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Blood Night Survivor 30人ファミリアvs俺  作者: すばる


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2/6

2 天墜の塔

「いた!」

 つんざくような銃声。ゾンビの一体が即座に破壊される。

「上だ! こっちこい!」

 攻撃されたと断じ、即座に退避を命じる。だが銃撃はさらに強まり、どうにか攻撃から逃れたときには、生き残りの手下は4体にまで減っていた。

「このタイミングで鉢合わせかよ」

 ついてない、と思っているのは向こうも同じだろうな。

 長いドーテムタワーを日中に攻略しきるのは無理と割り切り、難易度の上がる上層で昼になるよう夜から開始したのだろう。俺がゾンビを回収していたために高速で進み、厳選で立ち止まっていたこちらに追いついた。

 今後の動きを考えつつ、急いでタワーを登る。攻撃されたのは4階。それより上のゾンビは残っているため、足止めになるはずだ。

 まず、少なくともあちらはそれなり以上に慣れたプレイヤーだ。さもなくば夜に探索しようなんて考えない。だがおかげでロケーションはこちらにとって有利。電気は当然止まっているので、向こうの視界は大幅に制限される。

 逆に不利なのは、先程の遭遇戦で少なくない被害を出したこと。

 ゾンビの強さは数だ。初期状態でも真っ向からの殴り合いはゾンビ側不利で、ゲームが進むほどこの差はより明確となる。サバイバーは装備を整え自己を強化していくのに対し、ゾンビはそれができないからだ。スキルで特殊能力を得ることはできるものの、銃撃を受ければ結局蜂の巣にされる。ゾンビ側の遠距離攻撃手段は、サバイバーと比べはるかに貧弱だ。

 そのためゾンビ側の基本戦術は奇襲か数の暴力で強引に押し込むこと。敵の制圧力を上回ることが求められる。

 とりあえず数を揃えるだけなら野良ゾンビを拾えばなんとかなるが、強個体を厳選する余裕はない。

 加えて、先程サバイバーは3人見えた。これだと、正面から素直に突っ込めば銃や爆弾で容易に制圧される。

 瓦礫を登って崩れた天井から6階へ上がる。そこで、下から銃声が聞こえてこないことに気づいた。5階のゾンビは残っているので、サバイバーは排除しなければ進めない。にも関わらず戦闘音がしないとなると、考えられる可能性は3つ。

 1.音を立てないようにしながら、ゾンビを避けてステルスで上がってきている。

 2.不利な時間帯をやり過ごすべく、どこかに隠れ潜んでいる。

 3.諦めて帰った。

 2はないな。朝まで長すぎる。3だったとしてもこちらにリスクはないので、ひとまず1を想定して動こう。

 銃を使わないとなると、こちらから位置把握するのは難しくなる。だが先に見つけて奇襲に成功すれば、勝ちの目は太い。サイレンサーは使っていなかったし、ナイフやクロスボウといった静音武器は銃より弱い。銃に切り替える隙を与えずに押し切ればいい。

 問題はどうやって見つけて奇襲するかだが。

「あいつらの下に回り込むのが丸いか」

 一度探索したエリアに対してなら、警戒も甘くなるだろう。ドーテムタワーにはちょうど都合のいい場所がある。

 ひとまず戦力の頭数だけは揃えてから、向かうのはエレベーターホール。もちろん動いていないが、近くの床に落ちているケーブルを下ろしてやればショートカットの出来上がりだ。

「俺たちが降りたらケーブルを戻して移動しろ」

 手持ちで一番弱いゾンビに命令。こいつはこのまま捨て置き、他の野良ゾンビに混ぜて処理させる。

 音を立てないよう慎重に降下。手持ちのゾンビは手近な部屋に隠して単独で上に向かう。調べるのはアイテムの残存状況だ。俺は回収できないが、サバイバーが建物に入る目的は残された物資を得るため。1階、2階、3階と漁られているのを確認しながら6階まで進む。

 5階まではアイテムが取られていたが、6階は入り口からその形跡がなかった。

 やはり敵はステルスで探索を続けており、6階をクリアリングし終わっていない。4階、5階は回収されていたので、階層ごとに安全を確保してから漁るルーチンと推測できる。

 なら、狙い目はそこだ。俺は音を立てないよう注意しながら、急いで降りて待機させていたゾンビを拾いに行く。いつ戻ってくるかわからないが、ひとりでは勝てないので仕方がない。

