パーティー・L
「(なるほど、イリューマのお姫様ね)・・・」
ぎこちなくではあるが、どこか一生懸命に話をするルイスの隣に座っているお人形のようにかわいい少女マナ。どうやらこのお姫様は自分に気があるようだ、とほぼ確信したあと、ルイスの顔は怪しい笑みをこぼした。
「?どうしましたか?」
「いえ、なんでもありませんよ」
すぐに普段の優等生の笑顔に切り替えた。
「ところで、マナ、って呼び捨てでもいいですか?」
「は、はい!あ、それと、敬語もできれば・・・・」
「わかった。マナはいくつ?」
名前を呼ばれ、ほのかに頬を赤く染めるマナ。十五です、と小さく答える。
「じゃあ僕が一つ上だね」
「はい」
それからはルイスから質問をどんどんしていった。まるでルイスがマナ姫に気があるように。
小一時間ほど途切れることのない会話をし、話はマナ姫の勉強に移った。
「はい、私魔術が全然できなくて・・・」
今までの表情は消え入り、むしろ泣きそうな顔になった。
「・・・・じゃあ僕が教えてあげようか?」
「え?」
マナ姫が顔をあげると、そこには優しいルイスの笑顔があった。
「こう見えて僕魔術師なんだ。それに結構腕もたつ。もちろんマナがよかったら、の話だけど」
どうかな?と顔を覗き込まれたマナ姫の顔はすぐ赤くなる。ルイスはこのマナ姫の反応を少し楽しんでいた。しかし今はそれを楽しんでいる場合ではない。なんとかこの話を承諾させなければ、とガラにもなく焦っていた。
「そ、それは・・・・とても嬉しいのですけれど、私の一存では決めかねます」
何と言っても一国の姫である。しかしルイスはめげずに、さらにマナ姫に近づいた。
「ササラティ、という宿にいるから」
その言葉はマナ姫の耳元で呟かれた。それだけ言うとルイスはマナ姫を置いて去っていった。
一体何が起こったのか理解できていないマナ姫。しばらくして自分の耳元に手を沿え、先程のことを思い出すと、ヘナヘナとベンチに崩れた。
「一体どういうおつもりですか?」
「関係ないよ」
フェイの声には耳を貸さず、ルイスはパーティー会場へと戻っていった。
「あ!ルイス、どこ行ってたんだよ?!」
「ちょっと休憩を。・・・」
見知らぬ女性がサレオスの隣に立っていた。答えを求めるようにルイスは二人を交互に見た。
どうやら出身が同じらしい。しかしふと疑問が浮かぶ。
「ユフィールさんはどうしたんですか?」
女好きとは言え、あのサレオスがユフィールを無視してまで他の女性を相手にしていることが解せないルイスは眉間にシワを寄せた。
「あぁ、ユフィールさんなら他の・・・」
「なんだ、振られたんですか」
ホッとした。まさかユフィールさんを遠ざけたのでは、と一瞬でも思ってしまった。そんなことをした時には一発炎をかましてやろうかとさえ考えていたので、その必要もなくなったので二重に安心した。
「というかそもそもつりあいませんよ」
独り言のようにいつも通り冷たい言葉を放った。すぐいつも通りのサレオスの虚しいツッコみがあるかと思ったが、今日は静かにしている。不審に思い凝視するが、それに気付いたサレオスはあわてていつものサレオスに戻った。