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1.世界の終焉と神との対面

はじめまして。不慣れですがやっていきたいと思います。目標は週2更新です。

プロットとか書いてないんでどう転がるかわかりませんがよろしくです

 初めて異世界に召喚されたその日、俺は絶望に打ちひしがれていた。

 太陽を隠し、空を覆わんばかりーーいや覆った軍勢を、地上に上がった火の手が映し出す。

 蠢くその群れは全てが、人間に換算すれば一騎当千と言われるほどの力を持った魔族の群れ。

 敵うわけがない。

 勇者の力を授かって召喚され、王から「そなた一人で一万の兵に匹敵する力を持っておる」などと持ち上げられた。一万? たかだか、魔族十匹だけじゃないか。

 

ーーGURRRAAAAAAAAAAAA!!!


 響き渡る轟音……いや咆哮だ。西の空から飛来したそれが、王都の端を焼いていた。

 ドラゴン。遠くからでもはっきりと分かる巨体に赤い肌。ファンタジーの代名詞が、口から吐き出した火炎で街を焼きつくしている。そしてそのまま巨体に見合う、巨大な羽を羽ばたかせてこちらに向かってきた。


「あ……」


 かららん、という乾いた音に振り向けば、同じく召喚された、鎧に身を包んだ戦士風の男が、口を半開きにしたまま虚ろな目をドラゴンに向けていた。足元に落ちた国宝の剣が、乾いた音を立てたのだろう。


「む、無理だよ……あんなの勝てっこないよ!!」


 唇を震わせながら叫んだのは右隣に立っていた少女。こちらは魔法使いのようなローブに、大きな宝石の嵌めこまれた杖を抱きながらゆっくりと、うずくまるように座り込んでしまった。


 勝てっこない。

 確かにそうだ。


 城のあちこちから上がっていた兵士の声も、今や建物が破壊される音にかき消されてしまっている。上空の魔族を狙っていた矢も魔法も、ほとんど視界に入らなくなった。


「ねえ……どうしようか」


 左後ろからの女性の声に振り返れば、微笑みを携えて神官風の格好をした彼女が立っていた。その笑みからは諦めしか読み取れなかった。


 何も言わずに前を向き直す。ドラゴンはもうまもなくこの城に到達するだろう。


「なぁ、みんな」


 俺はつぶやく。


「俺はただ死ぬのは嫌だ」


 後ろからみんなの視線を感じる。今日召喚され、初めて彼ら出会い、夜を待たずに魔族の襲来を受けた。召喚されたその日に強制死亡イベントなんてクソにも程がある。この世界に、俺達を連れてきた神がいるならば、俺は恨む。恨んで恨んで、幽霊になってでもその神を殺してやると誓う。

 強制死亡イベントだとしても、一矢報いたい。可能ならば全滅くらい回避したいと心の底から思った。


「どうにもならないかもしれないけど、俺は行くよ。みんなは……どうする?」


 ぐるりと体ごと振り返りながら問いかける。驚いたような顔の少女、目を泳がせる男、伏せていた目をこちらに向けた女性。女性だけは、その目に力を宿していた。


「行きましょう。世界は救えないかもしれないけれど、せめて、少しだけでも」


 俺は微笑んで、彼女に手を差し出す。彼女はその手をしっかりと握り返してきた。そのまま俺は飛行魔法を発動させ、ゆっくりと空へ舞い上がる。


 残された二人が、悩みを浮かべた難しい顔で見上げてきていたが、俺達は微笑んでそれに返す。


 この時、最後に彼らの表情が絶望に変わったのを俺は確認していなかった。


「さあ、いこう!」


ーー自分に発破をかけるように声を上げ、振り向いた瞬間に視界いっぱいに入ってきた火球が、俺がこの世界で見た最後の光景だった。



□  □



「うーん……つい殺してしまった。この後どうしよう」


 プロットも書かずになんとなく書き始めた物語の、序盤も序盤で主人公を殺してしまい、俺は頭を抱えた。

 なんでそんな展開にしたんだと言われれば、「ついノリで」としか答えられない。今日考え、今日書き始めた物語なので、別段思い入れもないが、こんな話を見せられて読み手にどう受け止めろというのか。

 考えられる展開としては、神と出会って、転生するとかだろうか? ああ、いやそれは良いかもしれない。一緒に死んだ女性と転生先で運命の再開を果たす! おお! 王道展開だな!

