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山賊リーグへようこそ  作者: 十七夜
4:居場所
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山賊リーグ1

二日目の練習では、またぞろボールを使わないフィジカルトレーニングか、とおもわせておいて、三十分ほどしたころ、ついに待ちに待ったボールが登場した。

が、始まったのはいわゆる、戦術パターンの練習、と呼ばれるものだった。

味方ボールになったら、ここにパスを出し、こんなふうにつないで、誰がシュートを撃つと、あらかじめチームで攻撃時の流れを決めておき、イメージの共有を図るというものだ。

U-15ではまったくやらなかった練習だが、U-18では試合に出るメンバーを中心に頻繁に行われる。

翔もよくそれに加わるが、決まったことをやるだけであまり好きな練習ではなかった。

それでも、U-18ではフォワードの位置に入ってシュートを撃てば良かったのでまだいい。

が、トップチームの練習では、翔はなぜか右サイドに配置され、フォワードに向かってクロスボールを上げる役目を担わされた。

翔だったら、その位置でボールを受ければ、ゴールに向かってドリブルを開始する。

どうしてもクロスを上げろというなら、やはりドリブルでゴールライン際まで突破してから、マイナスのボールと呼ばれる、ななめ後方へのグラウンダーのクロスボールを選択するだろう。

いずれにしても、翔の選択肢としては、まずドリブル、そしてシュート、いよいよ困ったときのみ、パスがあるにすぎない。

なのに、はじめからパスをしろ、それもフォワードのところへ正確に、と言われるのでは、翔にはストレスの上に失敗が重なるばかりで……

しかもプロである大人たちの視線は厳しさを増していく、まさに悪循環でしかなかった。


ドリブルだったらやれるのに、というおもいが、次第に、パスができない劣等感に埋もれて、自分でも見つけられなくなっていく。

パスしか要らないなら、翔のスキルも、アイデンティティも、必要ないということだ。


ここには、俺なんか必要じゃないんだ──


午後の授業に出たあと、翔は張りつめたきもちのまま、亀村に向かった。

おだやかな空気と、あたたかな人柄でいっぱいの場所に行けば、この息苦しさからはきっと開放されるはず……そうおもう。

自分が自分として扱われ、受け入れられ、認めてもらえる場所でおもいきり息をしないと、もう、一日だってがんばることはできない。



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