仲間7
「おまえは?」
さっきは答えてもらえなかった問いに、やんわりと微笑が返った。
「プロのサッカー選手になるという夢は母親に着せられたものだった。でも、フットボールが好きだというきもちだけは、捨てきれなかった自分のものだと分かったんだ」
「鬼ノ山リーグが、おまえの居場所?」
「ああ」
「ほんとに、それでいいの? あそこじゃ何も手に入らないって、おまえが言ったんだよ」
「そうだ。その代わり、自由がある」
猿渡は、不意に転がっているボールに向かって歩きだす。
「──俺は、協会の手のひらで、やつらの駒にされるのはごめんだ。自分の何も、あいつらには二度と決めさせない!」
ぐっ、と翔の胸が詰まった。
それでも、猿渡はボールを蹴りつづけている。
そうする場所があって良かったと、翔は心からおもった。
サッカーをやめてもフットボールは愛している。
だからこそ、翔の前にだって現われてくれたのだ。
「おまえは、サッカーの世界で勝利をつかめ。戦って、戦って、いつか、折れて消えそうになったときには、ちゃんと思い出させてやるから」
ボールにたどり着くやいなや、猿渡はくるりとターンをしてなめらかにパスを繰り出す。
くそう、かっこいいな、と翔はむくれた。
悔しいので、父親の血にちがいない、とおもうことにする。
「思い、ださせる?」
「山賊リーグには、おまえとフットボールがしたくて待ってる『仲間』がいるってこと」
翔は、ボールを蹴り返す気だった右足を、そっと地面に降ろした。
あの場所で出会った顔が、いくつも思い浮かぶ。
「…………いつか?」
「なるべく、遠い未来にな」
笑ってそう言ってくれた猿渡に、翔はうなずく。
ただ、上手くは笑えなかった。
「けど、さみしいな──」
「さみしいわけないだろ。山の中でも、海の向こうでも、地球の裏側でも……フットボールが好きでやりつづけていれば、どこにいたって仲間には変わりねーんだから」
「……うんっ!」
笑って応じた翔は、足元のボールを、インフロントキックでもっておもいっきり空へと蹴り上げたのだった。
読んでくださって本当にありがとうございました。
スピンオフもいろいろと書いておるのですが、BL18禁に置いていきます(笑)