 なんとなく先の展開が思い浮かんだのでノリノリでそれを打ち込んでいく。


 だが、ふと手が止まった。

 この話は、果たして「面白い」のか?


 王道展開と言えばそのとおりだろうが、逆に言えばもう先が見えるから飽きられているのではないか? 読んだ人たちが「またこんな話か」と呆れてそのまま読むのをやめてしまうんじゃないか?

 そんな思考がぐるぐると頭のなかを駆け巡り、今考えていた話さえどんどんと追いやられていく。

 やがて俺はキーボードから手を離し、溜息とともに立ち上がると、その場を離れキッチンへと向かった。


※ ※


 小説家を目指してもう何年経っただろう。


 大学を出たのはいいが、不況に重なった経済を混乱させるような事件で、今や世の中は氷河期も真っ青の就職困難な状態だ。企業も生き残りに必死で、内定は次々と取り消され、同期の中には自殺を図った奴も少なくない。さっき自分で書いていた小説のように、すぐさま死に直面するような絶望ではないが、たしかに真綿で首をしめるような絶望感は世の中全体に漂っていた。


 それに加えて千年に一度とかいうクラスの震災が起こった。俺の家族も含め、失われた命は多く。復興に使われるはずの支援金や国家予算は、横領した悪人たちの懐に消え、死体が回収されただけの荒廃した大地がそこらに広がっていた。


「はー……」


 再びため息。冷蔵庫のドアを開けるも、物は少ない。

 既に三回忌もすんだというのに、相変わらずスーパーに並ぶ物品は少なく、食品の価格はうなぎのぼりだ。バイトでなんとか食いつないではいるが、ニュースでは輸入しようにも、海外でも似たような災害が多発していて全世界的に食糧難になってきているらしい。


 自宅の庭や空き地に畑をつくろうとしたこともあったが、津波による塩害のせいか作物は実らなかった。いや二年も経てば雨や風で塩も抜けそうなものだが、それでもなかなか難しいということは他に何か原因があるのだろう。今や内陸部に食料生産は集中していた。


 逡巡の後、俺は何も手に取らずにドアを閉め、横に並んだコップを手に取るとシンクの蛇口から水を汲んで一気にあおった。

 冷たい水が喉を通り、心地良い。

 気持ちを切り替えるが、まだモヤモヤとした考えは消えてくれない。


 いつもだ。

 いつもあんな考えが俺の脳を苛み、物語の途中で筆を折ることになるのだ。


 未だに一本も書き上げていない俺に、友人たちは諦めて別な道を探すようにたしなめてくる。

 だが俺はそのたびに首を振ってきた。今更俺がまともに仕事出来るようには思えなかった。そもそもが就職難だ。さらに震災をまともに受けたこんな片田舎ではどうしようもない。


 三度目のため息を漏らす。

 もはや物語は頭を離れ、物語が面白いのかどうかという思考も追いやられ、見えない将来への絶望感が頭を支配する。

 遺された家の、キッチンの壁に背を預け、俺は再び水を飲んで四度目のため息を防ぐのだった。


□  □


 夜。

 夜のはずだ。

 あの後、ふて寝して起きたのが22時ころ。トイレに行って、キッチンで水を飲んで、部屋に戻ろうとしていたのを覚えている。


 部屋のドアに手をかけ、開けたところから、どうやってここに来たのかという記憶が一切なかった。


 白一色の部屋だ。あまりの白さに部屋の大きさも測れない。そして壁自体が発光しているのか、天井の影も一切できておらず高さも測れない。それでも空気の流れが一切ないところから、ここは部屋なのだろうと思った。


