クラス対抗魔術戦・A2
「さぁ!皆さんお待たせいたしました!ついに魔術戦の決勝です!
三連覇を狙うエメランド、対するルービはトップの座を狙っています!
お手洗いは今のうちに済ませておいてください!」
張りのあるアナウンスが闘技場中に響き渡る。雲一つない晴天。しばらくすると両クラスの代表選手が、木も岩もないだだっ広いグラウンドに出てきて、観客の生徒達のざわめきが一気に最高潮に達した。
それぞれが一列に並び、礼をして各々の持ち場に着いた。勝敗はチームのリーダーが首に下げているクラス色のビー玉を先に奪い取ること。
両チーム同じひし形で陣を取っている。
エメランドはルイスを先頭にその後ろを右からガートン、ジョシュア、メイア、そしてその後ろにリーダーのハルズ。
ルービは昨日の背の高い男を先頭に後ろの三人の真ん中にリーダーを置いて、その後ろにもう一人。女はいない。
闘技場のざわめきは消えている。そして選手達は互いに睨み合って重い空気が広い会場を流れる。
「はじめ!!」
その声と同時にジョシュアとハルズが術を唱えを始めた。対するルービは二列目の両端の少年と先頭の男が唱え始めた。一拍遅れて他の選手が全員術を唱え始めた。
魔術師というのは大抵魔力が備わっている杖を持っている。そうでなければうまく術を成功させることが出来ず、また体への負担が大きくなってしまう。ただしレベルの高い魔術師はこの助けを借りなくとも自由自在に魔力を操ることが出来る。更に言えば、術を唱える、という補助力も必要となくなるが、そのレベルの魔術師は世界には片手で数えられるだけしかいない。
「インクリース!」
最初に術を発動させたのはジョシュアであった。得意とするのは補助術。今のは魔力に加えて身体能力全般をあげる術である。逆はディクリースという。
「フレイム!」
ルービ側はいきなり炎系の攻撃魔法を放ってきた。しかしすかさずハルズが防御術を発動させる。
「ヒュージ!」
炎は先頭のルイスのところまで届かなかった。その間にルービ側もインクリースで基礎力をアップさせた。
残りの選手の魔法がそれぞれぶつかりあって大きな爆音と煙を起こした。
「ブロウ!」
ルービ側の風系の魔法で煙は綺麗になくなっていく。
「なぁんと早くも全選手がぶつかり合っています!!ハルズ選手の防御術の速さ、そしてそれに負けないルービのオリラン選手!」
「二人とも防御術に長けていますからね。これはスタミナ対決でもあるかもしれませんね」
「ご紹介いたしましょう!本日は解説者に炎系魔法を教えているユンロー先生にお越しいただいています!」
「どうも、それよりやはり勝敗の鍵は先頭に立つルイスと、ウェイダでしょうね。でもこれはチーム戦ですからそこをよく考慮して……」
「さすがは先生!さぁみなさん!瞬きすらもったいないこの決勝戦、最後まで応援よろしくお願いします!」
会場はまた盛り上がり始めた。
観客とは反対に選手達は冷静に次の行動を考えている。ハルズとオリランは少し肩を揺らしていた。それもそのはず、攻撃魔法が来るたびにそれぞれ防御術を発動しなければならないのだ。
「結構強い魔法はなってくるからキツイな。早めにケリつけてくれよ」
ハルズが苦笑いでそう言った。
「じゃあ俺たち全員補佐にまわるか〜。後はよろしく、ルイス」
「ガートンさん、単純な破壊力だけで言えばあなたの方が上です」
「破壊力だけの話よ。とにかくルイス、ガンガンいっちゃいなさい!」
「メイアさんまで……」
軽く肩を落とすルイスだがすぐに目の前のウェイダに眼をやった。まだまだ余裕を見せている。
決勝戦なだけに個々の魔力が強いので早めにケリをつけるのがいいと考えたルイスは一度深呼吸をしてから、
「補佐をお願いします。相手のリーダーのみを狙います」
と言うとすぐに術を唱え始めた。後ろの四人がうなずき、身構えた。