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山賊リーグへようこそ  作者: 十七夜
3:元サッカー選手
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ライバル1

ゲームが終わったあと、翔は司の陰に身を隠しつつ亀村中学の校舎までやってきた。


「そんなにしてる方が目立つよ。望くんはだいたい女のひとに捕まってるから大丈夫」


たしかに、猿渡は校舎の外でさつまいもを持ったおばさんに迫られている。

かとおもえば、大根を手にしたおばちゃんにも。


「あれって、野菜もらってんの?」

「そうだね。望くんは人気者だから。いつもいろいろもらって、袋をいくつもぶら下げて帰って行くよ」

「大根といえば、イサム、来てた?」

「あの子はたまにしか来ないから。水曜日には見かけないかな」

「なーんだ。……司は、塾の帰り?」

「ううん。水曜日は、塾は休み。週に一回だけゲームに出て、他の日は見つけた課題やテーマを練習するって決めてるから」

「へー、司のコーチは自分なのかー」


司について、もらったばかりのさつまいも入りのおにぎりをかじりながら、翔は黒い集団におっかなびっくり寄っていく。

みんな三十才を越えていそうな大人ばかりで、手には缶ビールらしきものを持っていた。


「犬さん」


司の声に振り返った顔を見て、あ、と翔はおもう。

おもわず人差し指を向けた翔に、彼はじろりと視線を注いだ。


「なんだおまえ、新顔だな?」

「犬……健太さん?」

「何でだよ! ボケてるのか、ケンカ売ってんのか、どっちなんだおまえ?」

「ただの天然です、ごめんなさい」


と応じたのは翔ではなく司だった。


「司のダチか?」


うん、と答えたのは今度は翔の方だ。

司は髪を掻いただけで、はなしを進める。


「彼は、犬飼いぬかい健太さん。このひと、ナントカ翔くん。翔くんのこと、市内まで車に乗せて行ってくれます? 昨日、駅で最終逃して、線路走ろうとしてたひとなんです」

「あー、そりゃ、天然ってよりアホだな。で、アホの翔くんの名字は何で、ナントカ?」


にっ、と笑った色黒の顔を見て、翔はくちびるをとがらせた。


「俺、たしかにアホだけど、ビールが酒なのは知ってる。酒飲んで、車運転したら捕まるらしいよ、犬……ナントカさん?」

「俺までナントカにすんな。健太でいい。心配するな、これ、ノンアルコールだからよ」


ぐりぐりと頭を撫でられながら、翔は健太を上から下までたっぷり見つめる。

そして、翔よりやや背の高い彼の耳元に顔を近づけた。


「健太さんて、猿渡の元カレなの?」

「────はあ? 何でまた」

「健太は望を横取りされて恨んでる、とかオジジってひとが言ってた。そんで、きっと怜司ってひとがあいつとエンコーして……」


言い終わる前に、オイ、と健太が横にいた男性の足を蹴りつける。

振り返ったやわらかなまなざしの男性は、よく見ると黒ではなく紺色のTシャツを着ていた。


「あれ。サングラスのひとと、ちがう?」


サングラスの下、たしか左頬にあったはずのほくろが、彼にはない。

翔は、あれから考えたのだ。

猿渡のことを黒チームから引き抜いた怜司というひとが実はサングラスの男で、お金で猿渡を釣って、自分のチームに寝返らせたのではないか、と。

育ててくれた健太の元を去ったのも、お金で買収されてのことだとすれば納得がいく。

高校生はお金が欲しいものだと相場が決まっているのだから。

もちろん翔だって欲しい、新しいスパイクとか、新しいスパイクとか、新しいスパイクとか──



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