 映画で怪しげな装置がぽつりと置かれたこういう部屋を見たことがあるなぁと思いながら首を回すと、先ほどまで何もなかったはずの場所ーー俺の三歩ほど離れた隣に一人の男が立っていた。


「やぁこんにちわ」


 特徴の掴みづらい顔をほころばせ、彼は言った。驚きに返事を返せずにいると、彼はそのまま続ける。


「悪いんだけど、君の命を預かったよ。どのみち遠からず君はーーいやあの世界は『終わって』いたからね」


「ーーは……?」


 命は預かった? 誘拐犯のようなセリフに俺はますます困惑した。気にもとめない風に、彼はさらに続ける。


「君は今から別な世界に旅立ってもらうよ。それこそ、君がさっき書いていたような異世界召喚とか異世界転生さ。好きだろう? ああ、召喚と転生、どちらがいい?」

「ま、待ってくれよ」


 弱々しく、かすれかけた声を絞り出す。


「何かな?」


 言いたいことはわかっている、そんな顔を向けてくるが彼は言葉を続けない。俺の言葉を待っているんだろう。意を決して俺は思ったことを口に出すことにした。


「あんたは……神様?」

「そう、わたしが神さ!」


 むふーと大きく鼻息を吐きながら彼は胸を張る。


「いやいや、小説の中の話じゃないんだから……ここはどこだ? 俺に何の用だ?」


 俺の言葉が気に入らなかったのか、彼は眉をひそめ、


「おや? 物書きってのは変なところでリアリストだから困るよね。現実を受け止め給えよ。ここはあの世で、君は今からどうするかの岐路に立たされてる。

 ああ、残念だけど拒否権はないよ? 君には今からある世界に行ってもらう。力をもった存在としてね。神の使徒って言い方はちょっと違うかもしれないからしないけど、とにかく君にはその世界を救って欲しいのさ」

「いやいや、いやいやいやいや。信じられる訳無いだろそんなこと」

「んー、じゃあこれを見てごらん」


 と言って彼は右掌を上向きに胸の前に持ってくる。と、その上に映像が現れた。VRのような平たい画面には、俺が住んでいた街が映しだされていた。


「なんだ……これ」


 狂気。怒り。悲しみ。その映像には暗い感情が渦巻いていた。傷つけ、奪い、殺し、皆が争っている。


「食糧難は改善されることなく、悪化の一途を辿ったよ。経済の混乱も収まらず、もちろん復興なんてするわけもなく、人々は疲弊した結果がこれさ。君の住んでいた街だけじゃない。全世界的に起こっていたことなんだよこれは」


 そう言って、同じような画面を次々と浮かべる自称神。写っている場面や人種がちがっても、どこも同じように争っていた。


「なんでこんなことに……」

「原因は……今は話せない。でもこれと同じような運命を辿ろうとしている世界があるんだ。君にはそこを救ってもらいたいんだよ」


 初めて見せる笑み以外の表情ーー沈痛の面持ちを見せられ、俺は息を大きく吸って、吐いた。何故か、この自称神は嘘を言っていない気がする。そういう風に仕向けられているのかもしれないが、今の俺にそれを判断する方法は無く、そして、拒否権もないのだ。


「俺ーー私はどうすれば良いのでしょうか」


 相手が神だとして口調を変えてみたが「しゃべり方は気にしなくていいよ」とはにかまれる。


「拒否権はないなんて言ったけど、向こうの世界にいったら好きに行動してくれていいよ。君なら、それが世界を救うことにつながっていくと思うから」


 今まで見てきたからね。と付け足され、俺はため息にならないほど小さく息を吐いた。

 暗に、「世界の危機が迫ってるってわかってて放おっとけ無いのは知ってる」と見透かされた。いや、どうすればいいのかと聞いた時点で答えを言っているようなものか。


「じゃあ説明するね。君が行く世界と、君自身のことを!」


 それが俺と神との出会いだった。

次回は世界観説明と主人公の紹介です


4/20 読みづらかったので改行を増やしましたがどうでしょうか

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