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2.異世界と召喚・転生

4/26 最後の方、忘れてた事があったので改変しました

「まーそう言っても、伝えることはそれほど多くないよ」


 『いつの間にか存在した』ホワイトボードに「世界について」と書いていく神。所々歪みのある、子供の書いたような字だ。


「具体的なことはあまり言えないのがルールでね」

「ルール?」


 ああ、と神は頷く。聞けば俺のように異世界に召喚されたり転生するのはそこまで極端に珍しいことではないらしい。……と言っても、神視点での話だ。あてにはならないだろう。

 その中で、神との謁見に叶うのは一握りであり、また謁見において伝えられる情報は制限があるということだった。


「……待ってくれ、神様が自分で決めたルールなら変更してしまってもいいんじゃないか?」

「わたし一人で決めたわけじゃないからね。他の神々との調整や、世界をまたぐ際の負荷を減らす目的もあるのさ。だからしっかり聞いてくれ」


 言葉に違和感を感じたが、私は黙って頷く。なるほど、神という存在はこの一柱だけではなかったのか。


「君が今から行く世界と前にいた世界との一番の違いはなんといっても魔法・スキルの存在さ」


 魔法。

 その言葉を聞いた時、恥ずかしげながら胸が高鳴った。

 なにせ現実に存在しない、お伽話を始めとする創作物にしかないものだからだ。杖<タクト>を振るってキラキラと光を舞い散らしながら発動するお伽話や少女漫画にありがちなものから、複雑な儀式・詠唱や、数学的な幾何学模様をもってして世界に顕現させるようなものまで、創作物の中ではその発動方法すら枚挙にいとまがない。

 神がホワイトボードに描く拙い絵と話によれば、魔術は数多の世界でごく当たり前に存在し、世界を覆うマナ(この辺りは俺が受け入れやすい言葉を使ってくれているのだろう)を使って発動するらしい。

 もう終わった世界のことだからと、元の世界にもマナが存在したことを教えられた。ただ魔法を使う文明がそうそうに跡形もなく滅亡したことで、世界に魔法が存在しなかったらしい。それでも中世に行われた研究で、いいところまで行った事例もあったようだが。


「ただ、そこで問題なのが君の資質。なにせ今まで魔法に触れたことのない、存在しなかった世界から行くわけだからね。マナを感じる資質なんて大多数は持ってなかったし、自然の少ない都会で暮らす君の時代の人たちはなおさらさ」


 人間の生物としてのスペックが下がっていることもそれに拍車をかけているらしい。戦乱のころなら違っただろうが、工業の発展から機械を頼り、便利な世の中になったが人々は体を動かすことが減り、そのまま世代的に体力の少なく、且つマナへの適応力が低くなってしまったそうだ。俺もまた例外ではなく、一般的な能力しか持っていないということだった。


「まぁ君は特殊は特殊なんだけどね。じゃあ、それにも係るスキルのことを話そうか。ついでにステータスについてもね」


 ますますゲームじみてくる神の話を俺は一字一句逃さないように聞いた。

 曰く、スキルとはそのまま技術や能力のことらしい。ただ、これから行く世界ではある程度の修練でそれが顕現し、知覚とともに体に宿るそうだ。同じスキルにしても、その修練度で質の良し悪しもあるらしい。元の世界と違うのは、スキルとして発動した際に、世界の理から補助がかかるように発現し、場合によっては追加効果も乗るということだった。


 ステータスは全てのものに存在し、それを調べるための魔法や道具があるとのことだった。試しに、と俺のステータスを神がホワイトボードを二回叩いて表示させる。


 名前:ーーーーーー

 種族:人間(異世界人)

 レベル:推定6

 称号:ーーーーーー

 ※スキル:

  徒手格闘Lv3

  武術Lv5(かすれかけている)

