パーティー・S&U
本当に盛大なパーティーである。途切れることのない軽快な音楽。それに合わせて踊る人々。おいしそうな匂いを漂わせている豪華な食事。
だが、今サレオスはそんなきらびやかな周りを感じることはできないでいる。
「・・・・・・・・・(ルイスどこに行ったんだよ!?)」
正装とまではいかなくとも、ラフではない格好をしているサレオスはユフィールを隣に少しばかり居づらさを感じていた。といっても別にユフィールが何かをしたわけではない。ただ自分が勝手に気にしていること。ちらりとユフィールを覗き見ると、目の前の豪華な食事に夢中になっている。
「(かわいいなぁ)・・・・」
今のユフィールは普段の綺麗というイメージよりは、子どもっぽさがでている。普段のサレオスならばすぐさまかわいい、なんて事は言えるのだがユフィールは違う。何が違うって・・・・それはあきらかにいつもより早い鼓動。
「(はぁ、こんな気持ちになったのは10歳の時、剣術教えてくれてた女の先生以来だなぁ)・・・・・・・」
などと内心甘酸っぱい思い出に浸るサレオスであった。
どうにもサレオスの様子がおかしい。いつもならしつこいぐらいアプローチしてくるというのに今日は静かだ。なんとなく話しづらいので目の前に綺麗に並んでいる食事たちを頬張るユフィール。
「(ルイス君どこにいったのかしら)・・・・」
なんとかこの空気を変えたいユフィール。だがいつもと違うサレオスに戸惑うだけだった。
と、そんな時一人の女性がサレオスに話しかけてきた。サレオスはそれまでの重そうな顔はどこへやら、笑顔で応対している。どうやら同郷の友達らしい。となれば話も弾んで・・・
「マジかよ!?」
「そうよ!相変わらずのアホな頭ねぇ〜」
女性がそう言いながらサレオスの頭をグシャグシャと撫でた。
「・・・・・・・・・」
あぁ、なんかイラっときた。とユフィールは不機嫌オーラを発した。ほぼ無意識で。さすがにこれを感じとった二人はようやくユフィールに目を向けた。サレオスはあたふたしながら彼女を紹介し、紹介された彼女は笑顔で握手を求めた。とりあえず笑顔をつくるユフィールであったが、やはりどこか刺々しさをかもし出している。
「つのる話もあるだろうし、私は席をはずすわね。」
「え?ユフィールさ・・・」
サレオスの言葉を最後まで聞かず、ユフィールはその場を後にした。
「ごめん、ちょっと行ってくる」
サレオスは申し訳なさそうに同郷の友に一言いってユフィールを追いかけた。
「(お、怒ってたよなぁ。なんで?うぅん・・・・あ!もしかして紹介が遅れたから?でもユフィールさんがそんなことで怒るかなぁ・・・)」
ユフィールの不機嫌の原因を色々考えたが、答えがでないまま追いついてしまった。サレオスに気付いたユフィールは止まってくれた。それだけでサレオスは心底嬉しいと思えた。
「あの・・・」
「なにか?」
「あ、えと、ですね・・・」
ユフィールの威圧にたじろぐサレオス。しかしここで押されては、と思い少し強い調子で質問した。
「どうしていきなり居なくなるんですか?」
「・・・・・」
じっとユフィールはサレオスを見ている。というか睨んでいる・・・?
「(どうして?それはあなたがあの人と一緒にいるほうが楽しそうだからじゃない!気を利かせたっていうのに、なんで私が悪いですみたいに聞いてくるの?)」
ユフィールの心は穏やかではない。むしろ先程より悪化している。サレオスはサレオスで答えようとしないユフィールにどう対処したらいいか、今までの女好きの経験を活かして模索していたが、どうにもいい答えが見つからない。
沈黙が続く。
サレオスが先に音をあげた。
「もういいです。引き止めてすみませんでした。あなたには待っている人でもいるんですよね?」
昨日みたあの男。思いだすと寂しく感じるが、それ以上にイラ立ちを感じた。
「俺は俺で楽しみますから。それじゃあ」
ユフィールが初めて受けたサレオスからの冷たい言葉。自分のもとを去っていくその人が見えなくなると、それまでのイラ立ちは消え、寂しさがこみ上げてきた。