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F*

眩しくて、熱かった。


この世に存在した瞬間から、全てを知っていた。自分が何者であり、成すべき事はなにか、そしてその結末も。



彼はルイスという、黒髪の似合う男の子だった。彼に会ったのは偶然ではなく、必然。会うべくして会った。


彼は好奇心が旺盛で、私の事をおもしろいお化け程度に思っていたらしい。頭が良いので少したってから私のことについて短く話した。彼にとっては私の正体はあまり興味がわかなかったらしく、軽く頷き、それ以降私について聞いてくることは無かった。


彼の成長は目ざましかった。しかし、やはりまだ子ども。覚えは早いが頑固なところがあり、両親とはよく衝突していた。


夜になると彼は決まって屋根へ上り、星空を眺めていた。


『すごく落ち着くんだ』


この時だけは、無防備な彼を見れた。


月日は流れ、彼は一人、旅に出た。私は不安だった。しかし、いずれこうなることは分かっていた。途中、様々な人に出会い、彼はまた成長した。


彼は今も成長を続けている。これから先、止まる事はない。分かっている。


分かっているのに、今私の中で何かが叫んでいる。


これだけが分からない。


一体何なのか。


ハクセン、という古代獣に相談をした。私がこの世に存在して、初めてのことだった。彼はこう答えた。


『自我だろう』


よく、意味が分からなかった。私という存在はすでにあり、ゆえにそれを自我というはずなのに、今更自我がどうのと言われても理解できなかった。


この鉛のようなものは未だに消えない。



私は今まで自分と同じ種族に出会ったことは無かった。理由は知っている。だから特に寂しいとか、会ってみたいとは思わなかった。


けれどある日、彼が図書館から帰って来た時、彼は不思議な老人に出会ったことを話した。


直ぐにわかった。その老人の正体も、その後ろにいる私と同種の存在も。


会いたいと、思った。もしかしたら、この先、会うことも出来るかもしれない。けれど分からない。これも分からない。



今まで幾度となく彼に肝を冷やされた。しかし、この時ばかりは本当に、彼を失ってしまうのでは、といてもたってもいられなかった。


それはイリューマのガイラ王子の結婚式でのこと。東のローリアから将軍が祝いにやってきた。そして、彼はスピーチでとんでもないことを言い放った。


『娼婦がお好みとは、いやはやイリューマの行く末が心配ですな』


会場はざわめいた。また嫌がらせか、と思う者もいれば、そうなのか?どうなんだ?、とティーナをちらちら見る者もいた。


その時ティーナはいたって冷静を装っていた。ガイラ王子も。


ざわめきを残しながら式は終わり、将軍は自国へ帰ろうとした。しかし、帰路の途中何者かに暗殺された。


戦争は目の前に転がった。


元々ローリアはイリューマが好かなかった。自分達のしていることに、あれやこれやと文句を言ってくるうるさい国、というのが国民にまで浸透していた。


ルイスはその腕をかわれ、最前線に送られた。サレオス、という旅を共にした男性も彼についていった。そしてハクセン、ダイゴローも。

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