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再会

いつも通り図書館の四人用の机を一人で使っていたルイスのもとに、懐かしい顔が現れた。


「見つけたぞ。久しぶりだな」

「テムイ!」


ルイスは思わず声をあげてしまい、静かな図書館によく響いた。


「うっせーんだよ。ったくガキじゃあるまいし」

「ベルクスも…よくここがわかったね」


ルイスは机を片付け、二人に席をすすめた。


「ユフィールさんっていう美人に教えてもらったんだ。それより何調べてんだ?」


テムイは重ねてあった本を手にとりパラパラとめくっていく。


「そっか。後でお礼言っておかなきゃ。今は封印術についてちょっと研究中なんだ」

「へぇ〜。お前が研究するなんてよっぽどレベル高いんだろうな」


ベルクスは嫌味っぽくいう。二人とも変わらないでいることに、ルイスは微笑んだ。


「てめっ、何ニヤけてんだよ。気持ち悪い」

「別に。それよりちょうどいい時期に来たよ。そろそろ申込締切なんだ」


ルイスは身支度をし始め、二人を連れて外へとでた。


「ルイス、やっぱりお前の目的ってイルハウ大会か?」

「そうだよ。よくわかったね、さすがテムイ」


ルイスにとって慣れた王宮への道を三人は歩いていく。


「お前さ、バカだろ?世界中から参加してる大会だぜ?」

「わかっててここまで来たベルクスもバカなんじゃない?」

「あぁ!?てっめぇ相変わらずの根性だなおい!」

「あんまり道端で騒ぐな。はずかしい…」


一年前までは日常的だった三人のやり取り。ルイスは妙に嬉しかった。ただ唯一変わったのはルイス自身。前ならこんなやり取りを楽しいなんて思ったことなど微塵も無かったのに、今は楽しく感じていた。

王宮の少し手前で受付はなされていた。大広場だというのに、申込をする者たちでそこはごった返していた。


「すげぇな…今日中にあの受付までたどり着けるか?」

「大丈夫だよ。人がいっぱいいるけどスムーズに進んでるから」

「というかルイス。俺達は強制参加か?この大会死傷者続出なんだぞ?」


テムイの質問にルイスは笑顔で、


「当たり前じゃん?もうマナにも言ってあるから今更引けないし」


と答えた。


「マナ?誰だよそれ?」


数秒おきに一歩ずつ進んでいく列だが、受付までの道のりは遠い。しかも列に並んでいるのは皆大人ばかりで、ルイス達は周りから少なからず注目されていた。


「イリューマのお姫様だよ。今僕が魔術教えてる」

「は!?お前そんなことしてんのか??」

「まぁね」


ルイスの得意げなものの言い方にテムイは疑問を持った。何に対しても満足できないでいたあのルイスが、お姫様一人にこんな態度を示すと言うことは…


「へぇ。ルイスそのお姫様といい感じなんだ?」

「え?いや、別にそういうわけじゃないよ。ただ向こうは僕のこと好きだけど」

「何でそんなのわかんだよ?」

「ベルクスには説明したってわかんないよ」


からかうように話すルイスにベルクスはまたケンカごしになったが、それはうまくテムイに制された。


「代表者のお名前をここに記入してください。それと残り二人の方のお名前はこちらに」


ようやく目的のところにたどり着き受付の人に紙を渡された。さらさらと書いてまたその紙を戻すと今度は銀製の番号札を受け取り、受付は終わった。


「簡単だな…こんなんでいいのか?」

「深く考えたってしょうがないよ。それより、僕の家に案内するよ。二人とも長旅で疲れたでしょ?」


ルイスのこの言葉に、二人は動きを止めた。


「?どうしたの?」

「お前…ほんとにルイスか?」


ベルクスはルイスを指差しながら尋ねた。


「そうだけど…何?」

「お前…変わったな…それとも熱でもあるのか?」


テムイはルイスの額に手を置き、もう片方の手はルイスの脈をはかっていた。


「…なんなら一発特大の灼熱玉をだすけど?」


ルイスは怖いほどの笑顔を二人に向けた。すると二人とも黙って静かにルイスの後についていったのだった。

あまり時間をおかず、三人はルイスの家に着いた。ベルクスとテムイはまずその外観に驚いた。たかだか十六の子どもが住むにはあまりに豪華だったのだ。


「何やってるの?早く入んなよ」


驚きを引きずりながら二人は五階のルイスの部屋までいった。部屋も外観に見合うだけのかなり良い部屋だった。と、そこに一頭の白いタイスがいることにテムイが気付く。


「へぇ。タイスなんて持ったのか」

「ん?あぁハクセンね。持ってるっていう表現は合ってないよ。いてもらってる、っていうのが正しい」

「ほぉ、少しは成長したか」

「えぇ。それなりには」


テムイはルイスとハクセンというタイスを交互に見た。何度見ても、普通に会話をしている。この異常にベルクスも嫌でも気付かされる。


「いや、タイスは喋らねぇだろ」


ベルクスの虚しい一人ツッコミが入り、ルイスはようやく今の状況を把握する。


「あ、ハクセンって古代獣なんだって。耐魔術の能力も持ってる」


ルイスの説明にテムイは興味深そうに頷き、ベルクスはテンションをあげた。


「すっげーな!俺も欲しい!!」


ベルクスはハクセンに近づき目を輝かせた。


「古代獣ってそうそういないみたいだよ。ま、日ごろの行いがいいから僕は出会えたっていうか」

「キモイんだよ…てめぇは黙ってろ」


ベルクスとルイスの間に怪しい空気が流れ、テムイはため息をついた。一体どれだけこの一緒にいて疲れる二人に付き合えばいいのか、と。


三人が会って程なくして、イルハウ大会が開催された。参加数は軽く五千組を超えていた。大会に参加中は特設されたホテルに泊まらなければならず、三人はこれから約二ヶ月続くこの大会のため、適当な練習をして臨んだのだった。


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