第1話 異世界に来て早速妹に出会いました
連続投稿です
「うわぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺が何してるって?結論から言おう。空から地面に向かって落下中である。
魔法陣が光って次見た俺の景色はもうたかーいたかーい空でしたわ。あの時は状況が状況だけに無理やり納得したけどやっぱ訂正。あの子頭おかしいわ。スタートした瞬間確実に死ぬ高さから落下ってそれなんて鬼畜ゲー?
無駄な思考をしている間に地面は無情にもどんどん近づいてくる。
「くっそぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
どうせ意味は無いが一応受け身をとる。
俺だって中学の時に柔道の授業を受けているのだ。組手する相手がいなかっただけに授業中全ての時間を受け身に費やした俺の受け身に、もはや死角などないっ!
「くっ………」
頬に土の感触。あの高さから落ちたのに不思議と体の痛みは無い。
やはり俺の受け身は最強か。
体を起こし周りを確認する。そこは森の中だった。
最悪だ。水も無ければ食料もない。何が出るかわからないため寝ることも満足に出来ないだろう。
サバイバルはした事ないし、しようともしたことも無いため知識はないが、まぁ、まずは水だろ。ととりあえず水を探しに小川などが流れていないかと森の中を歩き回る。
ガサゴソ、ガサガサ
ん?今なんか妙な音がしたぞ?気のせいか…。気のせいだといいな!
俺は音がした方向と逆方向に全力で走り出す。誰が裸装備でそんな所向かうかよ!死んだら終わりの世界でそんなリスキーなことするわけねぇだろ。特に運動もして無く帰宅部だったが嫌なこと、苦しい事から逃げるこの逃げ足だけはピカイチだ。
揺れていた草むらから狼が飛び出す。
………三匹ほど。しかも狼の体は体長二メートルにも及ぶ巨体だった。
「マジかよ…」
思わず心の声が表に出る。狼がこちらをチラッと一瞥するとこちらへ向かって全力疾走してきた。
どう考えてもあちらの方が足は速い。
狼の爪が首を切り裂かんと俺を徐々に追い詰めてくる。
クソッ、ここまでか…諦めの早い俺は走りなががらもう一度手に入れた生を早々に手放そうとした。
狼の牙が俺に迫ってくる。
「死んでたまるかぁぁぁぁ!」
俺は必死に横に転げながら狼の牙を避ける。
死を覚悟したが覚悟が足りなかったのか途端怖くなって牙を反射的に避けてしまった。死を実感した、死が隣まで迫ってきていた。手が震える、俺は全力で走った。文字通り必死に。
目の前に都合よく街が見えてきた。門兵もいる。
よし!あの兵士さんたちに助けてもらおう!
「すいません!助けて下さい!」
俺は精一杯の声を出し助けを求める。
すると門兵さんたちが急に慌てだした。なっさけねぇ、モンスターから街を守るためにお前たちがいるってのにいざってなるとこの焦りようだ。
情けない情けない。俺みたいじゃないか……。
「おい!アイツモンスタートレインしてきたぞ!しかも魔獣三匹も連れて」
焦る門兵さんの横を俺は素通りする。
「おい、ちょい待てよ!マジかよ!俺、王都の魔法騎士団に連絡してくる!Bランク個体三匹とか勘弁してくれよ!」
マジかよ…俺テロリスト扱いされてんじゃね?
俺が門兵を素通りして門の内に入った瞬間ドゴォン!といきなり大きな地響きが聞こえた。
振り向いてみると俺を追いかけ回したくそ狼が三匹地面に埋もれている焦げていた。ざまぁみろだ。流石門兵さん、焦っていたわりにおやりになられる。
「おい!お前!いきなり街にきてモンスタートレインとはどういう事だ!」
門兵さんがこめかみに青筋をたてながら近寄ってきた。
「えっ、旅で疲れて森の中で寝てしまっていて、起きたらいきなりあの狼に追いかけられたんです。もうアイツらにころされそうで、門兵さんに助けて貰って助かりました」
コミュ障の俺には珍しくとっさに言い訳が出た。
いくらなんでもこの世界の人に別世界から来て、水を探していたら追いかけられたなんて言ってもどうせ信じてもらえないだろうからな。
「そうか……災難だったな、疑って済まない。ほら街へ早く入れ。もうあんな目はしたくないだろう?」
門兵のおじさんはおれを心底心配した目で俺を見つめてきた。おっさんに見つめられてもねぇ……。
しかしおかしくないか?いきなり街に向かってモンスター、それも兵士の様子を見る限り中々強い個体を三匹も引き連れて来た様な奴をあっさり信じていいのか?まぁ門兵さんによって瞬殺されたわけだけど。
自分で言うのもなんだがテロ行為と見られてもおかしくないと思う。通して貰えるなら通してもらうが後でこの疑問は後で考えよう。ぼっちは疑心暗鬼なのだ。
俺がこうなった原因は中学校一年の冬にある。
そうあれは中学一生の頃、朝机の中にラブレターが入っていたのだ。
あの頃は普通に友達もいたし学校生活は充実していたが、少し物足りない気がしていた。そう彼女が、クラスの女子との関わりが足りなかった、要するに女子とのスキンシップが足りなかった俺はこの可愛い丸字で書かれたラブレターを見た瞬間、俺の見ていた男ばかりモノトーンの景色は色とりどりの鮮やかな景色になった。
俺はこれ以上ないまでの御機嫌の良さで指定された体育館裏に行った。
しかしそこには誰一人いなかった。俺は12月の真冬に俺は女の子が来ると信じ夜の九時まで待ち続けたが誰も来なかった。次の日、俺は風邪を引いて学校を休んだ。
