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おはようございます。

 第12話 姫騎士②




 今回の奇襲場所は隘路であり、魔道騎士が奇襲攻撃を仕掛けて兵士達はそれぞれの道で待ち構える。



 南方諸国の国々は、遠距離攻撃に忌避感は無いので此方から一方的に叩く事が出来る。


 帝国軍の魔道騎士は防具が厚く魔法を放たれても耐えられる設計らしいが、その分機動力が損なわれている。


 それに仮にこちらの砲撃が防具を抜けるとなるといい的である。



 暫くすると統制の取れた見事な行進で帝国軍が隘路に差し迫った。



 徐々に帝国軍は隘路を進んで行く。




 合図の狼煙が上がった。


 一斉に帝国軍に向けて砲撃の嵐が咲き乱れる。



 魔道騎士以外にも、魔法使いの魔法攻撃に兵士でも魔道騎士に攻撃出来ないかと、試行錯誤の末につい数ヶ月前に実戦投入された新兵器の魔砲がある。



 魔道騎士は騎士の権力の象徴であることから、多数の反対意見が当初あったそうだが、姫騎士はそんな周りの声など無視して実践投入した。


 それにより劣勢に立たされていた戦線を持ち直したので、サウス王国では正式装備に決まったがまだ多くの国では受け入れられていない。


 特に大国は面子の問題もある。


 まあ、何より魔道騎士は高価で希少であるので、大国の様に魔道騎士の数を揃えることが出来ない事から生まれた兵器である。


 だがまだ改良が必要であり、十分な火力は得られていない。


 魔砲は魔力を圧縮してそれを放つ兵器であるが、まだ魔道騎士の装甲を貫くには至っていないが、魔道騎士の関節部位を狙えば故障を狙えるとあって今回導入した。


 基本的には魔砲は今の所は魔道騎士相手よりも、一般の兵士相手に猛威を奮っている。



 レン率いる魔道騎士の砲撃は、帝国軍の魔法騎士の装甲を貫き破壊せしめているが、他の魔道騎士達は装甲を凹ましたりは出来ているが、決定打では無い。



 ある程度砲撃が終わると『全軍!突撃!!』と突撃命令が下った。


 魔道騎士は杖を背中に回して、剣を抜き突撃して行く。


 やはり最後は近接戦闘になるのである。


「さて諸君。狩の時間だ」


 レンも立ち上がり杖を背中に回して、対装甲剣を引き抜く。


 レン達の腕前では味方を避けて、遠距離攻撃で確実に仕留めていけるが、そうすると臆病者など評価が低くなるので、今後の傭兵活動に支障を来す恐れがあるので、最後は近接戦闘で勝利を収めて来た。



