第6話 お買い物
「おっ、あの黒いローブとかいいな」
特にあの少しボロくて目立たないところとか特にいい。そんな事を考えているとアリアが口を挟んできた。
「えー、お兄ちゃんにはあの青いローブが似合うと思うな」
俺は今アリアとアイナの妹2人とこの街、アルガハイト街を探索していた。さすがに転生したばかりの学生服のままという訳にもいかないので、ローブとその中に着るシャツとズボンを初依頼で獲得したお金で買いに来たのである。
因みに俺はまだ陽だまり荘にお邪魔している。
「チッチッチ、妹よ俺は目立つのが嫌いなんだよ、あと職業が職業だからな、やっぱり黒がいい」
「へー、ってお兄ちゃんどんな職業だったの?」
「ふふふ、よくぞ聞いてくれた、俺の職業はひ・み・つだ!」
「もー、お兄ちゃんのケチー!」
アリアは俺のお腹あたりを頬をぷくーっと膨らませながらポコポコと叩いてくる。可愛い可愛い。
「ぐっ!アリア……そこが鳩尾だ。ナイスパンチ……」
親指を立て笑顔で急に崩れ落ちた俺を心配してアリアはあせあせと忙しく動き回っている。
「お兄ちゃん大丈夫?ごめんね?」
アリアは半泣きになりながら謝ってくる。俺は流石に大人気無かったかと思い、直ぐに立ち直ると。
「ハハハ、心配無用!お兄ちゃんは不滅なのだ!」
何事も無かったかのように立ち上がった俺を見てアリアは俺を涙を溜めて恨ましげな目で見てくる。
「ううう、お兄ちゃんバカ!本気で心配したんだからね!もうお兄ちゃんとなんか口聞かない!」
「許してくれ!妹よ、この通り!この通りだから!」
街中、大声で必死に謝る俺に対してまたしてもアリアは厳しい言葉を放つ。
「許してなんかあげない!」
「グフッ!」
俺はその場で本当に崩れ落ちる事になったのだっ
た。
ーーーー☆★
「お兄ちゃんあれ買ってー」
「分かったから、機嫌直してくれよ」
「アイナはあれが欲しいなー」
すかさずアイナが言う。お前には何もしてないだろうが!て言うか俺依頼を一つしかこなして無いから金、そんなに無いんだけどなぁ。そんな俺の思いはよそにアイナとアリアは仲良く2人でキャイキャイお喋りしながら俺の前を歩いていた。
こいつら順応すんの早くね?仲良くなりすぎだろ。リア充並のコミュニケーション能力を持ってるな。俺に一部分けてください!ぼっちなんです!友達が欲しいんですぅ!
「とりあえずなにが欲しいんだ?」
「それはお兄ちゃんが決めて、ね?」
アリアが手を後ろに組んでニッコリと微笑む。その仕草が少し照れくさかったのかアリアの頬には少し紅が刺している。何この子の可愛すぎやしませんかね?旅に連れてっちゃっていいですか?それよりもだアリアが欲しい物か。陽だまり荘の豪華さからいくと大体の物は買ってもらえそうだがアリアは何が欲しいんだろう?女の子なら指輪とかかな?良しちょいと指輪を買って渡してやろう。
「アリア、ちょっとプレゼントを買って来るからちょっと待っててね?」
「お兄ちゃん~、アイナはあそこのネックレスでいいよー」
アイナが間延びした声で言った方向のネックレスを見る。高い!おいおい0が2、3個多くありませんかね?アイナさんや。
「あ、アイナ、いつか買ってやるからな」
俺はグッと親指をたててアリアのプレゼントを買いに行った。(にげた)
ーーーー☆★
アイナのやつ無茶言いやがる。まぁでも可愛い妹の願いとあってはしょうがない、。金が貯ったら買ってやるか。俺、妹に激甘だなー。
指輪が売ってそうな所を探していると占い屋のバァさんに声を掛けられた。
「そこの白と黒の剣を携えたおぬし。今ならただで占って上げるからちょっと寄ってかないかい?」
胡散臭いと思いつつもただなら良いかと思い直し、占ってもらうことにした。
「なにを占って欲しい?」
決めてないのかよ!そう言われると、困る。デートの時の昼飯を彼女になんでもいいよって言われた時くらい困る。まぁ俺、彼女いたことないから知らんけど。友達もいないから困ることないんだよね、そういう事。ぼっちマジ便利。
「いや、そう言われても困る。そちらの好きな様に占って貰って結構ですよ」
「なら、明日の運勢でも占ってやるとするかのぅ」
そう言ってバァさんはカードを取り出してシャッフルして机に並べた。俺には意味の分からない並びだったがバァさんにはなにかわかったようだ。
「ふむ、結果が出たぞ。災いあるがその後、幸福というものじゃ。明日お主の身に災いが降り注ぐがそれを乗り越えた時オヌシにとっての最大幸福がおとずれるという事じゃ」
なるほど一応明日のために今日は色々準備に時間をつぎ込もう。
「ありがとさん。中々楽しかったよ」
さぁてそろそろ指輪買いに行くか、いいとこも見つけたしな。さっきの占い屋から歩いて二十分ほど先にあるお店である。確かここらにアリアの瞳の様な空色の指輪が……あったあった。
「お姉さん、そこの指輪一つ下さい」
「へい、1万ゼニーね」
そう返事した指輪屋の姉さんは、美しい赤色の髪の毛をしている。しかしその髪の毛はボサボサにはねまくりろくに手入れされていないのだろう。勿体ない。
そうそう言い忘れていたけど貨幣価値はこんな感じだ。
鉄貨→10円
銅貨→100円
銀貨→1000円
金貨→10000円
白金貨→100000円
とこんな感じだ。
なぜ俺が金をこんなに持っているかというと、盗賊が指名手配だったらしく、討伐報酬が貰えたのだ。……討伐てあの人たち人だよね?モンスターじゃないよね?
「あん?」
おっと、余計なことを考えていたせいで睨まれてしまった。そのつり目とあいまり気が強そうな印象を持った。惚れてしまったならすまないな。俺が惚れるのは年下でお兄ちゃんと呼んでくれる女の子だけだ。ごめんなさい、少し調子に乗りましたね。
「ああ、すみません。余りにも美しい髪の毛なので見とれてしまって。はいこれ、1万ゼニーです」
って見とれてるわけねーだろ。さっきも言ったが年上は対象外だ。まぁ綺麗なのは本音だけどな。
「え?私の髪が綺麗だって……?」
お姉さんが顔を逸らして髪の毛を弄りながら言う。あれ?なんでだろう。とても、悪い事をした気が……。ん?本気で惚れられ……。
「ああ、それは良かった。じゃあまた縁があれば会いましょう」
「あいよ。ありがとねー!」
お姉さんは満面の笑で手まで振って見送ってくれた。断じて恋愛対象では無いが中々可愛い人だったなぁ。犬耳としっぽ生えてたけど。そう思いつつ俺はアリア達と合流しに行くのだった。
………あっ、結局ローブとズボン買えなかったなぁ。
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