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7.脱出(3)

もはや不定期更新って言い切ったほうが良い気がする

「そろそろ顔を上げて頂いても結構です」


 そう声をかけられたのはしばらく経ってのことだった。

 先ほどまで櫂の漕ぐ音と水音、そして時折聞こえる風音以外耳に聞こえてくるものはなかった。なんとなく黙っていたらそのまま会話もなく小舟は進み、顔を上げて周りを見れば、霧に囲まれた湿原の小川を進んでいることが分かる。櫂の漕手から更に後ろを覗き見れば、霧の向こうに先ほどまで閉じ込められていたであろう城の姿がぼんやりと見えた。


「自己紹介が遅れました。私は王国の教会に所属する騎士、ギムグリスと申します。ギムとお呼びください救世主様」

「同じく教会所属、リゼです。先程は緊急のこととはいえ、不躾な態度をとってしまいました。心よりお詫びいたします」


 ローブを纏い、女性と同じようにフードをかぶった大柄な漕手の男性――ギムに続いて、俺を助けてくれた女性がリゼと名乗った。二人共俺に向かって膝立ちし、うやうやしく頭を下げる。


「あ、えっと。神野定臣です。あーこの世界だと苗字は後ろかな? それだとサダオミ・ジンノになりますね」


 敬意をもって挨拶などされたこともなかったのでなんだかちょっと焦ってしまった。そのせいか自分の名前もちょっと言いづらかった。二人に頭を上げてくださいと頼み、とりあえず俺は話を聞くことにした。

 まずは今の状況から。


「我々は、我が国の巫女が授かった神託によりこの地へ参りました。曰く、『失われし神坐ず大地より来たりてこの地を救う者、悪しき神の下僕しもべより取り戻すべし』です。各国に放っていた密偵の報告で、この国にて膨大な魔力反応を確認し、異世界からの使者だと断定しました。それが貴方様です。そして神託に従い、即座に救出することになりました」

「この国だったのは幸運でした。我が国から強化魔法を使った早馬で半日の距離でしたから」

「今この舟には隠蔽魔法が重ねがけしております故、ご安心ください。先ほどまではそれでも慎重を重ねておりましたが。この辺りの川は入り組んでまして、その中でも比較的安全な――見つかりづらいルートを選んで進んでおります。見ての通り、霧が濃いのです。その分魔物との遭遇の危険が高まりますが、そこは隠蔽魔法で回避しております」

「このままもう少々進み、国境近くで馬に乗り換えて我が国へと向かいたいと思っています」


 なるほど。まさかご都合的展開に巻き込まれるとは。あのままだったら確実に殺されていただろうから今は神託を告げた神様に感謝――ってもしかして俺があったあの神だろうか。神託はOKなのか? イマイチ境目がわからないな。


「質問、いいですか?」

「なんなりと」


 とりあえず今置かれている状況が察せたところで、俺は話の方向を変えることにした。俺自身のことだ。


「あなた達は俺のことを救世主様と呼びましたけど……俺をその救世主だと思った理由はなんですか?」


 その質問に二人は目を合わせて、ぱちくりとまばたきをした。ものすごく意外そうな顔をこちらにむけ、ギムが口を開く。


「貴方様が纏うその膨大な魔力を見れば、この世界のものとは思えません。あの封印布があってなお、漏れだす魔力は城外でも感じることのできるものでした」

「えっ、そんなにスゴイんですか?」

「正直申しまして、肌に感じる魔力がピリピリと痛むほどです。失礼ながら、ご自身ではご自覚なさってないのでしょうか?」

「おいリゼ、口が悪いぞ」


 注意されてリゼは一つ頭を下げる。コントロールできていない事になんだか申し訳なくなりながら、俺は自分のステータスを確認することにした。


 名前:神野 定臣(じんの さだおみ)

 種族:人間(異世界人)

 レベル:5

 称号:なし

 ※スキル:

  徒手格闘Lv3

  武術Lv5

  運搬Lv2


 ユニークスキル:『未完成(アンフィニッシュ)

  他一つのユニークスキル


 更に意識してみるともっと詳しいステータスが浮かび上がった。


 体力:30(+8000)