 それにしても流石は歴戦の勇である帝国軍だ。


 すぐに混乱から立ち直り、組織だった抵抗を見せてくる。


「全機。いつも通り敵将を優先して叩くぞ」



 まるで一つの生き物の様に、30機が一糸乱れぬ動きで動き出す。



 ■



「ほう。見事な連携だな。私も負けてられないな!皆突撃するぞ!帝国軍を叩き潰せ!」


 アーミラはそう言って突撃する。



 姫騎士ことアーミラ・ニケ・サウスが魔道騎士と出会ったのは今から5年ほど前の12歳の時であった。



 今まで王宮から遠目にだが、魔道騎士の姿を見る事は時折あったがその日は違った。



 サウス王国では12歳の時に、魔道騎士の操騎士(ナイトマスター)への適性があるかどうかの検査がある。


 これは貴族や王族にとっては義務であり、受かればいい名誉な事でもあった。


 男女問わず12歳以上の少年少女が集められて、一斉に操騎士の適性があるか検査が行われた。


 一般庶民にも年に一回だけ適性検査が行われる。


 これには参加義務があるが、貴族達の様に12歳の時にではなく。


 15歳までに受ける事となっていた。


 そして割合としてはやはり一般庶民よりも、貴族の方が適性がある者が多かった。


 これはまだ理由が判明していない。



 適性検査は簡単である。


 小型のゴーレムを動かす事が出来るかどうかである。



 魔道騎士の基はゴーレムであるから、やはりゴーレムを動かせなければ魔道騎士を乗りこなす事は出来ない。



 そしてその検査で見事にアーミラは小型ゴーレムを動かして見せた。


 それもただ立ち上がられるだけではなく、走ったりジャンプしたりと自由自在にだ。




 アーミラはただの王女から操騎士へと変わった瞬間であった。



 王族から操騎士が生まれるのは実に50年振りであった。


 初代サウス王国国王は歴代最高の操騎士と呼ばれている程の人物である。


 なのでサウス王族は喜び、この日を祝日にして盛大に祝った程である。



 尚武の国と言われるだけあり、歴代の王族も武芸に通じていた。


 だが、近年は操騎士が生まれず困っていたのである。


 操騎士には男女問わず慣れるので、例え王女が魔道騎士に乗っても偏見などは無く、祝福された。



 アーミラはスポンジが水を吸収するかの如く、魔道騎士の扱い方や運用方法や、指揮官の心構えなどを着実に吸収して行った。



 そして魔道騎士の操縦技術も卓越したものになった。


 数々の模擬戦で負け知らずである。


 他の国なら王族や貴族の嫡男なら、手加減をして教えたり煽てたりするだろうが、サウス王国はそんな事は無く、寧ろ人一倍厳しい事で知られる。


 貴族に生まれれば軍役の義務があり、そこで徹底的に鍛え上げて一人前の兵士へとする。


 勿論元来身体が弱い者なら、武ではなく智でサウス王国に貢献する事になる。


 多少武に偏ってはいるが、文武両道の国である。


 何せ一般の兵士が他の国の精鋭と同じ、練度と規律を持っているのである。



 今回帝国が南方諸国にちょっかいを掛けて来なければ、確実に南方諸国に覇を唱えていただろう。



 アーミラは実戦に出ても活躍して負け知らずであった。


 その武勇と美貌からいつしか姫騎士と呼ばれていた。


 そんなアーミラの元には数多くの国から求婚願いが届いたりした。

 南方諸国以外の大国からも来た事があったが、アーミラはそれを一蹴した。

 そして「私よりも、弱い男の元へと嫁ぐつもりはない!私が欲しければ自分自身の力で私を勝ち取って見せよ!」と宣言したのである。

 その宣言には貴族以外でも構わないと付け足された。



 それにより各地から腕自慢の操騎士が集まって来た。

 だが、どの操騎士も彼女と10合も打ち合わないうちに敗れ去った。


 そんなアーミラに憧れた女性達が集まり、いつしかアーミラ麾下の戦乙女騎士団が誕生した。


 戦乙女騎士団もアーミラには及ばずながらも、腕の良い操騎士が集まり精鋭騎士団へと呼び声高い騎士団へと成った。



 最近ではアーミラに決闘を申し込む殿方も居なくなり、アーミラは少し退屈していた。


 戦場に出ても戦う前に敵が降伏したり、逃げ出したりする事が多くなり骨のある男が居なくなったからだ。


 だが、そんなアーミラの耳にある傭兵団の噂が耳に入って来た。


 何でも傭兵団にしては数多くの魔道騎士を所有する者達である。と最初は物珍しさに話題に上がった程度であった。


 だが、それほど日をおかずに次々と噂話が流れて来た。


 帝国と隣接する南方諸国の一つに雇われたその傭兵団は、何と3倍の数の帝国軍を鎧袖一触した。

 しかも精強無比と名高い帝国軍魔道騎士団をだ。


 最初は話に尾ひれがついてそんな荒唐無稽な話になったのだろう。と誰も真剣には取り合わなかった。


 かくいうアーミラもそんな噂話は何度となく聞いた事があったので、無視して訓練に勤しんでいた。


 だが、それから暫く経っても噂は途切れる事なく、どんどんと噂話が流れてきた。


 これはもしや本物か?と臣下達も思い始めて、この噂の傭兵団に付いて調べ始めた。


 苦労する事なく。すぐに噂の傭兵団に付いての話を手に入れることが出来た。

 そして殆どの噂話が真実であると言うことが判明した。中にはこれもか!?と思うような話もあったが、どうやらそうらしい。


 まあ、中には本当に荒唐無稽で噂話に尾ひれが付いたのもあったが、噂話の実に8割以上が真実だと判明した。


「ほう、興味深いな」そう呟きアーミラは以後この傭兵団の情報を出来る限り集めさせた。


 この傭兵団は定住の地を持たず、南方諸国を放浪として転戦して行く。


 どれも劣勢な側に立たされている国側に付き、その劣勢の状況から見事に大勝利を収めて見せている。



 いつしかアーミラはこの傭兵団に夢中に成っており、雇おうとするがこちらは常勝国であるからか、中々色好い返事が来ない。


 この事にサウス王国の軍部は不快感を示すどころか感心していた。


 強い者に靡かないその姿勢に感じ入ったのである。


 そして数ヶ月前に帝国軍が南方諸国に攻め入って、瞬く間に6カ国を征服した。


 殆ど抵抗らしき抵抗は出来ずに、分断され各個撃破されて行ったようだ。


 帝国は武力のみならず謀略面でも強かな国らしい。


 まあ、南方諸国は戦さばかりで頭の出来よりも武力頼りになりがちではあったが、それでも見事と言うほかあるまい。



 そして対帝国に傭兵を各地から召集すると、その呼びかけに遂に念願の傭兵団が応えてくれた。



 その事に私は「おお!かの者らが遂に応えてくれたのだな!いやぁ〜!嬉しいのう!」と人目も憚らずにはしゃいでしまった。


 今思い出しても赤面ものである。



 そして数日前に初めて注目していた、人狼傭兵団を初めて目にした。


 噂通り狼に似た兜を被った偉丈夫であった。


 燃えるような紅い髪を持ち、こちらを見透かすかのような、そして瞳自身が光り輝くがの様な金色の瞳をしていた。



 天幕から出た後、慌てて声を掛けたが何を話していいのかわからなかった。


 こんな事は初めてであり、病気かと思って部下の戦乙女騎士達に相談した。



 すると“キャーキャー”と騒がしくなった。


「ええい!どうしたと言うのだ?」


「アーミラ様。それは多分恋ではないかと」


「恋?………な、何を言うのにゃ!しょ、しょんな筈はないだろう!」とカミカミで言い返したが、顔は赤くなり心の臓の鼓動は早くなった。


 恋か……これが恋なのか?恋などした事はないぞ?私はどうすれば良いのだ。



「ええい!今は恋よりも戦よ!帝国軍を完膚なきまでに叩きのめしてくれる!……そしたら興味を示されるかな?っは!私は何を言っているのだ!」


 また戦乙女達がキャーキャー言い始めた。





 ■



「ふっ。何を思い出しているだから」


『どうかされましたか?』


「いや、何でもない。全機人狼傭兵団に遅れをとるな!かかれ!」


 立ち塞がる帝国軍魔道騎士を、全身のバネを利用して一刀の元に斬りふせる。


 敵は驚いた事だろう。厚い外装に守られた魔道騎士がまさか一刀の元に斬られるとは思ってもいない筈だ。


 流石に戦乙女達も一刀の元にとはいかないが、危なげなく帝国軍魔道騎士を倒して行く。




 こうして奇襲は見事に成功して、帝国軍は引いていった。

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