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モンスターの悲劇

「す、すいませんホントにごめんなさい、どうぞお許し下さいっ……!」


手を何本も持つ傷だらけのモンスターが、必死に命乞いをしていた。それはもう額を地面に擦りつけながら。そのモンスターの先にいるのは、やはり彼だった。


「なぁルイス、そろそろ許してやっても……」

「そうじゃルイス。何も半殺しのままにしておくのは可哀相だろう」

「ラリアさんそこですか!!」


怒りでモンスターをボコボコにしたルイスを、ガーバとラリアはなだめていた。そしてクラヴィスはモンスターにトドメの一撃をくらわそうとしたが、それはルイスに邪魔された。


「クラヴィスさん、まだ殺るのは早いです。もう少し痛めつけ苦しめてから、僕自らトドメを刺します」


ニッコリ微笑むルイスに、クラヴィスは背筋が凍るのを感じた。彼が敵でなくてよかった、と内心安堵したが、だからと言って完ぺきに仲間でもないのでやはり恐怖は消えてはくれなかった。


「さて、モンスターさん。次は何がいいですか?凍てつく氷に包まれたいですか?それとも逆にあぶり焼き?何なら……」

「本当にごめんなさい!これ以上ないって程心の底から申し訳ありません!!どうか!命だけはっっ」

「あはは、面白い事を言いますね。まさかあなた、僕の大事な、それこそこれ以上ないって程心の底から大事にしていた水晶をぶっ壊しておいて、ただで済むとでも?あー可笑しいですね」


まったく許す気配を見せないルイスは、今までに無いほど至極頭にきていた。ガーバ達はただその様子を見守る、というよりかいっそ見ぬフリをしようと思うほどだった。


「か、必ず!必ず弁償いたします!!この先に洞窟がありまして、たしかその中に水晶がっ」

「あれはただの水晶じゃないんですよ、低脳モンスターさん。僕の魔力を感じなかったんですか?あれは僕が一年かけて作った物なんです。それはもう僕の知力と魔力を、全身全霊で注ぎ込んだものなんです、よ?」


いつの間にかルイスはモンスターの胸倉を掴んでゆすっていた。ボコボコにされていたモンスターは何の抵抗も出来ず、ただルイスに甚振られているがままだった。

なぜこんな状況になっているか順に話すと、ルイス達はモンスターの作った無限ループにはまり、この空間の主であるモンスターを見つけ出し、叩かなければならなくなった。老魔術師と呼ばれるラリアの知識と経験によってその辺は滞りなく解決。そしていざモンスターの戦いの時、そのモンスターはルイスの胸に下げられていた綺麗な水晶を破壊してしまった。もちろんモンスターを含めたルイス以外の仲間も、それは戦況に大した影響などないものと捉えた。しかし、水晶を破壊されたルイス当人は怒り心頭。他の三人を黙らせ、一人でモンスターを叩きのめしたのでる。


「なぁルイス、あの水晶そんなに大事なのか?」


恐る恐るガーバが質問する。それに対してルイスは、モンスターへのささやかな攻撃を止めずに答えた。


「うん。本当に、僕も自分で驚くほど大事にしていたものなんだ。しかもあれは一朝一夕で出来るものじゃない」


心なしか、ルイスの顔は悲しそうだ。

するとそこに、空から一人の、綺麗な白い羽を持つ女性が降りてきた。


「あらあら、随分な事になってるわね」

「イーラ様!!」


イーラと呼ばれた女性が背中から生えていた羽をしまうと、ルイス達は瞬時に身構えた。


「いやだわ、大丈夫よ。別にあなた達に危害を加えようって気はまったくないんだから」


女性は和やかに笑いながら、ルイスにボコられたモンスターに近づき、傷を治した。モンスターは嬉涙を浮かべながら、隠れるようにその女性の後にまわった。


「クラヴィスさん、もしかして彼女が“伝説の”……」


ガーバは一瞬嫌な汗をかいた。


「私はあなた達の探している“伝説の召喚獣”じゃないわよ」


クラヴィスが判断を下す前に、女性が答えた。


「というか、そもそもそんな者存在しないわ。まぁあなた達の“伝説の召喚獣"の定義がよくわからないから、ハッキリとは言えないけど。もし仮に、この森で一番強い者のことを指すのなら知ってるわ……彼の所まで案内しましょうか?」


相変わらず彼女の表情は、穏やかだった。


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