  運搬Lv2


  他2つのユニークスキル


 ※印のついたもの(今はスキルだけだが)はステータスを調べた際、同意なしでは分からないらしい。上位の解析スキルなどの前では暴かれるらしいが。

 だが今はスキルよりも気になることがあった。


「神様、俺の名前が表示されてないんだけど」


 横棒が何個かならんでいるだけの名前欄を指さして問うと、神はその質問を待っていたとばかりに頷くと、


「君、自分の名前言えるかい?」

「は? 何を馬鹿なことを――」


 口に出そうとした自分の名前。

 三十年に満たない人生の中で、今の今まで当然のごとく受け入れていたその名前。

 その名前を、俺はどうしても言えなかった。


「君の名前は、残念だけど預からせてもらったよ」


 ――その言葉に、弾かれたように俺は神の首元に右手をのばす。

 失った家族との思い出を、想いを、繋がりを俺は名前に感じていたのに。

 それを一方的に突然奪われ、俺の思考は一瞬で怒りで満たされていた。


 喉元に差し掛かった手が、ぱん! という音と共に外に向かって弾かれた。しびれて右手の感覚を一瞬失うが、その感覚が回復する前に俺は続けて左手を放つ。

 掴もうとせず、昔習っていた武術の突きの様に拳を放ったが、それもまた外側に弾かれた。

 両腕が開かれ、大きく開いた俺の胸元に、神が手のひらをそっと触れると、突然俺の体は後ろに吹っ飛んだ。床に叩きつけられて何度か転がるが、真っ白の部屋の景色は真っ白のままかわらず俺の網膜に映しだされる。

 痙攣した体を無理やり起こし、顔を上げれば神が目の前に立っていた。


「少し頭を冷やしたまえよ。話は最後まで聞くべきだろう?」


 話を無視して体に力を込めれば、今度はぎちっと妙な音と共に、体が全く動かなくなった。視線すら、神に向けたまま動かすことができない。金縛りのような感じだ。

 これは神のスキルなのだろうか。

 俺は諦めて体の力を抜けば、金縛りも解けた。俺の体はそのままどさっと座り込んでしまった。


「よろしい。これはさっき話したルールに通じるんだけど、世界への負荷をいくらかでも減らす目的があるんだ。世界を救った後、元に戻してあげるから今はわかってくれたまえ。代わりの名前はこちらで用意しておくから」


 そう言われてしまっては従うほかない。世界への負荷がどの程度影響するのかは俺には計り知れないが、今はこの神のいうことを盲信するしかないのだ。


「話を続けるよ、君のスキルは今までの経験から反映されているものだ。武術がかすれかけてるのはもうじき完全に忘れてしまうからだね。君、たまには体を動かしてやらないとだめだよ。

 それで、君が特殊な理由がそのユニークスキルさ。今は表示してないけどね。これも負荷軽減だと思って諦めてくれ。表示してもいいんだけど、召喚の際に変質してしまう可能性があって、それはとても困るんだ」


 俺は黙って話を促す。


「ユニークスキルは転生者や被召喚者、あとは世界で特別な存在が持つスキルのことで、各々が別のスキルを持っているよ。似たスキルも、もちろんたくさんあるだろうけど、全く同じスキルを持っている人は滅多にいないはずさ。

 さて、世界についての説明は以上。何か質問はある? あまり多く答えられないけどね」

「……魔法とスキルがある世界だというのは分かったが、どのくらいの文明だとか、タブーだとかその辺りは教えてくれないのか?」


 神はひとつ頷くと、腕を組んで答える。


「それは教えてもいいけれど、結局はその地域によって変わってしまうからね。文明レベルは君がいた世界より全体的には低いとおもうよ。だいたい中世ヨーロッパくらいかな? ただ、魔法やスキルがあるから一概には言えないだろうね」

「……なんか都合良すぎないか? 異世界に行くのに中世で、かつ魔法のある世界じゃないとダメな理由でもあるのかって勘ぐってしまうくらい、その手の話はネットにありふれてるが」

「お気に召さないかい? 君が住んでいた時代より遥かに高度な文明を持った世界でも、同じように救いを求めているからそっちでもわたしは構わないよ。一応そっちには別の勇者に頼むつもりでいたけど、正直うまく行くとは思えない。周りよりも劣った知識、能力で、どうやって生活していって――世界を救うつもりだい?」

