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アイドルの条件

掲載日:2011/08/27

 私が所属するTKG480『通天閣ガール』はロクなもんじゃない。

 名前からも分かる通り、AKB48を真似して作られた大阪のグループなんだけど、

 問題は0がひとつ多い事・・・。

 

「じゃあ、最後No,400番から480番までの方、ステージに上がって下さーい」


 TKG,No416番の私もステージにあがる。

 プロデユーサーに認められようと、前列は押し合い越し合いだけど、私は無理しない。

 そんなことしても無駄なことぐらい、分かってるからだ。



「練習曲はAKB48の大声ダイヤモンドいきます」

 レッスン担当の山岸さんがメガホンで叫んだ。


「なんで、よそのグループの曲やの?」

 なんて不満を言う子もいるけど、答えは簡単。

 カラオケが出ているからだ。TKGの曲にカラオケなんてない。



 私は後ろで声をそろえながら、みんなを観察する。

 500人近くいるメンバーの殆どを私は知らない。


 時々、スパーランドや遊園地に派遣されたメンバーと仲良くなっても、

 その後、仕事で一緒になることはまずないからだ。


 そういう意味では、時々行われる合同練習は、仲良くなった人と再開できるチャンスといえた。



 もっともこんな私でも、センターと呼ばれる人達の事はよく知っている。

 彼女達はやはり、このTKGのアイドルだからだ。



 TKGは入るのが簡単で、センターに回るのが難しいというコンセプトなんだそうだ。

 でもそうは言っても、ここのセンターって・・・。



「ハイ、ではセンターの人達にステージに上がってもらいます。アンダーガールズの人達は客席で声を合わせて下さいね」


 山岸さんの声でステージに上がって来たのは、自称・神10(テン)というメンバー達。


 実に個性的で、キャラがかぶっていないのはいいが、見事にバラバラだ。


 だいたい募集要項には歌と踊りが大好きな13歳から20歳までの女性と書いてなかったっけ?

 それなのに、狭山さんは明らかに40歳を超えてるっしょ。


 春川さんは芦屋のお嬢さんだけど、体重80キロ越えはいただけない。

 小杉さんは、妊婦さんだし『おいおい大丈夫か』


 田中さんは、元バレーの選手で1m80?、逆に沙耶ちゃんは小柄だが7歳だ。

 小林さんは子供の頃は演歌歌手で、必要もないのにコブシをきかせる。

 横山さんは唯一、歌がうまく可愛いが、男だ。残念!



「なんで、あんな人達がセンターやってんのよ」

 と、いう声があちこちで上がるけど、これは人気投票の結果だから仕方ない。


 そう、なにをかくそうTKG480も選抜メンバーを選ぶ選挙があるのだ。


 でもって選ばれたのが、今ステージにいる10人

 どの人も堂々1,000票、獲得した人ってわけね。


 勘の良い人は分かったと思うけど、CD一枚につき一票の計算。

 つまりセンターに選抜された人は自分か身内が1,000枚のCDを買ってるってわけ。

 TKGのシングルは700円と安いけど、3カ月に一度の新譜ごとに70万ってきつくない?


 ちなみに480人のメンバーに残るのも最低100票(つまり100枚のCD)が必要。


 そうまでして、女優志望の私がなんでこのTKGに入っているかといえば、

 TKGがマスコミによく取り上げられるから。


 CDの売れない現在、毎回57,000枚以上CDを売り上げるTKGは無視できない存在なのね。


 

 合同練習の終わった後、めずらしくプロデューサーのカツオシ Dがステージに上がって来た。


「今日は皆さんにうれしいお知らせがあります。なんと先にリリースしたディスタンスが57,136枚売れたんです」


 これにはみんな驚いたようで、いっせいに拍手が巻き起こった。

 つまりどういう事かと言うと、自前の57,000枚を除いて136枚も実売したことになる。


 西野カナさんのDistanceじゃなくて、カツオシ Dの作曲した、あのつまんない(失礼)曲を136人も買ってくれたってことに!


 そんな事もあるのかと感心していたら、横にいた狭山さんが「あれ、ホントは私が買ったのよ。最後の6枚は知らないけど」とペロリと舌を出した。


 そうとは知らないカツオシ Dと他のメンバーは大いに盛り上がっていたが、ここはまあ黙っておく事にした。


 それにしても、いったいこのTKGに花の咲く日は来るのだろうか・・・。


 私はフッとため息をもらした。



       <おしまい>


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