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馬車の中

召喚術師との衝突から丸々二週間がすぎ、ようやくルイス達はイリューマへと出発した。それでもダイゴローの傷は深いので、隣町まで行く馬車に便乗させてもらっていた。


「シュワルガとエルランですか。」

「あぁ。多分あの二人は・・恋仲だな。」


人差し指を立ててズバリ言うサレオス。


「あら、そうなの?」

「ええ、俺はこういう事には詳しいので。あ!ちなみにユフィールさんのタイプはどんな男性ですか??」


ユフィールに詰め寄るサレオスにルイスの痛い視線が突き刺さった。


「そんな睨まなくても・・・」

「別にそんなつもりはありませんが、ユフィールさんが嫌がっているので。」


そう言われサレオスはおずおずとユフィールから離れた。しかしその後も何かとユフィールにちょっかいを出す。なんて女好きなんだとルイスは思ったがユフィールの表情は初めにあった時よりは少し柔らかくなっているように見えた。


「・・何ボーっとしてるんだよ?」

「え?」


ルイスはいつの間にか、自然に仲良くお喋りしている二人を眺めていた。


「はっはぁ〜ん、俺がユフィールさんとラブラブなのに嫉妬してるんだろ〜?」


どこか勝ち誇ったような笑みでルイスを見下すように聞いてきた。そんなサレオスの子どもっぽい行動にユフィールはくすくすと笑い、ルイスはため息をついた。


「どうぞご勝手に。ダイゴローも大変ですね、こんなのが主人だなんて。」


哀れみの目をサレオスの隣に横たわっていたダイゴローに向けると、ユフィールとハクセンが噴き出して笑った。言われた当人は軽くのどを鳴らすだけだった。


「何言ってんだよ!俺みたいな人情あふれる好青年は他にいない!だいたい、こぉんな冷血なご主人様をもってるハクセンのほうが可哀想だ!」

「そうだな。だがこれでも中々楽しんでいる。」


笑いながらハクセンは答えてサレオスはルイスに自慢げな顔をされ、見事にカウンターをくらった。と、ここでユフィールが目を見開いてハクセンを見ているのにサレオスは気付いた。


「どうしました?」

「あ、えと、ハクセンは言葉が喋れるの?」


サレオスはあぁ、と簡単にハクセンについて説明をした。


「そういえば、あなた達の事も私なにも知らないわ。」

「おお!ユフィールさん!!ついに俺に興味を持ってくれましたか!?!」

「サレオスさん、静かにしてください。」


サレオスの歓喜の声に、うるさいといった様な顔を作るルイス。しかしそんなルイスを無視してサレオスは自身について語り始めた。


「年は二十六、独身、ただいま目の前にいるユフィールさんに恋心を抱いています!」

「そ、そう。」

「綺麗な女性を見ればあなたはいつでも恋心を抱くでしょう。」

「黙れルイス。俺の必死の告白を邪魔するな。」


サレオスとルイスの間に軽く火花が散るがユフィールによってそれは解かれた。


「まあ、ルイス君私の事綺麗だと思ってくれてたの?!嬉しいわv」


そう言って満面の笑みをユフィールはルイスに送った。


「当たり前じゃないですか。ユフィールさんは僕が今まで見てきた女性の中で一番綺麗ですよ?」


ルイスも満面の笑みで、それも本当に優しい作り物ではない穏やかな顔で答えた。二人の空間はまさに花が舞っていたがその隣にはどす黒いオーラを放つサレオスがいた。


「待て待て待てぇい!!!ルイス、お前はなにか?俺の恋路を邪魔するのか?え?」

「まさか。あなたがどこで何をしようが僕は興味ありません。」

「いや、それはあまりに寂しいよ。」


虚しくツッコむサレオス。なぜ自分はこうもルイスに冷たい仕打ちを食らうのか、そのことが最近のサレオスの憂いであった。そんな悲しみにくれているサレオスを気遣ってユフィールはサレオスに質問をした。


「サレオス、どうして剣術師をやっているの?」


サレオスはユフィールが自分に声をかけてくれたのが嬉しくなり直ぐに顔を上げ、先程の沈んだ気持ちもどこかへ行ってしまった。


「親父が剣術師で、俺の国の近衛師団だったんです!だから大きくなったら親父みたいに大事な人を守る剣術師になるのが小さい頃からのユメで!」


サレオスは子どもがはしゃいでいる様に話し始めた。ユフィールもそんなサレオスを見てなんとなく和む。しかし、ルイスだけは無反応でいた。話が盛り上がっている二人は気付かなかったが、ルイスの隣にいたハクセンは温度差のあることに気付いく。しかし、それだけで特に何も言わなかった。


「ルイス、そういやお前は何で魔術師になったんだ?」


突然話を振られ、ルイスは何のことかと思った。


「俺みたいに親に憧れて?」

「まさか、冗談でもやめて下さい。ただ単に僕が魔術師になりたかったからです。」

「だ〜から!何でかって聞いてんだよ!」


なんで?とルイスは考え込んだ。本当のことを言えばあまりの欲深さに二人は引くだろう。まあそんなことはどうでもいいが、これから先長くなくとも一緒にいるわけだからここは適当に当たり障りのない事を言っておこうとルイスは決めた。


「ああぁ・・・あ!そうそう、魔術師に助けられたことがあってカッコイイなと思ったからです。」


あからさまに取って付けた様な理由だがユフィールもサレオスも頷いた。


「お前にしては真っ当な理由だな。」

「どういう意味ですか・・?」


サレオスは信じられませんといった顔だ。まあそれもそのはず、そんな事実はないのだから。ルイスはこれ以上突っ込まれるのが面倒なのでユフィールにバトンを渡した。


「ユフィールさんは何で医術師なんですか?」

「え?え〜と、私は・・・・八つ当たりみたいなものかしら。」

「八つ当たり?」


サレオスもルイスもキョトンとした顔をしてユフィールをみた。なぜなら八つ当たりなんて言葉はユフィールには到底似合わないからだ。


「ええ。まあ、二十五年も生きてれば色々あるわよ。」


誤魔化す様に笑ったので二人もそれ以上は聞かなかった。そうこうしている内に日は暮れ、目の前には町が見えてきた。

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