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森の住人・パート2

「っざけんなチクショー!!」

「落ち着こうね〜、ベルクス」


シュワルガの表情は一般的には笑顔というものだが、目は笑っていなかった。決して。


「エルラン、ちょっと耳ふさいでてねぇ〜」


シュワルガは愛しのエルランにそう言うと、まだ怒りの冷めぬベルクスの方を向いた。


「なぁ、そういうのはエルランがびっくりするから止めてくれるかなぁ?でなきゃいくらザイドさんの弟子といっても俺の召喚獣で一思いに、って事もありえるからさ。ザイドさん達には上級モンスターにやられた、とでも言えば普通に通るだろうし。ね?命は大切にしようねぇ〜」

「……わ、悪かった……」


シュワルガの殺気溢れるセリフにさすがのベルクスもたじろいだのだった。


「よーし、いい子だね〜。エルラン、もういいよ〜」


シュワルガにいつものユルイ笑顔と声が戻りベルクスは胸をなで下ろした。これだから笑顔振りまいてるヤツは、などとルイスを連想しながらなで下ろした胸の中で舌打ちをした。

だが、ベルクスの気が立っているのも一応理由というものがある。彼ら三人はさっきから似たような場所をグルグルと回っているのだ。元気だったエルランもこの状況に疲れを見せている。


「ねぇねぇ、絶対私達変な罠にかかったんだってーどうしよう……」


肩を落とし沈むエルラン。変な罠はもちろんの事、ザイド達と別れてしまった事もその沈みに拍車をかけていた。

そして三人ともその場に座り込んでしまった。


「ザイドさん達大丈夫かなぁ……」

「アイツ等なら平気だろ。むしろ今の俺達の状況を心配すべきだ」


ベルクスのもっともな意見にまたしてもエルランは肩を落とす。そんな彼女の隣にシュワルガが寄り添って優しく頭をなでてあげた。


「だ〜いじょうぶ。俺がいるし。一応ベルクスもいるし」

「オイ、一応って何だよ一応って」


眉をピクリと動かし反抗を試みるベルクス。


「だってベルクスの強さがどれぐらいかわかんないし。まぁザイドさんの名前に傷をつけるような事だけはしないでね〜」

「……うるっせーよこのロリコン野郎……」

「え?今何か不躾な事言ったぁ?」


いや何も、と体を小さくしてベルクスはシュワルガから目をそらした。そして、この地獄耳野郎、とまた胸の中で悪態をついたのだった。いつも強気に態度も言葉も悪いベルクスだが、このシュワルガという男は彼の人生の中で初めて出会った“ちょっと怖い人”と位置づけられた。


「……(コイツ、全然目が笑ってねーよ)」


もちろん普通の人間らしい笑顔の時もある。だが時々、ひどく人間的でなくなるのも感じていた。


「……ハァ。にしてもマジどうっすか?このままじゃどうにもなんねーよ」

「確かにね〜。どうしようね〜」


考え込む二人だが、エルランだけは疲れてしまってかシュワルガの腕の中でウトウトしていた。

テメェこんな時に寝ようとしてんじゃねーよ、というセリフはベルクスの喉元で消化された。後が怖いからであるのは言うまでもない。


「あ、じゃあこんな時は年の功。オセに聞いてみようか?」

「オセ?」


ベルクスが首をかしげる。


「俺の召喚獣。出て来いオセ〜」

「んなやる気のない呼び方で召喚獣って出て……」

「今度はなんだ。また面倒な事か?」

「……出たしっ!!!」


あまりにあっけなく簡単に出てきた一見豹のようなシュワルガの召喚獣。ツッコミどころ満載だが、まずは状況打開を優先しなければならないのでベルクスはそのツッコミも喉元辺りで消化した。