 魔力:20(+8000)

 持久:20(+300)

 筋力:25(+500)

 知力:15(+400)

 敏捷:20(+300)


 補助効果:■■神の加護


 なんだこの数値は。

 元のステータスがレベルの割に高いのか低いのかはわからないが、その後に付いているボーナス数値が異常なのははっきりとわかる。補助効果の欄にある神の加護というやつだろうか。神の名前?の部分が塗りつぶされていて何の神なのかわからんが。……この世界の守護神とかではないのか? あの神は。


「……なるほど、納得しました。どうやら神のご加護で私は身の丈以上の力を手に入れているようです」

「おお……! 召喚された者の中でもそこまでの加護をお持ちの方はそう居られますまい。さぞ高位の神の加護を授かったとお窺い知れます」


 そう……なのだろうか? どうもさっきから、彼ら――特にギムがやたらと俺をヨイショするために、言っているようにしか思えない。事実、今の俺には比較するためのデータもないのだ。このステータスがどれほどスゴイものなのかもなんとなく彼らの口ぶりから察するしか無い。

 ギムのヨイショはともかく、リゼは思ったことを率直に話してしまうタイプのようだ。今この状況、情報の入手は彼女を主体にしたほうがいいだろう。


「――俺は、魔王と呼ばれて殺されそうになりましたが、あれは一体どういうことだったのでしょう」


 一番の疑問を口にすると、二人の表情が曇る。ギムは悲痛そうに顔をうつむかせ、リゼも唇を噛んで顔を背けた。


「この国は――いえ、この世界は呪われているのです。そして、その話をするために、私達は貴方様に隠し事をしていたことを打ち明けなければなりません」


 そう言って二人はフードをとった。ギムの短く切りそろえたれた金髪に、リゼのウェーブのかかった赤茶の髪が見えるのとほぼ同時に俺はソレをみた。


「我らは獣人族の者なのです。純粋なヒト族ではありません」


 毛に覆われた三角の耳が、彼らの頭にはあった。


 呪い――

 それはいつ発現したのか分からないという。

 元々この世界には多種多様な種族がいて、それらは手を取り合って共存していた。だが、いつのころからか人間至上主義の思想が蔓延はびこり、純粋な人族以外は亜人、魔族と蔑まれ、人族によって迫害されていった。

 人族同士でも戦争が起き、多くの亜人達と一部の人族は、この世界に、何かが起こっていると考え始める。そして世界の急変が起こった際に、別世界から呼び出される救世主たちは、そのほとんどが魔王と勘違いされ、何人も犠牲になっているという。

 呪いの話と亜人のことから、一瞬「元は人だけど呪いでこの姿になってしまっている」パターンかと思ったがそうではなかった。

 そして彼らの国に、魔王の存在と新しい救世主の来訪が神託によって告げられ、先の話に繋がるといったものだった。

 ここで彼らの言う呪いとはつまり、魔王による世界の意識の改変のことであった。


「我らの国は、元々結界の中にありました。そこでは呪いの影響もなく、未だ人族も、他の種族も共存しておりますが……結界も綻びを見せ始めているのが現状です」


 事態は思った以上に深刻だった。

 俺は神の言葉を思い出す。


――君にはその世界を救って欲しいのさ

 

 簡単に言ってくれるな、と独り言ちると、怪訝そうな顔を二人が浮かべた。聞こえるように言った覚えはないのだがやはり普通の人よりも耳がいいのだろうか、愛想笑いを交えなんでもないとはぐらかす。

 だがこの世界での目的ははっきりした。

 呪いを解いて、世界を元に戻す。そのためには、原因となんらかの関係のあるであろう魔王とも会わなければなるまい。

 そして魔王と救世主、ぶつかり合う可能性は極めて高いのだろう、と、彼は空を見上げ思う。

 霧と雲で空は見えなかった。


※ステータスは暫定です。種族ごとの計算値について考え中です。ぜんっぜん思いつかないからいろんなゲームのとか見てるんだけど……わからん

何か良い案があれば教えていただけると幸いです。ちなみにボーナスの数字はレベル200相当と考えていますが……どうなんでしょう


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