11
第11話 姫騎士
「失礼します」そう言って天幕の中へと入る。
天幕の中には、サウス王国の騎士団長と将軍達がいた。
それに一人の戦装束に身を包んだ金髪碧眼の美少女がいた。
年の頃は17、8歳頃か。
綺麗に整った顔をしており、腰のあたりまで金髪の髪の毛を伸ばしている。
胸も大きいが形も整っている。
彼女が姫騎士ことアーミラ王女殿下であろう。
「お呼びにより参上致しました」そう言い深々と一礼する。
サウス王国は尚武の国と言われて下り、軍部は実力主義なので例え傭兵でも腕が良ければ蔑まれる事の無い国である。
なのでより多くの傭兵が集まる国でもある。
今回のサウス王国の陣容は魔道騎士80機並びに、兵士は6千ほど派遣して来た。
これは南方諸国連合の中でも、多くの兵士を派遣して来た。
他の国から派遣された魔道騎士は約40機前後である事から、この一戦にかける意気込みがわかるだろう。
そのかわりに兵士の数は多く一万名前後派遣して来た。
今回結集した南方諸国連合の国の数は、帝国に支配された国以外全ての国である。
元々26の国からなる南方諸国のうち、6カ国が帝国に敗北して残りの20カ国が手を取り合い、今回の一戦に臨む形になる。
南方諸国連合軍は、魔道騎士800機強・兵士は約20万である。
対する帝国側は支配した6カ国の総戦力(帝国との戦いにより、損耗している)魔道騎士500機・兵士約11万である。
そこに本来なら多数の帝国軍が加わる筈であったが、王国との緊張状態が高まっているので、派遣されたのは一方面軍のみである。
それでも魔道騎士300機に兵士8万である。
なので数の上では両者ほぼ同数である。
勝敗を左右するのは個々の力量である。
帝国側は半数が支配下に置いたばかりの国。
南方諸国はこれまで争って来た国々の集合体。と両者の条件も似たり寄ったりではあるが、それでもやはり帝国側が有利の見方が多い。
■
「御苦労。もう暫し待たれよ」と将軍の一人に言われたので、端に寄って待っていると次々と傭兵団の団長達が集まって来た。
兜の事は咎められるかと思ったが、咎められなかった。
南方諸国に来た当初は、咎められる事もあったが傭兵の殆どは兜をしている者も、珍しく無かったので何も言われる事は無くなった。
今回サウス王国が雇った傭兵団の数はおよそ20ほどである。
そのうち大きいのは三つだ。
その三つのうち一つはレン率いる傭兵団である。
一つは魔道騎士の数こそ平均的な傭兵団の数だが、所属する傭兵団の数は三千と多い傭兵団である。
もう一つは魔道騎士20機を保有しており、傭兵団の数も1500と多い傭兵団である。
「全員揃ったな。ではこれより軍議を執り行う」
傭兵を集めて一緒に軍議をするのは珍しい事である。
普通はお偉方が勝手に決めて、それをこちらに命令として伝えるだけである。
そうやって考えているうちに、軍議が進んで行く。
主にサウス王国の将軍や騎士団長が話し、そこにアーミラ王女が意見を口にするぐらいだ。
傭兵団の団長にも発言権が与えられており、時々意見具申をする。
そして大体の作戦は決まった。
俺たちはアーミラ王女が率いる騎士団に加えられ、敵陣の中央突破を狙う事になった。
作戦会議が終わり解散となり、天幕から出て自分たちの天幕の場所に戻ろうとすると、後ろから声をかけられた。
「待ってくれないか?」
後ろを振り返ると、そこにはアーミラ王女と御付きの騎士がいた。
素早く片膝をつき頭を下げる。
「そう畏まる事はない。此処は戦場であるので多少の無礼は許そう。立ちたまえ」
「御心遣い有り難く存じます。アーミラ王女殿下」
「何。それに今回は共に戦う中だ。噂では貴殿らの傭兵団は相当の実力者集団と聞いている。楽しみにしているよ」
聞いていた通り、かなり男勝りな性格の様である。
「はっ!アーミラ王女殿下のご期待に添えます様に粉骨砕身努力致したいと思います」
「ふふふ。ではまた後でな」
「はっ!」
そう言ってアーミラ王女は自身の天幕の方へと戻って行った。
■
数時間後………。
南方諸国連合軍の総大将が決まった。
姫騎士ことアーミラ王女は自ら辞退した様だ。
年若い事もあるが、総大将になれば自ら先陣を切って切り結ぶ事が出来ないかららしい。
(なんとも勇ましいお姫様だな)
総大将は一番経験豊富な隣国の老将軍に決まった。
堅実な守備に定評のある御老人で、バランス調整が上手いそうなので上手に差配するだろうとの事だ。
決戦の日取りは明日に決まった。
帝国側も着々とこちらに進軍して来ており、ちょうど明日には対陣する予定である。
こちらには地の利があるので待ち伏せして一気に襲いかかる所存である。
南方諸国連合の国々には、大国の様な騎士の矜持などがそこまで強く無いので、この作戦には反発が少なかった。
帝国側は帝国軍と占領地軍を纏めるのでは無く、二つに分けて進撃して来た。
最初は分進合撃か?と疑ったが占領地軍にそこまでの練度は無いのでただの進軍であろう。
叩くのは占領地軍の方が容易いが、先に帝国軍を叩けば占領地軍は帝国に反旗を翻して此方側に付く可能性がある。
なので先に帝国軍に奇襲攻撃を仕掛ける事に決定した。
奇襲地点に移動して帝国軍を待つ。