「なんか変な感じなんだよね〜どうすればいい?」

「……知性をまったく感じられない質問だな。まぁだいたいの察しはつくが、こんなくだらない事のために呼び出したのか?」


オセは周りを軽く見渡しながらそう言った。


「くだらなくないって〜。俺達ヤイゴの森に伝説の召喚獣とりに来てるんだし」

「……バカだとは思っていたが、まさかここまでとはな。まぁ死なない程度に頑張れ」


シュワルガが自分の召喚獣に見捨てられている光景をみて思わずベルクスは噴出してしまった。


「こら、笑うとこじゃないよ〜」

「だ、だってよ、オマ、自分の召喚獣にっ」


笑いを堪えながら話すベルクスだがシュワルガは特に気にはしなかった。そしてこんな状況にも関わらずエルランはいつの間にかスヤスヤと寝入っていた。


「で、どうすればいいのこの状況〜?」

「魔術師がいないのならムリだろう。諦めろ」

「そ〜いう事言う?エルランがいるんだよ〜?何とかしてよ?」


問答無用の命令にオセは深く長いため息をついた。


「まったく、エルランが絡むといつもこうだな。……自分で異常だと思わないのか?」

「何が〜?」

「……まぁいい。少し行って来る」


オセは三人から離れ森の中へと消えていった。




オセが三人と別れた頃、三人をこのおかしな空間に閉じ込めた上級モンスターはため息をついていた。


「あーぁもうどうしよう……面倒だなぁ。だいたい何?伝説の召喚獣とりに来たとか。ほんっと人間ってバカ……はぁ……」


それほど大きくもない湖にまたため息を落とすこのモンスターは、どちらかと言えば外見は人間的だ。モンスターが人間の姿であるところを見るとよほどの実力の持ち主である事は伺えるが、ただ彼から放たれるマイナスのオーラがあまりに強すぎてただの“怨霊”のようにも見える。


「はぁ……ボク嫌なんだよね、静寂を破られるのが……普通のやつ等ならこのまま餓死とかで静かに死んでくれるのに、何だってあの召喚術師はあんなもの呼び出して……嫌だ嫌だぁ。アノ召喚獣絶対すぐボクのとこにくるよぉ……」


こんなことをブツブツと言っている内に、彼は何故だか泣き出していた。と、そこに噂の彼がやってきた。


「おい」

「うぇ?」


モンスターが顔をあげると豹が一匹。あまりに早すぎる彼の出現にモンスターは思わず、


「う、おぇぇぇえ」

「吐くか!?」


先程三人を映していた湖に朝食べた草花を戻してしまった。オセはあまりの予想外の事に若干焦った。そしてあまりの上級モンスターの虚弱っぷりに彼の中で思いやりの気持ちが生まれた。


「だ、大丈夫か?」

「あ、ご心配なく。一日一回はしちゃうんで」


青黒いモンスターの顔に弱すぎる笑顔があるのを見てオセは心が痛んだ。別にオセは弱いものイジメが大好きなわけではない。だが、一応の主人であるシュワルガの命令は遂行しなければならなかった。


「弱っているところ悪いが、あの三人をこの空間から出してもらえるか?」


極力の腰の低い物言いでオセはたずねた。しかしモンスターは首を縦には振らなかった。


「それは、出来ない。でもさ、ボクとしてもあんまりこう、騒がしいのとか嫌だから、ここは話し合いを提案するよ」

「?」


彼が言うにはこういう事だ。

上級モンスターの中でも特に力の強いものは今彼がしているように無限ループの空間を作ることが出来る。誰しもが持てるわけでなく、選ばれたもののみの力で、この力は人間達を森の奥に入れないためのものだという事だそうだ。だから、もし森を去るというのなら三人を出すが、そうでないのならこのまま永遠にさ迷ってもらう、という事だ。


「お互いのためだよ。だから、あの人間達を説得し……」

「それはムリな話だ。交渉決裂だな」


そう言うとオセはモンスターの喉元目がけて地を蹴った。普通の人間が見たのならオセが一瞬にしてどこかへ消えてしまった風にしか見れないだろう。


「ちょっ、と待って!」


モンスターは何とかその身を宙に飛ばしオセの牙から逃れた。そしてもう一度話をしてみようと口を開こうとしたその時、


ガグッッゴリリッ!!!


モンスターは一瞬何が起こったのかわからなかった。足元にある湖を見れば、自分が悪魔達に覆われ食われているのだと薄れていく意識の中なんとか理解したのだった。






どうもこんにちは、anaです。

桜とそよ風の素敵な季節になってきました。桜はもうチリぎみだけど。まぁそこは気にせず!


かなり久々の投稿です。申し訳ないです、あまりの不定期更新。


そして、続けて読んで下さっている方、初めての方、本当にありがとうございます。まだもう少しこの“届くものの夢”、続く予定なのでどうぞお時間、お暇ございましたら読んでやってください。



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