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変人からの贈り物

ビビハとハンディーラがしのぎを削っている中、間にあるルシャントはただ静かだった。

そして今日も“笑う門”にはいつものメンバー……プラス変人がいたのでした。


「店長〜いい加減旅にでてくださいよ。一週間もいられるなんて、正直キツイです」

「いやいやいや、お前バイトじゃん?何でそんな上からなんだ?」


ガーバは思いっきり理解不能な顔をしている。


「そっか、今日初めて会うんだっけ。あの人はそれはもう類稀なる変人でね。まぁ見てれば分かるよ」


ガーバと、それにルイスも昼食を終えて少し店内の彼を見ることにした。


取りあえず目を引くのはあの奇抜な衣装だろう。やたら長く黒い帽子に腰まであるさらさらの青い髪。耳や首、腕にはジャラジャラとアクセサリーをつけ上半身は……気持ち悪いまでに綺麗な筋肉を見せるタンクトップ。そして下は赤やら黄色やらの原色がうるさいスカート。


「……ねぇウィル。あれは、人?」


ルイスは思わず聞いてしまった。足元に座っている白いタイスのハクセンはすやすやと眠っていた。


「そうだね〜。人の定義がもし、考える葦ならきっと彼もギリギリ……」

「一緒だと思うと無性に切なさがこみ上げてくるな」


ガーバも店長を見捨てました。

店長は何やら手に本を持っています。しかし眠っているので関係ありません。しかしガーバは好奇心で彼が何を読んでいるのか確かめに近寄ったのですが、


「スダーーージッッ!!!!」

「うおっっ!!!!」


突然店長は目を覚まし立ち上がりました。さすがのガーバも腰を抜かし床に倒れてしまいました。


「ははっ、ガーバはジジィみたいだね」


ウィルお得意の嫌味つき笑顔が満開です。ちなみに、店長が奇声を発したり、意味の分からない行動をするのは彼の日常です。変人です。


「おや?少年、そんな所に座り込んで一体どうしたというのだ?そうだ!!そんな腰抜けの君にこの素晴らしき本を贈呈しよう!!」

「は?」


それだけ言うと店長は手に持っていた本をガーバに渡し、スキップで店を出て行きました。


「……スダージ?どっかで聞いた事あるような……」


ルイスは店長の叫んだ言葉をなぜか受け取りました。基本的に彼は真面目なのです。

ガーバは渡された本を持って二人の方に戻り、ペラペラとめくりました。


「何の本〜??」

「あぁっと……ん?」


ガーバはまたペラペラとめくり、一度本を閉じてまた初めから本を見ました。


「……何語だ??」

「「え?」」


ルイスとウィルはガーバの持っている本を見ようと身を乗り出しました。


「……あ、変人語?」

「んなわけあるか」

「これ、キリエラ語だ」


唯一その本を理解できたのはルイスだけでした。彼がまだ魔術大国、イリューマにいた頃によく見た文字です。


「古代文字の部類でこの系統は第3種の魔属語だよ…………。すごい、この本全部がキリエラ語だ……」


ルイスは目を輝かせました。まるで新しいおもちゃを与えられた子どものようなので、ウィルとガーバは優しい眼差しで彼を見守る事にしました。


「キリエラ語はその発音、文字、文法、どれをとってもどの魔属語よりも綺麗でそれ自体が宝石のようだ、って言われてるんだ。僕もイリューマである封印術を解読してた時に少しこれに触れたけど、やっぱり他の魔属語とは違かった。何がどう違うかって言われてもうまく答えられないけど、とにかくこのキリエラ語っていうのは僕等魔術師からみたら一つの宝石の……」

「わ、わかった、そうだな!すごいよな!その、キリエラ語とかいう……」

「すごいってものじゃないよ!キリエラ語はその洗練された美しさゆえに長年色んな人間に翻弄されてもう失われた言語の一つと言っても過言じゃないんだ。その点では第1種に入ってもいいんだけど、でもそうなる前にすでにある魔術師、あ!モビウスっていうんだけどこの魔術師もすごくって……」

「ルーイス!話ずれてない?」

「あ、ごめん。そう、だから第1種に入ってもいいわけだけど、そのモビウスに全て解読されてその資料が確かイリューマに続く魔術大国シャバリに保管してあるんだ。だからキリエラ語は第3種になってるんだけど……」

「「ルイス!!」」


ウィルとガーバの声が重なりようやくルイスの雪崩のようなキリエラ語講座はとまりました。まさかここまでルイスが熱をもって話すなんて想像もしていなかった、というか想像も出来なかった二人は優しい眼差しなんぞと言っている余裕など直ぐになくなり、驚きと同時にどっと疲れがでたのでした。


「どうしたの?二人とも」

「こっちのセリフだ」

「右に同じく」




結局その本はルイスが持ち帰りました。もちろん所持者の店長の許可などはいらないのです。




「意外。ルイスってあんなに熱くなれるヤツなんだ」


“笑う門”に残ったガーバはお酒を片手にウィルと飲んでました。ケンカするほどなんとかというヤツです。


「ほんと。人って意外性に満ちてるね」







続けて読まれてくださっている方、初めて読まれる方、ありがとうございます。

ホント最近(むしろ今?)ちゃんと丁寧に小説かこうよ自分、と思っております。これからも「届くものの夢」を読んでいただけるよう、精進しようと思っております。なんとなく(オイ)

ので、これからもよろしくお願いいたしますm(__)m↓

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