俺が学校に来た時に男子が笑ってたから男子が犯人だろうなー。
そのラブレターを書いた人物は未だにわからない、知ることももう無いだろうが、俺はその人物を恨んでいる。
とまぁこんな経験があるので俺は人を、起こった事象を確定的な証拠を見せつけられないと信じられない体になってしまったのだ。
そういえば横の席の田中が妙にくすくす笑ってたなー。犯人あいつか。ぶっ殺。
とりあえずトラブルはあったものの、街には入れたしまずはテンプレの冒険者ギルドに立ち寄るか。妹(女神)の為とは言えなんで俺がこんな世界を救わなきゃならんのだ。そんなもの決まっているこの世界で今後作っていく予定の俺の妹の為だ。
ーーーーーーーーーー☆★
とりあえず冒険者ギルドに向かうと決めたもののギルドの場所が分からない。さて困った。もう街の中を1時間は歩いている、疲れた。
俺は全身を襲う疲労(大袈裟)に耐えながら、一歩また一歩と地面をしっかりと踏みしめて人混みを歩く。
俺がオーバーに疲れを見せながら歩いていると、裏路地でいかにも三下風なテンプレチンピラ二人組が美少女に絡んでいた。異世界転生した人の前にテンプレのチンピラが美少女に絡んでいるとかテンプレかよ。その美少女の年齢は10、11歳と言ったところだろうか。綺麗なロングストレートの金髪でその瞳は今にも吸い込まれそうなほど深く綺麗な空色をしている。女の子はさっきから泣き続けている。しかし誰も見向きもしない。
だからおれは助けない。いや助けられないといったほうが正しいだろう。助けられるなら助けたい。転生した当初から何かしらのチート能力を所持している、難聴鈍感テンプレハーレム主人公(偏見です)とは違って俺はといえば難聴でも鈍感でもなくテンプレでもなくチート能力は持ってるらしいが知らないのでノーカンだ。
こんなちょっと逃げ足の早いだけの男が三下とは言えチンピラと戦って勝てるとでも?勝てるわけがない、こんなヒョロい腕で足で勝てるわけがない。つまりこれは逃げるのではない、自分の現在の実力をしっかり把握した上での当然の判断だと言えるだろう。
誰も俺の判断を責められない。文句を言えない。何せみんなあの子のことを無視して、必死に自分の視界の隅へ追いやって、自分の見たことを無かったことにして、いい大人が必死で関わらないようにしている。そんな光景を俺は見ていた。
──不意に妹にあの子が重なった
さっきまで、俺も同じ行動をしていたのか。腹が立つ、この街の住人と俺に。あの女の子はおれが守ると決めた。あの子はもう俺の妹だ。女の子1人、妹1人守れない男が魔王から世界を、妹を守れるだろうか。
否、断じて否!守れるわけがない。
例え自分じゃ何も出来なくても、あんなに小さな子が泣いているのだ。助けを求めているのだ。声に出さずとも、視線でわかる。ぼっちは視線に敏感なのだ。理由など理屈などいるものか。助けたいと思ったから助ける。それで何が悪い。
俺はぼっちでコミュ障で面倒くさがりだけど──泣いてる女の子を見過ごすほど性根は腐ってねぇよ。それでもぼっちだけどなぁ!
俺は先程感じていた疲労が嘘の様に無くなっていくのを感じていた。
(やっぱりしんどいって思うとしんどくなるってほんとだったんだな…)
「おい、お前らその子泣いてるだろ。やめてやれ、代わりに俺が相手してやるから」
「ああん?なんだお前、男に用なんてねーんだよ」
「そうだそうだ帰れ!帰れ!」
………マジでこいつらテンプレだな。だがこいつらの相手などあとでやればいい。泣いてる女の子をとりあえず逃がさなければ。
俺はできるだけの笑顔で女の子に話しかける。
「おーい、大丈夫?お兄ちゃんが来たからもう大丈夫だよ」
「お兄ちゃん…助けてくれるの?」
小首をコクンと傾げて聞いてくる。目に溜まった涙も相まってすごく可愛い。こんな子助けない訳には行かないだろう。て言うか俺の顔怖くないよね?
ところで皆様お気づきだろうか?俺はこの子にお兄ちゃんと呼ばれたのだ。呼ばれたのだ以上俺は全力を尽くしてこの子を守る!
「もちろん」
「ほんと?」
「ほんとにお兄ちゃんがこのこわーい人からきみを守ってあげるよ。お兄ちゃんがいる内にお家におかえり」
「なんでお兄ちゃんは私の事を助けてくれるの?大人もみんな私の事を助けてくれなかったのに」
「それはね俺が君にお兄ちゃんと呼ばれたからだ…」
「………それだけ?」
「ああ、それだけだ。そしてお兄ちゃんには妹を守る義務がある」
「フフ、変な人でもありがと!私の名前はアリア、アリア・マーガレットよ!」
「俺の名前は鈴木晃だ」
「変わった名前ね。でもなんだかいい響き……。アキラお兄ちゃん!私は陽だまり荘って所が家だから、困った時には泊まりに来てね、安くしとくよ!」
その美少女はウィンクしてからトテトテと表通りのほうに走って行った。
ウィンクとは生意気な奴だ。可愛いな、こんちくしょう。でも俺は見逃さなかった。アリアの目が腫れていたことを。アリアを泣かした罪、しっかり償ってもらうぞ?
しかしまぁ
「おいこら!兄ちゃんどうしてくれんだ!」
「勝手に逃がしてくれちゃって覚悟は出来てんだろうなぁ!」
こいつらをどうすっかなぁ。てかここまで待ってくれるとかむしろこの人達いい人っ!?まぁでも妹を泣かした罪は償ってもらわんとな。
あと俺の事を兄ちゃんって言っていいのは活発系の俺の妹だけだ。
……まだいないけど。