国に隣接する者達は疑われている。このままだとまとめに戦う事が出来んぞ?足並みが乱れては帝国軍にただでさえ押されているのに……」


「そうだな。なんとか皆の不安を取り除かなくてはならないな。やはりここは一勝したいところだ」


「だが、そうやって勝ちを焦られる事が敵の狙いかもしれんぞ?」


 各国の将軍や騎士団長が集まり会議をするが、中々良い方策が見つからず会議は難航して居た。



 先の襲撃では占領下軍に大打撃を与える事は出来たが、こちらも後方の拠点を潰された。


 特に兵糧がやられたのが痛い。


 これにより長期戦は行えず短期決戦を行わなければならない。


 帝国は今王国とも事を構えているので、二正面作戦はしたく無いのだろう。だから先にこちらを潰してから王国と対峙したいのであろう。



「一旦引いて兵站などを整え直すか?幸いと言ってはなんだが、帝国は短期決戦を望んでいるのだろう?ならば此方は引きこもって敵の思惑を崩すべきではなかろうか?」


「それこそ敵の思惑通りでは無いだろうか?我らが引けば、6カ国の支配を盤石にすべく動くだろうし、国境沿いに頑強な砦を建設するだろう。それに我らも長いこと此処には留まる事は出来ないぞ?各国から国土防衛に必要最小限にしか軍と魔道騎士を残しとらんのだ。その間に魔獣被害が増大するだろうし、何も敵は帝国だけとは限らん。海の向こうには海賊王国があるしな」


「その通りだな」


 会議は紛糾し二進も三進も行かない状態だ。


 そんなところに慌てた様子で一人の兵士が入って来た。


「し、失礼します!!」


「何だ!今は会議中だぞ!」


「はっ!しかしながら急を要する報せが参りました!」


「何だ?」


「はっ!遂に王国と帝国が矛を交えたようです!それに伴い帝国軍は南方諸国から手を引き、占領下軍に後を任せて必要最低限の軍を占領下の6カ国に残して帝国本土に撤退していきました!」



「何!それは真か!」


「焦らず斥候を出して情報を集める必要があるな」


「そうだな」


 取り敢えず、帝国軍に動きがないか斥候を派遣する事に決定した。


 そしていつでも動ける様に準備する事になった。



 …………

 ………

 ……

 …



 斥候からの報せで、帝国軍が退却していくのを捉えた。


 追撃の部隊を出したが帝国軍は占領下軍を殿にして悠々と撤退して行った。


 占領下軍は人質でも捕らえられているのか、必死に戦い多数の死者を出しながらも見事に、3日もの日数を南方諸国連合軍を足止めした。


 その間に帝国軍は完全に前線から下がり、帝国本土に去って行った。


 それから数日間凡戦を繰り返して、帝国軍の反応を見たが全て占領下軍に任せて帝国軍は出てこなかった。


 その間に入ってくる報せは、帝国と王国の一大決戦の情報ばかりである。


 どうやら今回はただの小競り合いで終わるようでは無く、本格的な全面戦争らしい。


 動員兵力も南方諸国に差し向けた帝国軍の比では無く数十倍の数らしい。


 帝国が一旦は南方諸国の侵攻をやめたのを見て取り、南方諸国連合軍はこの後の動向について会議を開いた。



 交戦論と撤退論が主に議題に挙がった。



 交戦派は占領地となり帝国領となった国々と隣接する国々で、撤退派は遠くに位置する国々である。


 こうして此処に留まっているだけでも、戦費が嵩むので早く帰りたいのだろう。




 ■


「まだ結論が出ないのだな」


 既に10日も此処で足止めである。


「そうですね。ですが、我々は傭兵ですしこうしてただ待機しているだけでも金は貰えますからね。まあ、戦果をあげた方が報酬もたんまりと貰えますが、贅沢は言えないでしょう」


 レンの問いに答えたのは、如何にも山賊と言った風貌の偉丈夫である。


 元々は山賊であったが、それも義賊であり主に他の山賊が無茶をしないように調整役的な存在であった。


 偶々レン達と遭遇戦になったが、その後はレン達と共に行動するようになり、現在はレン達傭兵団の諜報担当のトップである。



「そうだな。だが此処でじっと待機しているのも飽き飽きとして来たな。偵察任務と称してどっかで息抜きに出掛けたいものだ」


「それはいい考えですね」

 元山賊は笑顔で同意する。


「駄目ですよ。それでバレたら信用問題に関わりますから」


 そう言って二人の意見を否定したのは、この人狼傭兵団の帳簿や兵糧などの確保をする参謀の一人である。メガネ紳士である。



 クイっとメガネをあげて二人を睨みつける。


「冗談だよ」


「それなら良いですがね」と不承不承と言った顔をしながらも大人しく引き下がる。



 レンは紅茶を飲みながらダラダラと天幕の中にいる、団員達と談笑していると外からバタバタとした足音が聞こえてくる。


 そして現れたのは新入りの若い団員だ。


「団長。結論が漸く出ましたよ。これより帝国領になった6カ国に攻め入って、これらの国々を攻略するそうです。攻略が難しい場合は再侵攻までの日数を稼ぐ為に、6カ国を荒らして街道を崩して退却するそうっす」


「わかった。皆準備に入れ」


 漸く指示が出たので、皆凝り固まった身体を解しながら持ち場に戻る。




 ■


 人狼傭兵団に与えられた役割は主力部隊の補助である。



 帝国の支配下に収まった6カ国は帝国と元々国土を接していた事から、南方諸国の中でも頭一つ抜き出て優秀な兵士が揃っていた。


 その為此方よりも数は少なくてもそれを質で補いながら的確に此方の綻びを突いてくる。


 それを人狼傭兵団が援護射撃を行い阻止する。


 人狼傭兵団の腕前は一発必中で、敵魔道騎士を的確に倒して行く。




 敵も不利を悟ったのか積極的な攻勢には出ずに、遅滞戦闘を行う。



 ■



 数日後……。




 ある程度押し込んだ所で、これ以上の進撃が出来なくなった。


 それは兵糧の問題である。


 最初のうちに兵糧をやられたので残りが心許無くなって来たのである。


 後方から送ってくる事は出来たが、肝心の帝国軍が引いて行ったのでこれ以上の負担は出来ない。と言う国が出たのである。


 今回は帝国との一大決戦と銘打って無理な徴兵なども行ったのが原因である。



 こればかりは仕方がない。と敵国領内を荒らしてからそれぞれの国へと帰還した。



 多数の傭兵も雇ったのは良いが、収穫と言えば6カ国の町や都市で略奪した物だけである。


 なので払いを渋る国も出て、口論になっていたりと雰囲気は良くない。



 幸いサウス王国は気前良く支払いを済ませてくれた。



 さて、新たな戦場を探してまた旅するか。と思った時に後ろから声を掛けられた。


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