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第1話 プロローグ
「よし!必要な物は全部持ったな」
今日から5日間会社の休みを利用して、山奥にあるログハウスで趣味の工芸をして過ごす予定だ。
なので必要な物は5日分ちゃんと持って行かないと、近くにスーパーやコンビニがないので一々山を降りないと行けない。
なので三回も必要な物がちゃんとあるか確認して、漸くその確認作業が終わったところだ。
車に乗り込みエンジンを掛ける。
いつも通りの山道を進んで居ると、対向車線からバスがやって来る。
山道は狭いのでスピードを落とす。
「おいおい!結構スピードが出てるぞ!」
バスは速度を落とすどころか、速度を上げて突っ込んで来る。
目を凝らしてよく見ると、運転手が何やら胸を抑えて苦しんで居る。
異常に気付いた乗客が、バスを止めようとするが間に合わず、賢志も車のハンドルを切るが間に合わなくて正面衝突してしまう。
全身の骨が砕けたかの様な衝撃が襲う。
いや実際には砕けて居るのだろう。
バスの勢いは止まらず、賢志の車ごとガードレールを突き破って崖下は垂直に落下する。
そして地面と激しく衝突し、その衝撃でガソリンタンクからガソリンが漏れて引火した、車とバスは激しく炎上した後に爆発を起こして、乗客と運転手それに賢志合わせて33名が死亡した。
「うっ。生きて居るのか?」
目を覚まして起き上がると、先程までの痛みが嘘の様に引いて居た。
骨が折れて居たはずなのに、痛みは感じずに問題なく立ち上がれた。
周りを見ると32人居た。
多分バスの乗客と運転手だろう。
何となく死んだんだと言うことが理解出来た。
「テメェの所為で死んだんだぞ!」
見れば運転手の胸元を掴み、怒鳴っているのは若い男性で、近くの女性が止めようとしている。
「やめなよ。暴力は駄目だよ!」
「すまなかった……すまない……」
運転手はひたすら謝り続けていた。
このままだと埒があかない。と思った時に足音が響いて来た。
其方を見ると、不思議安心感を与える様な老人が歩いて来た。
先程まで怒っていた男性も静かになり、老人の方を向いていた。
『フォフォフォ。お主が怒るのもわかるが、その辺にしときなさい若いの』
貴方の中に響く声だ。
男性も落ち着いたのか手を離して離れる。
『さて、薄々気付いている者も居るじゃろうが、お主らは残念ながらあの事故で亡くなった』
「あの、お話を遮ってすみません。貴方は神様なのですか?」
『ん?まあ正確には少し違うのじゃが……その様な認識で構わんよ』
「お答え頂きありがとうございます」
『さて、通常なら輪廻転生の輪に戻るところなのじゃが、今回少し事情が異なりお主らには別の世界で転生してもらう事になったのじゃ。其処はお主らの世界とは違い科学ではなく魔法が存在する世界である。じゃからお主らにはスキルと呼ばれる物を一つ授ける事になったのじゃ。どのスキルかは儂にもわからぬ。では幸多き未来があらん事を祈っとる』
そう言って杖をコツンと一回地面に叩くと、33名全員の足元に魔法陣が浮かび上がった。
『では、さらばじゃ』
身体が光に包まれて行く。