 幸い、戻った時には敵はまだ6階の攻略を進めている途中のようだった。この建物、高いだけでなく水平方向にも広いのだ。とはいえなるべく早く準備を整えるべき。

 問題は、どこに潜んで待ち構えるかだな。できれば固まっているところを襲いたい。奇襲に2回も3回も成功するとは思えないからだ。となると狙い目は脇道の小部屋ではなく先に進むのに必ず通る、いわゆる順路。ただ、慣れたプレイヤーなら奇襲に向いたポイントはだいたい把握しているし、カーテンの裏など簡単に隠れられる場所は丁寧に潰されている。

 となると、やはり上だろう。人間、上には注意が向きにくいもの。この暗闇なら尚のこと見つかりづらい。ちょうど、棚のいくつも並んだ倉庫を見つけたので、ゾンビを待機させて待ち構える。

「これで見つかったら、あっちのが上手だったってことで」

 息をひそめて待つと、数分のち、3人組のサバイバーが倉庫の中に入ってきた。予想通り、2人が装備しているのは槍とクロスボウ。ただ最後の1人はサブマシンガンを持っている。俺を警戒し、不意の襲撃に備えるための保険だろう。

 アイテムを漁り出すのを待ちたかったが、時間をかけると見つかりそうだ。無言のまま、手振りでゾンビたちに襲撃を指示する。

 同時に俺自身も跳び下り。狙いはもちろん銃持ち。真上からのしかかり、落下の勢いのまま頭を掴んで押し倒す。

「おわっ!?」

「来たっ」

「オラァ!」

 馬乗りになった敵の頭を、全力で殴りつける。強烈な手応えとともに赤い血が飛び散る。

 俺のキャラクターはスマッシャーカテゴリのスキルを中心に取得したいわゆるスマッシャービルドだ。特殊な能力は持たない代わり、耐久と近接攻撃力に特化させたスキル構成で、日が当たらない場所で接近戦に持ち込むことができれば、フル装備のサバイバー相手にも殴り勝てる脳筋スタイルである。

 初動で押さえつけた相手をそのまま連続で殴りつけ、一方的に倒し切る。それとほぼ同時、配下のゾンビがもうひとりを数の暴力でキル。

 だが最後のひとりは仕留めきれなかったようだ。ダメージを負いながらも無理矢理包囲を突破し、倉庫の外へ走り抜ける。

「追え!」

 即座に命令。このゲームのゾンビは脚は遅くないので、プレイヤーにもそうそう撒かれない。それに最後の生き残りが逃げたのは先に進むルートだ。7階に行けば野良ゾンビと挟み撃ちにできる。

 未探索エリアに踏み込むのを嫌ったか、相手が逃げ込んだのは突き当りの小部屋。

「外に逃れる気か?」

 部屋には窓がある。普通に落ちれば死ぬ高さだが、壁伝いに足場のなるものをたどれば、落下ダメージを軽減することはできる。

 最悪逃がしても構わないが、できれば仕留めたい。外に逃れたらどう倒すかを考えていると、突如ズドンという音が鳴り、奥の部屋が爆発した。先頭を走っていた数体のゾンビがまとめて吹き飛ぶ。

「地雷!?」

 してやられた。あの場所にそんな罠はもともとない。あらかじめ退避場所として仕掛けていたのだ。2体のゾンビが破壊され、そして数秒とはいえ猶予を与えてしまった。

 銃声が轟き、射線上にいたゾンビが撃ち抜かれる。インベントリから銃を取り出したのだ。入り口は1か所。相手は部屋の奥でガン待ちの構えだろう。

「突っ込め!」

 進めば撃たれる。わかったうえで突撃を命じた。

 ここは時間をかけるほど不利になる。それにあの銃声はマシンガンではなくアサルトライフル。1マガジンの最大数は40だ。今10発は撃った。残りでこちらの手持ちゾンビすべてを倒し切るのは厳しい。

 強引な攻めは敵にとっても嫌だったようで、悪態と銃弾が飛んでくる。鉛玉を受けて前のゾンビから順に倒されるが。

「俺は無傷だぜ」

「くそっ」

 敵は弾切れのライフルをがむしゃらに投げつけ、腰のナイフを抜く。接近戦にもそれなりに自信があるのだろう。だがそんな小ぶりな武器では、力不足。

「スマッシャーと殴り合いたきゃ、消防斧でも持ってくるんだな!」

 俺の強みは近接攻撃の威力と耐久力だ。近づかせたくないと振る刃を、わざわざ避けてやる必要もない。ダメージを受けながらも強引に距離を詰め、避けようのない攻撃を胴体に叩き込む。体をくの字に曲げて壁まで吹っ飛ぶサバイバー。こうなればもうゲームセットだ。立ち上がる前に突っ込み、渾身の一撃で頭部を粉砕する。頭部を失ったグロテスクな死体が転がり、ただひとり、俺だけがこの場に生き残った。

次回投稿予定は明日12時です。

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