「そこまで言うなら、その俺よりも優れた勇者に全部任せればいいだろ。なんでわざわざ俺に頼む必要がある」

「文明レベルが離れすぎると、今度は逆に機微に疎くなりがちだ。自身はまったく動かずに高度なロボットだよりで生活している人が、機械すらない時代に送り出されたらどうなると思う?」


 生物的にそれはどうなんだと思いつつ、その極端な例に無理やり納得する。


「さて、じゃあ最後に、君に贈り物だ。君が元いた世界の知識を集めたこの本をあげよう。役立ててくれたまえ」


 といって神が右手を差し出すと、その手の上に厚さ20センチはあろうかという本が現れた。横にはその本が何十冊と控えている。確かに元いた世界の知識を書籍にしたならこれどころじゃない量の本が必要になるだろう。おそらく不要なものは削られているとおもうが……と、そこでふと『ルール』にふれないのか確認する。


「あー、ルールに触れるね。これほどの量だと負荷も高いし、どうしようか」

「考えてなかったのか神様……さっきからあれだけ言っていたのに」

「そうだなぁ……あ、君スマホ持ってるよね? ちょっと出してくれない?」


 ポケットに入りっぱなしだったスマホを渡すと、神はそれを右手で受け取ると左手に出現させた『林檎』を画面に近づける。


「あ、このスマホもリンゴのマークついてるからちょうどいいね」


 何がちょうど良いのか分からないが、リンゴが画面に触れた瞬間、解けるようにリンゴは画面に吸い込まれて消えていった。神がちょいちょいとスマホを操作し、何かを確認するとスマホを返してくる。見れば、今までなかったアプリが増えている。促されるがままにタップすると、アプリが起動した。アプリの名前は異世界大百科。どうやら辞書アプリのようだ。


「これならほとんど負荷にもならないはずだよ。それとそのスマホに魔法をかけといたから、そうそう簡単には壊れないよ、安心して」

「ありがとうございます……神様」


 若干ぶっきらぼうに答えてしまった。だがこれで暇つぶしに小説がかける。異世界の話を盛り込んだ物語ならそれなりにウケがいいのではないかと夢想していると、神の隣に、白い空間を切り取るように紫色に縁取られた大きな楕円が浮かんでいた。おそらくそれが異世界への扉なのだろう。


「ああ、それと……君の体を若返らせるよ。具体的には武術スキルが完全に使えるくらいになるまでね」

「何……?」


 言うが早いが、神は俺に手をかざす。すると、淡い光が俺を包んだ。すぐに見える手のひらを眺めていると、震災の時の傷跡が消えていき、日焼けが沈着した肌がどんどんとその若さを取り戻した。今は見えないが、少なくとも五年……いや十年くらい若返ったかもしれない。


「これで後は体を動かす勘を取り戻せば、一般人くらいは楽に相手取ることが出来るだろう?」


 若返った手のひらを、二、三度握っては開く。腕は若干細くなったが、力を込めた時に浮かび上がる筋肉に俺は思わずほころんでしまった。

 さっきは出来なかったこの神への攻撃をもう一度試せば、もしかすると結果が変わるかもしれないと思うに足りる。充実した力を感じる。


「あと転移の時に君の記憶を少しいじらせて貰うよ。僕への憎しみとかそういったところを綺麗さっぱり消させてもらう。余計なことを考えず、君は世界を救ってくれたまえよ。

 さ、お話はおしまい。じゃあ、世界を頼んだよ」


 途端に怒鳴りそうになったが、ぐっと溜飲を下げる。この神がそうなのか、それとも神とはこういった存在なのかは知らないが、いい気分ではないのは確かだ。

 若干うんざりした俺は、とっとと異世界への扉をくぐることに決めた。


「せいぜい頑張りますよ。では、さようなら」

「うん、また会おうね」


 次に合うのは俺が死んだ時なんじゃないのか? そう思いつつ、俺はその紫色の楕円をくぐるのだった。

後半ものすごく走り書きになってしまった……

あとで余裕があるときに直すかもしれません。

異世界召喚もので気になっていた点なんかの説明を盛り込んだつもりですがどうでしょうか

4/27

>一応そっちには別の勇者に頼むつもりでいたけど、正直うまく行くとは思えない。周りよりも劣った知識、能力で

の周り「より」が抜けてたので修正

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